好きなのに…<総優> 1.
総二郎はF3から“メープルに来い。”と、呼び出された。
到着するや否なや、総二郎はあきらから、
「どした? その顔色?」と、心配がられた。
「えっ?」と、言われている意味が分からず、首を傾げていると、
「鏡、見て来たら…。」と、類からも言われる始末。
今日は、大学を休んで、ずーっと、邸でボーっとしていた。
優紀に会えなくなって、今日で3週間。
何もする気が起きず、自分でも、“何やってんだ。”って、思うんだから、F3からしたら、“しっかりしろ。”って、言いたいんだろうな。
「つくしがな、“最近の西門さん、何か変じゃない?”って、言ってんだが、“俺は何も知ら
ない。”って、言って於いたぞ。」と、司にまで原因を知っているぞと、言わんばかり
に言われた。
「はぁ??」と、答えると、
「自分で分かってないの? 総二郎。」と、類にまで、言われている俺って。
分かっているに決まってんだろ。
だから、苦しんでんだろ。
もう、どうにでもなれと、「原因は分かっている。」って、答えてやった。
そしたら、司が、
「何なら、昔、Wデートしただろ? また、するか?
今度は、俺とつくしが協力してやるぜ。」
上からか?と、言いたいが、勝手に口から出てきた言葉は心にもない言葉だった。
「ああ、宜しく頼む。」
「何時、Wデート、したんだよ~?」って、間の抜けた声が聞こえてきた。
「高校の時にな、俺とつくしを引っ付ける為に、総二郎が松岡にウソのデートを仕掛
ける手伝いをお願いしたらしいだよ。
ウソのデートだったはずなのに、思い掛けず、楽しいデートになったって訳。」
「その後は大変じゃなかったっけ?」
「………、類、思い出さすな。」
「自分から、言ったんじゃん。」
「………」
「おいおい。」
「今度は司と牧野が優紀ちゃんを騙すって訳…か。」
「騙すとは、人聞き悪ぃな?」
「でも、そう上手くいくの?」
「まあ、総二郎次第だろ。」
「どうやって、優紀ちゃんを呼び出すんだ?」
「う~ん!、実は、俺とつくし、婚約したんだわ。
そんで、邸で一緒に住む事になったんだわ。」
「どさくさに紛れて、自分の報告?」
「まあ、聞けって。
で、うちの邸でパーティするからって、つくしに松岡を呼び出させる。
総二郎と松岡は、うちの邸で散歩しろよ。
ムード出させてやるからよ。」
「良いのか?」
「良いも悪いもねぇだろ?
初めて、お前のそんな苦しそうな顔見たら、協力したくなるだろ。」
「司も片思いの苦しさは分かってるんでしょ。」
「まぁ~な。」