kisshug…<つかつく> 2.
<つくしside>
ある日、依頼人から、とんでもない依頼が事務所に舞い込んだ。
依頼内容…
道明寺HDが企業買収しようとして来ている中小企業の社長からの依頼だった。
不当な買収内容で、中小企業の社長も、とても応じる事が出来ないとの事だった。
確かに、金額もそうだが、買収内容に納得出来るものではない事は予想される。
弱気に付け込んでの事だろう。
この、弁護に私が就く事になった。
何故なら、得意分野だからだ。
でも、今回は相手が厄介過ぎる…。
だからって、依頼人の為、手を抜く事は私には出来ない。
徹底的に調べ上げて、納得の行くまで、遣り遂げる事を誓った。
それが、まさか、勝利するなんて…。
私は、『道明寺HDに勝った且ての婚約者』として、メディアに取り上げられ、時の人となってしまった。
私自身、身動きが出来なくなったと言うのも有り、また、兼ねてより、打診の有った国際弁護士の資格を取得する為、イギリスに渡英した。
私は、道明寺の状況を知る事無く、日本を離れた。
<司side>
俺は、ババアから、常に、つくしの近況を聞いていた。
疑う事無く、信じてしまっていたのだ。
少しでも、疑って居れば、状況は変わったのだろうか?
親父が2回目に倒れた事を切っ掛けに、俺はつくしの事を心配しながらも、業績の回復を任された事も有り、つくしの近況は全て、ババアに任せっきりになってしまっていた。
ババアはこれ幸いと、俺からつくしを引き剥がしに掛かっている等、微塵も感じていなかった俺は、ババアの話しを鵜呑みにしていた。
“馬鹿だよな。”って、今なら思えるが、あの頃の俺の状況は、考えを真面にはしてくれていなかった。
その為、言い訳だが、ババアの話を鵜呑みにしていたのだろう。
高校生の頃の俺なら、“有り得ねぇ。”って、“そんな事はぜってぇねぇ。”って、分かるような事でも、“そうか。”って、済ましていた。
ババアは、常に、つくしの事を、
『司が迎えに行く事を彼女は待って居てくれている。』
『ゴシップがどんなウソの情報を流すか分からないが、全てウソなので、信用しない様にと、伝えているので、信用していないようだ。』と、俺に伝えていた。
俺には、
『彼女の事は私(わたくし)に任せて、道明寺HDの為に尽くして頂戴。』と、言って来ていた。
その事に何ら不満は無かった。
当然として受け止めていた。
なのに、何故だ。
経営学部に入学して居た筈のつくしが、(俺に内密で)法学部にシフトし、弁護士に成っていた。
しかもだ、つくしは、俺に、道明寺HDに戦いを臨んで来た。
俺は、ババアに食って掛かって、文句を言った。
ババアの言い訳は、こうだった。
「依頼人から依頼を持ち込まれたら、断れないでしょう、弁護士として…。」
最もな言い訳だ。
なら、何故、ババアはつくしが法学部にシフトしていた時点で、俺に言わなかったんだ。
そして、こうも付け加えやがった。
「あなたが(つくしさんに)勝利したら、あなたとつくしさん
の結婚を許すわ。」
なのにだ、此方の正当性の上を超える反論を以って、つくしは、この戦いに勝利しやがった。
もう、俺は如何でも良くなった、俺自身も、道明寺HDも…。