タマのお気に入り…<つかつく> 短編
<ついさっきなんですが…。
娘から、「タマちゃんが…?」と、言われ、驚愕しました。
携帯を見せられ…佐々木すみ江さん…。
90歳…大往生ですよね。
佐々木すみ江さんが、演じられた『タマさん』…大好きでした。
お悔やみ申し上げます。>
私は、道明寺家の使用人に成って、60年…。
現在は、使用人頭を務めている。
現在の旦那様、司坊っちゃんのお世話を仰せ遣って居た。
そして、旦那様には、楓様が嫁がれ、司坊っちゃんには、つくしと言う恋人が居る。
此のつくしと言う娘(こ)は、此れが、また、司坊っちゃんを調教してくれる逸材で…。
まさか、こんな娘(こ)が、司坊っゃんの前に現れるとは、思わずに居た。
つくしは、私(タマ)のお気に入りでもある。
気が強くて、正義感が強くて、生真面目…で、負けず嫌い。
でも、人情味の在る、誰からも好かれる『他人(ひと)たらし』と言えば、つくしの事だろうと、大概の人は、分かるだろう?
こんなに、自分自身の事より、他人(ひと)の事…を、思える娘(こ)は居ないと思う。
自分自身を犠牲にしても、他人(ひと)を傷付ける事を嫌う。
他人(ひと)の幸せを願う。
其れこそ、他人(ひと)に愛情が無ければ出来る事じゃないよ。
それが、出来るのが、『牧野つくし』だよ。
その事を一早く、気付いたのが、司坊っちゃん。
私は、褒めて遣りたいと思ったさね。
そして、その事を見抜けなかったのが、楓様…。
残念だけど…。
だが、その事に気付いてからの楓様は、人が変わってしまった。
良い方に…。
『つくし』って言う娘(こ)は、そんな娘(こ)何ださね。
これからの道明寺家は、安泰だね。
先が、楽しみで成らない。
つくしが居れば、司坊っちゃんも、もう、真面な人間に成るだろう‼
私は、言う事は無いさね。
早く、司坊っちゃんとつくしの子供が抱ける日が来る事が楽しみで成らない。
私の年齢を考えて、出来るだけ早く、実現させて於くれよ‼
今日も、司坊っちゃんは、朝から、つくしと、言い合いを始めた様だ。
賑やかで宜しい‼
だが、一応、お目付け役としては、注意も必要だろう?
「坊っちゃん、つくし…?
何時まで、うだうだしてるんだい?
早く、リムジンに乗って、とっとと、仕事に向かいな‼
毎朝、毎朝、言われる事は一緒ださね。
成長の無い事だね。」
司坊っちゃんもつくしも、俯いて、神妙な顔付きに成って居る。
「悪かったな‼
タマっ‼」
「申し訳ありません。
行って来ます、タマさん‼」
私も、いつも通りに見送る。
「はいはい、行ってお出で‼」
やっと、(道明寺)邸も、静かに成った。
さあ、一休みでもするかね。
fin