1season女…<あき桜> 12.
<桜子side>
先輩に誘われた飲み会の日が来た。
集まるのは、道明寺さんと先輩と美作さんと私だけ。
私が、ラウンジのVIPルームに早目に着いた時には、既に、美作さんは着いて居た。
ラウンジのVIPルームに入った私は、美作さんを直視出来ずに居た。
勿論、美作さんも、私を見ようとはして居なかったみたいだったけど…。
けど、美作さんから、私に声を掛けて来てくれた。
あの時の美作さんと一緒に居た、私が感じた居心地の良さは、私の思い過ごしだったのか?
確認したいとは、思っていた私が其処には居たのだった。
「桜子…?
この前は、悪かったな?
俺が追い掛けずに、あの後、牧野に任せちまったから…な?」
「………」
私は、美作さんの言葉に『目が点』状態だった。
暫く、答えないで、美作さんをじーっと、見続けて居たら、また、美作さんが、私に訊いてくれていたみたいだった。
「桜子…?
如何した?」
私は、はっとした様に俯いてしまった。
そして、私は、“何か言わなきゃ‼”と、思い、言葉を告げてみた。
「いいえ。
私も、行き成り、跳び出す様な事をして、すみませんでした。」
私は、美作さんに声を掛けられた言葉に吃驚してしまった。
「なあ、桜子…?
あの時の、桜子の言った言葉が全てなら…?
桜子は、俺に癒しを求めてるって思っても良いんだよな?」
「………」
美作さんのその言葉に、私は、俯いて居た顔を上げて、吃驚した様な表情をしていたと思う。
それ程、私は、驚愕してしまっていた。
だから、私からは、返事が出来ずに居た。
だからだろう。
美作さんは、話しを続けて、私に言葉を伝えてくれて居たんだと思う。
流石は、『気配り上手の美作さん』だと、思った。
でも、其の言葉に、私は、更に、驚愕してしまった。
「そう何だよな?
言い変えれば、俺に、“癒して欲しい‼”って、桜子は、思ってんだよな?
違ぇか?」
「えっ??」
私は、更に、吃驚した様な顔付きをして、それ以上、言葉を発せなかった。
けど、この空間が、やっぱり、私には心地良い事を、悟ってしまった。
美作さんとなら、言葉を交わさなくても、私自身を偽らなくても…良い事を知ってしまった。
こんな状況は、私にとって、先輩以外、初めてだった。
私は、美作さんが、“私自身を受け入れてくれる‼”と、何故か、思ってしまった。
だから、美作さんに懇願する様に言われた言葉にも、嫌気はしなかった。
「なあ、桜子…?
俺は、どれだけ、牧野みてぇに、桜子を癒せるかも分からねぇ。
けど、俺は、俺成りの癒し方で、“桜子を癒して遣りてぇ‼”って、思ってる。
だから、桜子…?
俺を選んでくれねぇか?
ダメか、桜子…?」
「………」
だけど…?
美作さんが、そんな風に言ってくれるとは思っても居なかったので…。
私は、更に、驚愕してしまって居た。
だから、また、俯いて、黙ってしまった私が居た。
この時、美作さんが、私の想いを誤解してしまって居るとは、予もや、思わずに居たのだった。
【F3&T3…別室にて。】
司とつくしから、呼び出されていたF2&T2…。
実は、この日の集まりは、あきらと桜子にとっては、仕掛けられたものだった。
此の日の集まりの数日前に…。
F3&T3は、いつものメープルのラウンジのVIPルームに集結していた。
そして、いつまで経っても、重い腰を上げようとしないあきらに痺れを切らして居た司が、つくしを巻き込みながら、あきらと桜子を動かす事に成功していた。
で、此の日、司が、残業で、遅れる振りをして、別室にモニターを置き、ラウンジのVIPルームに設置した小型カメラで、F3&T3は、部屋の様子を窺っていた。
カメラは、最新版の為、画像はカラーで鮮明に映し出され、音声も聞き逃す事無く、モニターから流れて来ていた。
まさか、あきらと桜子は、そんな事が、別室で起こって居るとは思っても居なかった。
実は、司が、事前にあきらに、遅れる旨は伝えて居た。
司が、集まりに遅れて来る事は、毎度の事なので、“また…か?”って程度にしか、あきらは思って居なかった。
だから、気が焦って居たのかも知れないと思うあきらだった。
桜子と二人っきりに成れる間に、桜子の気持ち訊き出そうとして居るあきらだったのだ。
だからこそ、この事を後で知ったあきらは、かなり、キレる事は予想出来る筈だった。
だが、あきらと桜子の事を心配していたF3&T3にとって、この後の事までは、気が及んで居なかったのは、言うまでも無かった。
取り敢えず、バレない様にする事に徹しようと思うF3&T3だった。