NYで会えるなら…<つかつく> 8.
あれから、司とつくしの付き合いが1年程経った時、つくしの『COOの就任』が決まった。
慌てたのは、司である。
このままでは、つくしとの結婚が遠退く恐れが有ったのだ。
司の父親で有る道明寺会長の助けを借りて、この事態を乗り切ろうとしたのだが、父親からは司にとってとんでもない言葉が聞こえて来た。
「企業が決めた人事に首を突っ込む事は、例え司の婚約者だとしても、出来る訳がな
い。
クラウン・コーポレーションとしてもつくしさんを手放すのは、惜しいという事だろ
う。」
「じゃあ、俺らは結婚出来ないって事かよ?
だから、婚約発表の話しも引き延ばしにされてるって事か?」
「まあ、落ち着け‼
今、何を言っても憶測に過ぎない。
取り敢えず、クラウンCEOと話し合いをしていかなければならないだろう。」
「取り敢えず、婚約発表だけは済まして於きたい。
親父、宜しく頼むわ‼」
今の司から、つくしを引き剥がしでもしたら、『我が道明寺HDはとんでもない事に成るだろう』と、危惧した道明寺会長で有った。
一方、何故、クラウンCEOが、つくしの『COO就任』を速めたのか…。
それは、司と婚約しても、結婚しても、つくしをクラウン・コーポレーションに留まらせる為で有った。
クラウンCEOは、つくしを企業人としては手放せる筈も無く、つくし失くしてはクラウン・コーポレーションの発展は無いと認識しているからである。
それ故、早い段階での『COO就任』としたので有った。
そんな事とは知らない道明寺HDsideは、婚約発表の話しを推し進める覚悟でいた。
話し合いは、平行線で終わった。
道明寺HDsideとしても優秀なつくしを手に入れたい処では有るが、寧ろ、司からつくしを引き剥がしたのでは元もこうもない。
妥協出来る処は妥協すると、クラウン・コーポレーションsideに伝えた。
司にも妥協する様、道明寺会長より話しした。
「クラウン・コーポレーションsideは企業人としてのつくしさんを手放す気はないよう
だ。
しかし、婚約に関しては、妥協してくれると、言って来ている。
司もつくしさんと結婚出来るのなら、妥協案に応じる必要が有るだろう。」
「………」
「考える時間も必要だろうから、時間を与えよう。」
「………、分かった。」
司はつくしと話し合う必要が有るだろうと、思っていた。
また、つくしも父親から話しを聞き、司との今後を考え始めていた。
妥協案を執るか、すっぱ抜くか、難しい選択を司は強いられていた。
先ずは、考えを纏める処から始めようとしていた。
そして、司が弾き出した妥協案は、取り敢えず、今は、クラウン・コーポレーションsideの妥協案を飲むが、結婚後、何年後かには、つくしを道明寺HDに取り込む事。
上手く行くかは分からないが、取り敢えずの妥協案で合意しようとしていた司だった。
その妥協案を司から聞いたつくしは上手く行くのかと、考えてしまっていた。