好きなのに…<総優> 7.
優紀がお茶を習うようになって、半年が経った。
優紀はお茶の先生から、お茶会のお誘いを受けた。
優紀は、“お稽古を付けて頂いて、日がまだ浅いのに滅相も有りません。”と、お断りしたが、先生は、“何処に出しても恥ずかしくないから、大丈夫よ。”と、連れて行く気で居た。
「はぁ~⤵。」と、優紀は、心の声が小さな溜息に変わった。
お茶会の日…、優紀は、お茶の先生と一緒に西門邸に居た。
「家元夫人、ご無沙汰してましたわね。」
「あら、間宮先生、此方こそ、ご無沙汰しておりましたわ。
あら、お見掛けした事の無いお嬢さんをお連れでございますのね?」
「ええ、三条の大奥様よりご紹介を受けた、私(わたくし)のお弟子さんですのよ。」
「三条の大奥様から…。」
三条の大奥様とは、桜子のお祖母様の事で有る。
旧華族のご出身で、三条家は現在でも文化枠では、逆らえない重鎮の一人に数えられる方で有る。
「ええ。
此方は、“松岡優紀”さんと仰るの。」
「優紀さん、此方は、西門流 家元夫人よ。」
“西門さんのお母様。 お綺麗な方…。”
「お初にお目に掛かります。
松岡優紀と、申します。」
「此方こそ、初めてね。
宜しくお願いしますね。」
「家元夫人、準備が整ったようです。」
「分かりましたわ、総二郎さん。」
「優紀ちゃん……。」
総二郎は、思わず、声に出してしまった。
「あら、あなた方、お知り合いなの?」
「ああ、優紀ちゃんは牧野の親友だよ。」
家元夫人は、牧野が司の婚約者で有る事は承知している。
「そうだったの?
でしたら、また、お会い出来そうね、優紀さん。」
「あの~?。」
「では、またね、優紀さん。」
お茶会の最中…、家元夫人は総二郎に小声で小言を言っていた。
「総二郎さん、お顔を引き締めなさい、お顔が緩んでいますよ。
あなた、優紀さんにお会いしてから、お顔が緩みっぱなしよ。
もしかして、総二郎さん、あなた、優紀さんの事…、そう、そう言う事。」
「そう言う事って、どういう事だよ。」
居た堪れなくなり、不貞腐れて言えば…。
「総二郎さん、あなた、優紀さんの事、お好きなの?
でも、あなた、優紀さんからは相手にされていない様ね。
あなたのようにモテる筈の人が、本気で好きになった方には、相手にされない何て
ねぇ、癪ねぇ。
今までの行いのせいかしらねぇ。」
「頼むから、放って置いてくれ。」
「はぁ~⤵。」
思わず知れず、総二郎は溜息を付いていたのであった。
まだ、家元夫人の小言は続く…。
「今までの失態は、そう言う事だったのね。」
「どういう事だよ。」
「恋煩い?」
「………、はぁ~??」
この場に居るのが、居た堪れない。
総二郎は心の中で、嘆いていた。