取り戻したい…<総優> 11.
記者会見後、事務所に帰って来た優紀を待て居たのは社長だった。
「優紀、あの記者会見は如何いうつもり?」
「ご迷惑をお掛けします。」
「そう言う事を聞いているんじゃないのよ。
本気なの?」
「元々、タレントや女優に成りたくて、この世界に入って来たのではなく、西門さんに、
私の頑張っている姿を見せたくて…入って来たんです。
この世界に入って来た理由が不純な動機で申し訳ありません。」
社長は呆気に取られていた。
「………、だから、もう、満足って事?」
「西門さんに心配掛けたくないんです。」
「………」
社長は優紀を引き留める言葉が見付からずに居た。
社長は優紀の決意が固い事を感じた。
もう、信念を変えるつもりは、今の優紀には更々無いだろうと踏んだ社長だった。
『優紀を諦めるしかないのだろう。』と、社長は、そう思っていた。
優紀は、総二郎に会い、社長に『“女優を引退する意思は本当だ。”と、伝えた。』と、優紀は、総二郎に話しした。
「本当に、女優を引退して、後悔しねぇのか?」
総二郎は、記者会見を見て、優紀の気持ちで一番、知りたかった事なので、優しく尋ねた。
「今なら、まだ、下っ端だし、それに、私がスカウトされて芸能界に入った理由は、西門
さんに、私の頑張る姿を見付けて欲しかったからなんです。」
「………、マジか?」
総二郎は返す言葉が見付からなかった。
「もう、それは達成されたし、未練は無いです。
強いて言うなら、初めから、芸能界に憧れて入った訳じゃないし、不純な動機だから、
却って、芸能界に居る事が申し訳無いくらいです。」
「………」
総二郎は嬉し過ぎて、言葉に出来ずに居た。
「お茶の方が、精神安定剤に成って良いんです⤴。
それに、お茶の香りが、私の心を落ち着かせてくれるし…⤴。
また、茶道は一からだと思うんですが…⤵。」
「優紀、有難な‼
やっぱ、俺はもう、お前じゃなきゃ、ダメらしいわ⤴。」
「有難うございます、西門さん。
これからも、宜しくお願いします…うふふ。」
総二郎は優紀を抱き締めて離す事が出来ずに居た。
この時、総二郎は、優紀の心をやっと、取り戻せたと、嬉しかった。
何度、諦めかけたか?
何度、『優紀の心を取り戻したい』と、思ったか?
総二郎は、嬉しさの余り、優紀を抱き締め、そのまま、kissをして、優紀から離れられずに居た。
あれから数ヶ月が経った。
優紀は仕事の目途が立ち、結婚の為、芸能界を引退する事に成った。
F3&T3&静は、余りにも、あっさりした引き際に、呆気に取られていた様子だった。
優紀の引退後、1ケ月後に、総二郎と優紀の婚約発表が行われた。
優紀は、既に、引退して、一般人では有るのだが、相手が総二郎で有ると言う事と、一応、優紀は、芸能界に在籍していたという理由で、総二郎と優紀の二人の連名での報告と成った。
今では、総二郎の母親で有る家元夫人の指導の下、茶道から 西門流の仕来たり、家元夫人としてのお作法等をみっちりと仕込んでもらっていた。
「優紀、辛くねぇか?」
「大丈夫ですよ。
茶道の方が楽しいんですもの⤴。」
流石、優紀と言うべきか?
一度、こうと決めたら、芯がしっかりしているというか、『めげない・折れない』という芯の強さは優紀ならではで有る。
だからこそ、総二郎は心配するので有った。
優紀からは本音を聞きたい総二郎では有るが、絶対、本音を言わないのが優紀でも有る。
泣き言一つ言わない優紀は立派では有るが、偶には、頼って欲しい時も有る総二郎だった。
昔、司から、牧野が頼って来ない事を不満の様に、“頼って欲しいんだけどよ、頼ってくれねぇんだよな⤵。”って、言っていたのを思い出した。
頼ってもらえねぇ寂しさが有んだよな⤵。
漸く、“司のその気持ちが、俺にも分かる様に成ったよ。”って、司に言って遣りたいよ。
司、当時はお前の事を馬鹿にして悪かったな。
やっと、俺等も結婚の目途が付き、邸で一緒に生活をし始めていた。