打ち上げ花火…<つかつく> 2.
<司side>
俺はNYに連れて来られて4年目に成る。
大学はスキップして、去年、卒業した。
夏に成ると、思い出す。
あいつと見た(打ち上げ)花火…。
あの日、あいつ、俺に見せる為に浴衣を着て来たんだよな?
凄く似合ってて、可愛かった…。
暗くて良く見える筈無いのに、あいつが着ている浴衣姿のあいつだけは良く見えた。
今でも、良く覚えてる。
~~ NYに連れて来られた時…。
俺はお袋と約束した。
「俺は、道明寺に恩返しする為に此処に残る。
だから、あいつには、牧野には、危害は加えないでくれ。
それと、恩返しする期間は4年、4年だけだ。
俺はしっかり恩返しするから、4年で開放してくれ。
そして、政略結婚には応じない。」
お袋は約束してくれた。
口約束は、言った言わないになるので、誓約書を書いて、お袋にサインさせた。
だから、これで、4年後には、あいつに会えると、俺は確信めいたものがあった筈だった。
それなのに…。
後で知ったのは、お袋の裏切りにも似た行為だった。 ~~
『俺等は、会えねぇのか、会う事すら出来ねぇのか??
会いてぇよ、会いたくて仕方ねぇよ。
自分自身で決めた筈なのに…な。』
後で知ったあいつの家庭環境…。
あいつの親父さんのリストラ。
疎遠になっていた筈のあいつのお袋さんの伯父と言う親戚のタイミングの良い関西への呼び寄せ話し…。
そして、タイミングの良い時期でのあいつのイギリスへの交換留学話し…。
どれを取っても今なら、分かる筈だ、胡散臭さが…。
お袋の犯した罪は大き過ぎる。
そして、お袋の犯したもっとも遣っては行けねぇ、最大なる罪…。
俺には、もう、償う事すら出来ねぇくらい意気消沈するしかなかった。
打ち上げ花火…夏の風物詩
でも、俺にとっては、罪深い、儚い、二度と手に届かない…。
辛いものに変わりはない。
『あいつに会いてぇよ。
会えねぇなら、俺から迎えに行くか…?』