やっぱり、私は…<総優> 26.
<優紀side>
私は、家元夫人から連絡を貰い、成人式前日に、西門邸に出向いた。
玄関を開けると、何故か、西門家のリムジンが止まっていた。
運転手さんが、リムジンの扉を開けて待って居てくれた。
この状況、乗車拒否出来そうに無い雰囲気に、私は、苦笑いしかなかった。
「申し訳ありません。
有難うございます。」
「いいえ、飛んでもございません。」
と、運転手さんから仰って頂きながら、頭を下げて下さったので、私も一緒に頭を下げて居たら…。
車内から、笑い声が聞こえて来て、私は、ギョッとして、頭を上げた。
其処に顔を出してきたのは、西門さんだった。
「優紀、何で、お前まで、頭、下げてんだ⁉
運転手が、戸惑ってるだろ?」
「えっ??」
慌てて、運転手さんを見たら、苦笑いをされていた。
気付かなかったとは言え、“しまった…。”と、心の中で、恐縮していた。
で、不思議に思ったので…。
西門さんが、此処に居る訳を聴こうと思って聞いた私の言葉に、西門さんは、不貞腐れてしまった。
「で、如何して、西門さんが、此処にいらっしゃるんですか?」
「………。
優紀、俺が居たら、不服か?」
西門さんの膨れた顔を見て、思わず、“しまった…。”と、声に出して言ってしまっていた。
「なあ、優紀…。
俺等は、付き合ってんだよな?
何で、俺が疎外される立場なんだよ?
優紀にとって、俺は、要らねぇ立場の人間か?」
「いいえ、違うんです。
家元夫人に、呼んで頂いたので…。
西門さんが、ご一緒下さると思って居なかったんです。
それに、今日は、西門さんから、“(お)仕事だ‼”と、お聞きしてましたし…⁉」
「ああ…⁉
其の仕事は、先方の都合で、無くなったんだ。
伝え忘れしていたか?」
「はい。」
私は、西門さんを、怒らせてしまったと、思って居たので…。
恐縮しながら、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で、返答した。
そうこうしている間に、リムジンは、西門邸の門を潜っていた。
<総二郎side>
俺は、優紀が言って来た言葉に脱力した。
俺の顔を見れば、喜んでくれるか?
笑顔で、俺に抱き着いてくれるか?
願わくば、kiss位ぇしてもらいたい所だった。
其れなのに…だ。
優紀が俺に言って来た言葉は…。
『で、如何して、西門さんが、此処にいらっしゃるんですか?』だと…⁉
ショックの余り、優紀の俺に対する気持ちさえも、疑いそうに成っただろ⁉
言って居た言葉の意味が分かったから、それ以上、咎める気はしねぇがな。
司も、大概、牧野で、戸惑っている見てぇだがな。
俺も、優紀で、大概、戸惑ってるわ⁉
これも、価値観の違ぇなのか…⁉
<優紀side>
西門邸に着くと、家元夫人が、玄関先で待って居て下さった。
そして、客間に通され、呉服屋さんと、対面した。
「優紀さん…。
此方ね、西門家が、代々、お世話に成って居る呉服屋の店主なの。
此れから、優紀さんもお世話に成るでしょうから、覚えて於いて頂戴ね。」
「はい、宜しくお願い致します。」
私は、家元夫人に促されて、ご挨拶していた。
西門さんは、何か、考えて居る様子だったけど…⁉
そして、振袖と帯は、家元夫人にお借りする事に成って居るけれど…。
帯揚げや、帯締め等の小物に関しては、“年代物は古臭いから…。”と、揃えて下さった。
「本当は、娘が居たら、一緒に選びながら、揃えて上げたかったんだけど…。
生憎、私(わたくし)には、3人子供が居ても、息子ばかり…⁉」
「悪かったな。」
西門さんは、苦笑いで有った。
家元夫人は、西門さんの言葉も聞いては居ない様子だったが…。
「だから、諦めていたけれど…。
まさか、総二郎のお嫁さんにして上げられる何て…。
こんな幸せな事は無いわ‼」
私は、如何すれば良いのか?
西門さんを見ながら、家元夫人に、振袖と帯に合った小物を選んで頂いていた。
西門さんは、胡坐の状態で座りながら、苦笑いを浮かべていた。
<総二郎side>
俺は、お袋の有頂天さに、呆気に取られていた。
優紀は、もう、西門家からは、逃げれねぇだろうな。
俺にとっては、有り難てぇけど…よ。
兄貴の嫁さんは、自分自身の親の事で精一杯らしく、こっちには、出しゃばって来ねぇ‼
まあ、兄貴は、こっち(西門家)とは、縁を切った様なもんだから、お袋も敢えて、兄貴家族には、何も言ってねぇらしい。 ←使用人頭 かよの話し…。
だからだろうな。
多分、お袋は言える立場の優紀には、出しゃばるつもりだろうな⁉
否、して遣りてぇのか?
優紀が、こういう女だから、通用するんだろうけど…よ。
普通は、嫌がるだろうよ⁉
結婚前から、お袋の本性を知ってても、優紀にとっては、損はねぇだろ⁉
まあ、様子を見るか?
取り敢えず、二人だけに成った時に、優紀には、確認しねぇとな?