懺悔の日々…<総優> 12.
お茶会終了後、優紀は家元夫人に呼び止められた。
「優紀さん、少し、お話し宜しいかしら…。」
「はい。」
優紀は家元夫人に着いて行く事にした。
その方が総二郎と会わずに済むと言うのも理由の一つだった。
総二郎は、優紀を探している時、家元夫人の後ろを着いて歩いている優紀を見付け、その後を着いて歩いて行った。
総二郎は、居間に通された優紀を確認して、扉の外から、家元夫人と優紀の会話を盗み聞きしていた。
家元夫人が口火を切った。
「優紀さん、貴女、東京に戻ってからもお茶のお稽古、為さっているの?」
「いいえ、現在はしておりません。」
「凄く勿体無いわ⤵。
お茶はお嫌い?」
「いいえ、茶道は好きですし、極めたいと思っています。
ですが、今は…。」
「優紀さん、私(わたくし)を師事為さらない?」
「えっ??
でも、家元夫人はお弟子さんをお取りにならないと伺っています。」
「気が変わったの⤴。
私(わたくし)が、優紀さんを気に入ったのよ⤴。
優紀さん、総二郎は、お嫌い?」
「えっ??」
「優紀さん、総二郎の気持ちはご存知よね?」
「………」
優紀はどう答えたら良いのか迷っていた。
「優紀さん、私(わたくし)の瞳(め)は節穴じゃなくてよ。
伊達に、家元夫人を何十年も任されていないのよ⤴。
記憶喪失も狂言じゃなくて…?」
「………」
優紀は何もかも家元夫人にバレていると観念していた。
「家元夫人、今から、お話しする事は、ご子息には伏せて於いて下さいますか?」
「ええ、宜しくてよ⤴。」
総二郎は、扉の向こうで不貞腐れて聞いていた。
“何で俺に言えねぇんだよ?”と…。
優紀は話し出した。
「私は、高校生の頃、ご子息が私の想い人だったんです。
でも、木っ端微塵に潰されました。
ご子息から言われた言葉と態度に…。
その時の私は失意のどん底を彷徨っていたんだと思うんです。
受験勉強を理由にして、ご子息のご友人やつくしの友人達との集まりにも参加しない様
にしていました。
で、選んだ大学を京都の女子大にしました。
此処までお話しすればお分かり頂けるかと思うんですが、ご子息のお傍に居る事も、お
話しする事も、あの頃を思い出して辛いんです。
だから、西門邸にお邪魔する事は、金輪際、お許し願いたいんです。」
「………」
家元夫人は、何も答えられずに居た。
『我が息子の犯した罪を如何、償えば良いのか?』
『総二郎にどんな罰を与えようか?』と…。
扉の向こうで、聞いていた総二郎は、己の罪の深さに驚愕していた。