記憶を失って…<つかつく> 5.
つくしは、古菱社長によって、『古菱つくし』としての人生を歩む上で、無くてはならない新しい18年間の記憶を刷り込まれていた。
つくしの誕生日は、戸籍上通り、12月28日とした。
『つくし』としたのも、「つくし」と、呼ぶと、つくし本人の反応が良かったからであった。
また、古菱家より、大学側には説明されては居たが、『牧野つくし』としては、学生内で親しくしている学生はつくしには殆ど無く、『古菱つくし』としての学生生活は直ぐに馴染めたようだった。
そして、つくしの20歳の成人式の振袖の晴れ着を着付けての記念撮影等、つくしの親として出来る事に、古菱夫妻は喜びを噛み締めていた。
そして、大学を卒業後は、古菱商事に入社し、つくしの希望通り、『経営企画本部』に在籍と成った。
入社して丸1年が経った2年目のつくしは、社会人として、順調そのものだった。
唯、古菱社長の娘と言う事も有り、つくし自身、遣り難い事この上ない訳で、つくしは、つくし自身を評価して欲しいと常に考えていた。
つくしの周りは、つくしの経営能力と、企画能力を認めた上で、『よいしょ』とかではなく、つくしを評価していた。
知らぬは本人なりと言う処か?
そんな時だった。
部長がTELを終えた後、つくしに声を掛けて来た。
「つくし様、社長がお呼びです。」
つくしは、怪訝な顔をして、部長に答えていた。
「部長、“『様』呼びは止めて下さい。”と、何度もお話ししているじゃないですか?
仕事中は、私は一社員です。
宜しくお願いします。
社長室に行って参ります。」
部長は戸惑っていた。
『社長の娘さんを預かるのは気を使う』と、心の中で溜息を付いていた。
【コンコン】…つくしは社長室のドアをノックした。
「つくしです。」
「入りなさい。」
「失礼致します。」
古菱社長から口火が切られた。
「つくし、頼みが有るんだ…。
今日のパーティー、出てはもらえないか?」
「如何いう意味ですか?
私が出なければいけない理由を教えて下さい。」
「つくし、手厳しいな‼
今日、私が行く筈だったパーティー何だが、行けなくなったんだ⤵。」
「理由は?」
「契約についての話し合いに応じても良いと、先方から話しが有ったんだ。」
「例の企業ですか?」
「そうだ⤴。」
「じゃあ、仕方ありませんね。
パーティーの詳細をメールに入れて下さい。
それと、一人、秘書を貸して下さい。」
「承知した。
宜しく頼むぞ‼」
「承知しました。」
つくしは、パーティーに出席する事に成った。
パーティーに出席の為、つくしは、その日は退社して、パーティーの準備の為、一旦、邸に戻って居た。
そして、パーティーに出席する為、大阪メープルに向かった。
一方、このパーティーの招待状を受け取った楓は、日本のそんなに重要ではない企業からのオファーなので、出席の必要性は無かったが、胸騒ぎを覚え、司を伴って、出席する事にした。
そして、パーティー当日…。
つくしは、遅れて会場入りしていた。
楓が、パーティー会場に到着した時、何故か、あちこちから、囁かれていた。
「今日は、古菱社長の娘さんが一人でパーティーに出席するらしいぞ。
かなりの優秀な娘さんらしいな。
さぞかし、鼻高々にする為に、古菱社長は娘さんだけ出席させたんじゃないのか?
まあ、一人でも遣って除けられるだろうけどな⤴。」
楓は小耳に挟んでいた内容から、どんなお嬢さん何だろうと、会って見たいと思うように成っていた。
そして、楓は驚愕する事と成る…。