忘れ欠けていた…<総優> 16.
司は、取り敢えず、総二郎に帰る様に促した。
「なぁ~、総二郎、今日は、帰れ‼」
「如何しても、居ちゃあ、行けねぇか?」
つくしは、総二郎に呆れていた。
つくしも、帰る様に、総二郎を嗜めていた。
「西門さんが此処に居て、如何するの?
明日は、日曜日で、優紀はお休みだし、私が、就いて居るわよ。」
総二郎は、懇願する様につくしにお願いした。
「俺が優紀ちゃんの傍に居てぇんだよ‼
居るだけで、隠れてるからよ。
優紀ちゃんの近くに居る事だけは許してくれねぇか?」
類は、総二郎の気持ちを聞いて、家元夫人が言って居た言葉を思い出していた。
『総二郎に償わせます。
優紀さんに許しを請うまで、総二郎に償わせます。
それでは、ダメかしら?』
類は、家元夫人が類に言って居た言葉を踏まえて、優紀の兄貴分として、総二郎に確認していた。
「総二郎、俺は優紀の兄貴として総二郎に聞く。
総二郎、部屋の中で隠れてでも、優紀の傍に居たいなら、今後、優紀の傷付いた心と身
体に寄り添う事は出来る?」
総二郎は、間髪入れずに、類に答えていた。
「勿論だ‼
俺が原因なら、優紀ちゃんの不安に思うものから、俺は、優紀ちゃんを救い出したい
‼」
つくしと桜子は同時に絶叫した。
優紀の辛さを見て来たつくしと桜子にとって、飛んでも無い話しだった。
「類…?」
「花沢さん…?」
類は、皆に、類の考えを解いて聞かせた。
「何時までも、優紀に現実から逃げさせてはいけないと思う。
総二郎が、本当に逃げずに、今の優紀に向き合えるというなら、総二郎にしか出来ない
事が有ると思うんだ。」
総二郎は、類に頷いた。
類は、話しを続けた。
「俺達なら、優紀を辛い思いから逃げさせて居るだけで、本当の解決には、成っていな
い。
本当の解決は、総二郎と一緒に優紀が解決していく事だと思う…⁉
優紀に現実から何時までも、逃げさせてはいけないんだよ。
今の優紀は、表面上は、回復して居る様には見えているだけで…。
総二郎に会ったり、優紀にとっての辛い場所に行けば、また、優紀は、不安な気持ちが
振り返すだけだよ⁉
それでは、根本的な解決には至っていないんだよ。
だから、総二郎に責任を取ってもらっても良いと思う⁉」
つくしと桜子は、優紀の身内である類が言う事に反論は出来ない事は分かって居るが…。納得はして居なかった。
何も言えずに居たつくしと桜子だった。
「「………」」
総二郎は、決断した様な、覚悟を決めた様な、背筋を伸ばして、真っ直ぐ皆を見詰めて言って除けていた。
「俺に優紀ちゃんを任せてくれねぇか?
俺がした行いを、きっちり、優紀ちゃんに償う‼
そして、回復させて見せる‼」
総二郎は、つくしと桜子に懇願する様に言っていた。
「頼む‼
俺を男にしてもらえねぇか?
優紀の男として、優紀に向かえてぇんだ‼」
総二郎は、清々しい、澄んだ綺麗な瞳で、淀みなくつくしと桜子を真っ直ぐに見ていた。
つくしと桜子も、今の総二郎なら、優紀を任せても大丈夫だと、思えた。
今の総二郎は、優紀にとって、『男 総二郎』に成っていた。
黙って動向を見ていた司も、あきらも、『男 総二郎』の姿を初めて見た様な気がしていたのだった。
類は、今の総二郎なら、何故か優紀を救ってくれると、確信めいたものを感じていた。
そして、F3&T3は、総二郎を残して、帰る事にした。
それでも、やっぱり、優紀が心配に成るつくしと桜子だった。