好きなのに…<総優> 8.
お茶会終了後、優紀と話しをしたくなった総二郎は、優紀が出て来るのを玄関で待って居た。
そんな時、玄関から、声が聞こえて来た。
「優紀さん、今日もお疲れ様ね。」
「先生、今日も有難うございました。」
先生から突然、話しを切り出された。
「ねぇ、優紀さん、あなたに会ってもらいたい方が居るんだけど…、どうかしら?」
「先生??」
「今すぐって、訳じゃないの。
先方は大変、乗り気でね、どうかしら?」
優紀は突然の先生からの切り出しに、困ってしまった。
「先生…、私は、まだ学生ですし、まだ、学業に没頭したいと思っているんです。」
「そう、残念ね。
良いお話しかと思っていたんだけど…、優紀さんが乗り気じゃなければねぇ、意味ない
し…。」
「申し訳ございません。」
優紀は、“ほっ”と、していた。
「ううん、良いのよ。
優紀さんに、無理強いはしたくないし。」
「有難うございます。
先生のご好意を無にして、申し訳ございません。
先生のお気持ちは頂戴致しましたので…。」
「そう、分かったわ。
今日は、此処でね。」
「はい。」
“おいおい、お見合いの話しかよ。 ヤベっ、うかうかしてらんねぇ。”と、総二郎は、心の声を心の中で叫ばせていた。
総二郎は、慌てて優紀を追い掛けた。
「優紀ちゃん、今日は来てくれて有難う‼
今から、食事に行かねぇか?」
優紀は困った。
「あの~?」
「優紀ちゃん、俺は、優紀ちゃんの事、好きだ。
俺じゃあ、ダメか?」
総二郎は、頭を下げた。
その行動に周りに居た人は、びっくりと、言うよりも、呆気に取られていた。
「あの~、考えさせて下さい。」
「えっ??」
総二郎の頭の中には、断られるという選択肢は無いと、思っていた。
俺、今、断られた?
否、“考える”と、言われた?
どちらにしても、想定外だった。
今、俺、公衆の面前で、めっちゃ、カッコ悪ぃ~。
優紀はその場を離れ、踵を返して、帰って行った。
「総二郎さん、あなた、こんな所で何をやっていらっしゃるの?
お恥ずかしいわね。」
「………」
総二郎は、返す言葉も出なかった。