君だけ(を)…<総優> 1.
<総二郎side>
俺は、26歳に成る西門総二郎。
一応、茶道 西門流 次期家元。
次男で有りながら、“兄貴が医者に成る。”と、言って、西門家を出て行ってしまった事で、浮上した俺への重責だった。
まあ、茶は、俺の天性だと思って居たので、そう成っても、何も感慨も無かった。
しかし、俺への重責が、高校に上がった事を機に、日に日に、増して来て居た。
*重鎮からは、父親の素行の悪さを指摘される日々。
*父親が女の所へ行ったっ切りで戻って来ない事を、俺に愚痴る母親。
*俺の女癖の悪さを指摘する母親。
父親は、俺の茶の味の乏しさを指摘し、日々の生活を正す様に言って来る。
“あんたは、如何なんだ‼”と、言いたくなる。
こんな家(西門家)に、俺の好きな女を入れ込む事が出来る筈がねぇと思って居た。
初恋の更に対しても、唯の幼馴染としてしか向き合う事が出来なかった。
其れも、好きでもねぇ女と付き合う事で、その場は、更の事は忘れられていた。
そして、二度目の恋…。
現在の俺の彼女は、大学を卒業した頃から付き合い出した俺の二度目の恋の相手の『松岡優紀』。
優紀の時もそうだった。
そうだった筈だったが…。
二度目の恋の優紀の時は、どんなに“ダメだ‼”と、俺自身に言い聞かせても、言い聞かせても、手放す事が出来なかった。
高校の頃に一度、振って於いて、優紀に見向きもしねぇ振りをして、散々、傷付けて…。
なのに、俺は、勝手なもんで…。
散々、優紀の前で、嫌味な様に、何の感慨もねぇ女共を、取っ替え引っ替え、優紀に見せ付けて於いて、その何の感慨もねぇ女共を無残にも振り倒していた。
その様子を、優紀に見せ付け、ヤキモチを焼かせようとして居た俺。
だが、優紀の取った行動は、そんな俺の前から、姿を消す事だった。
俺は焦ったが、“それで良いんだ‼”って、俺は、俺自身に言い聞かせていた。
そんなある日。
「優紀が大学を卒業したら、結婚するかも知れない⁉」と、牧野から聞かされた。
俺は、慌てた所じゃなかった。
否、今、優紀を捕まえなければ、俺は、『後悔する‼』と、必死で、優紀を捕まえる為、行動に移した。
其の当時、優紀が、付き合って居たという、4歳年上の優紀のお姉さんから紹介された優紀のお姉さんの同級生だという其の男から、俺は、優紀を奪って遣った。
で、やっと、俺は、優紀を手に入れる事が出来た。
で、現在に至る。
そして、現在の俺と優紀は、婚約をしてる訳でも無く、唯、恋人として、同棲をして居る。
両家の両親達は、何か言いたい事が有るのだろうが…。
俺が言わせねぇ様にさせていた。
勿論、俺と優紀が、同棲している西門家所有のマンションには、流石、西門流と言われるで在ろう茶室が完備されている。
優紀は、高校卒業後は、茶道には、精通して居なかったらしい。
俺と優紀の時間が合えば、茶の時間成らぬ、茶の稽古と称して、俺が、優紀に稽古を付けて遣っている。
その時間は、俺にとっても、至福の時間である。
優紀との二人の時間は、自然に時が流れているかの如く、ゆっくりと流れ、頭を真っ白に出来、何の思惑もねぇ時を過ごす事が出来る。
言葉は無くとも、眼だけで会話が出来る女は、優紀だけだった。
そんな至福の一時で在る。
そんな時、俺と優紀が、夜、戯れた後、一緒に風呂に入って居る時に、優紀から話しが出た。
「もし、もしもね…。
私が、総二郎さんの前から居なく成ったら、如何する…?」
「そんな事、有り得ねぇ話しだろ?
有り得ねぇ事は、口に出すな‼
それとも…何か?
俺の前から、また、居なく成りてぇとでも、言うつもりか?
俺の事、もう、愛してねぇのか?
俺は、もう、優紀を手放すつもりはねぇからな‼」
俺は、怪訝な顔付きで、優紀を睨み付け乍ら言って居たと、思う。
だが、優紀は、普通に返答して来た。
「そんな事無いわよ‼
好きに決まってるでしょ?」
俺は、そんな優紀の言葉に、ほってしていた。
安堵していたのだ。
この時までは…。
だが、実は、優紀は、この時、もう既に、俺との仲を清算しようとしていた事等、考えも付かなかった俺だった。