君だけ(を)…<総優> 2.
<優紀side>
私は、ある日、家元夫人から、呼び出されて居た。
連れて行かれた料亭の部屋に入って、家元夫人と向かえ合わせに座った。
「優紀さん、ご無沙汰して居たわね。
総二郎とは、上手く行ってらっしゃるの?」
「はい、総二郎さんには、良くして頂いています。」
「そう、それは良かったわ。
でもね、総二郎も、もう、26歳。
もう、そろそろ、結婚を考える時期よね。
優紀さんも25歳に成るんですから、優紀さんも然りよね?」
「そうですね。
総二郎さんとは、そんなお話しにも成って居ませんので、良く分かりませんが…。」
「そう、でもね、総二郎は、西門流の次期家元。
それに、今後は総二郎の跡目も考えなくてはいけないの?
それは、優紀さんにもお分かりよね?
私(わたくし)が、如何いう意味で、優紀さんに言って居るのかも…?」
私は、“とうとう、そんな時期が来てしまったか?”と、覚悟を決めていた。
「はい、十分、理解しています。」
「そう、それは、良かったわ。
時期は、優紀さんにお任せします。
気持ちが整ったら、連絡頂戴ね?
優紀さんには、海外で、お勉強してもらえたらと思って居るのよ。
お金も此方で、工面させてもらうわ。
3年程だったかしら…ね?
総二郎を支えて頂いたお礼をしたいのよ。
優紀さんのご両親にも、了承して頂いて居るの。
宜しくね。」
そう、家元夫人に言われて、私は、総二郎さんから離れて行く準備を、着々と進めていた。
総二郎さんから買って貰った全ての物は、未練を断ち切る為、置いて出て行く事に決めていたから、持って出て行く荷物はたかが知れていた。
そして、その日を決行させた。
先ずは、働いていた会社に退職届を1か月前に出して、決行日の当日は、ビジネスホテルに泊まり、家元夫人に連絡を入れた。
「明日、旅立ちます。
長い間、勝手を致しました事をお詫びします。」
“そう、有難う。
優紀さんの口座に振り込んで於いたわ。”
「それは、“結構です。”と、お伝えした筈ですが…?」
“私(わたくし)の気持ちなの。
受け取って頂戴‼
何方の海外に行かれるの?”
「有難うございます。
では、有難く頂戴致します。
其れと、何方に行くかは、お伝えしない方が宜しいかと思いますので、お伝えせずに、
旅立ちます。」
“そう、分かったわ。
では、お元気でね。”
「はい、家元夫人も…どうぞ、お元気で。」
そう伝えて、私は、家元夫人との話しを終えた。
そして、私は、翌朝、ある街に向かった。
私は、今後の事等、先の事を何も考えなくても済む場所に…向かって居た。
<総二郎side>
俺は、仕事の出張先から、マンションに戻って、有る異変に気付いた。
待って居てくれている筈の優紀の姿が無かった。
否、異変はそれだけでは無かった。
何か、優紀の物が減って居る事に気付いた。
俺は、至急、牧野に連絡を入れた。
「牧野、優紀が居ねぇんだ?
何か、聞いてるか?」
“西門さん?
えっ、優紀からは、何も聞いて無いよ?
何か、遭ったの?”
「嫌、良いんだ。
其れなら、良いわ。
サンキュ。」
そして、TELを切った。
俺は、出張前に優紀から言われた言葉や俺と交わした会話を思い出して居た。
~~『もし、もしもね…。
私が、総二郎さんの前から居なく成ったら、如何する…?』
『そんな事、有り得ねぇ話しだろ?
有り得ねぇ事は、口に出すな‼
それとも…?
俺の前から、居なく成りてぇとでも、言うつもりか?
俺の事、もう、愛してねぇのか?
俺は、もう、優紀を手放すつもりはねぇからな‼』
『そんな事無いわよ‼
好きに決まってるでしょ?』 ~~
俺は、顔面蒼白だったと思う。
“優紀は、また、俺の前から、姿を消したのか?”と…。
俺は、一番最初に母親を疑った。
今まで、何も言って来なかった事で、俺を油断させて居やがったのだろう。