もう一度、取り戻す…<つかつく> 16.
司会者が、促し始めた。
「ご静粛にお願いします‼」
実は、記者達は、司がつくしに騙されているという風に話しを持って行きたかったのだ。
ところが、司の母親で有る、あの『鉄の女』が、異を唱えたのだ。
誰も何も言えなかった。
楓は話しを続けた。
「司が約10年前にメディアに残した『4年後、迎えに行きます。』と公言した例の相手の
女性がつくしさんです。
つくしさんが、余りにも綺麗に女性らしくなってらっしゃるから、皆様、お気付きに
成ってらっしゃらないようですわね(微笑)。」
記者に寄って、笑顔の記者、驚愕の記者、苦笑している記者等、様々で有った。
楓は、俄かに楽しんでいるようにも見えた。
「オフレコでしたが、約6年前、私(わたくし)の主人が2回目に倒れた時、司には、“現
を抜かしている時間はない。”と、申しておりましたので、NYに留まらせ、道明寺HD
の副社長としての責務を全うさせました。
つくしさんには、その事を伝えておりましたので、司とつくしさんは別れていた事に致
しましたの。
で、司とつくしさんには、そろそろ、けじめを付けさせる気でおりました処、この様な
事態になったという訳です。」
楓は一息を突き、ウォーターを口に含ませた。
そして、前を見据えて、宣言をした。
「此処で、私共の愚息 司と牧野つくしとの婚約記者会見と致します。」
記者から、歓声が上がった。
記者達にとっては、思ってもいない事だった。
この事に寄り、司の恋人はつくしで有り、婚約者として、世間に周知された。
また、この事に慌てたのはF3だった。
「何故、司だけが…。」
と、成り、また、それぞれのF3の親達も、婚約発表を慌てて行うと言い出した。
この事に寄り、奇声を発し出したのは、世の良家のお嬢様方。
司に続いて、F3もが、婚約発表を行ったのだ。
ショックを起こさない方が可笑しいだろうと、言われていた。
道理で、F4の親達は、お見合いを断る筈だと、良家の親達も納得していた。
道明寺HDでは、社員が、つくしの仕事振りを見て、また、司の婚約者として、つくしに『よいしょ』をし始めた。
つくしは仕事がし難い事、この上なかった。
其処で、前々から考えて居た事を楓は行おうとしていた。
楓の鶴の一声で、つくしは、司の専属秘書になった。
勿論、司の専属第1秘書は、西田。
第2秘書に、つくしを据え置いた。
秘書課の女子社員は、つくしの秘書課への移動に狼狽えた。
何故なら、司のイチャ付き振りが、目障りだったからに他ならない。
仕事に成らないのだ。
しかし、つくしが秘書課に居る事で、司の仕事の効率が極端に上がっている為、周りは何も言えずに居た。
楓もその一人だった。
今日も、司は幸せ一杯、仕事の効率が良く、道明寺HDの業績も鰻上りに上がっていた。
この1年後には、結婚した司とつくしとの間に、待望のつくしの妊娠が発覚するので有った。
やっと、司とつくしは、幸せを噛み締める事が出来たのであった。
fin