従兄妹物語…<つかつく>・<総優> 9.
ある日、家元が早目に帰宅すると分かっている日に、家元夫人は、家元に優紀を紹介する為、お稽古の後、優紀をディナーに誘った。
優紀は、“厚かましい。”と、断ったが、つくしも誘ってくれたので、断り切れず、御一緒させてもらう事にした。
その日は、いつも、午前様の総二郎も珍しく早目に帰宅して帰って来た。
総二郎の帰りを出迎えた使用人頭のかよも嫌味を言う程で有った。
「総二郎様、今日のお帰りはお早いのですね?」
「嫌味か?」
嫌味で有るのは間違いないのだが、更に、嫌味を言うかよで有った。
「いえいえ、そんな事は有りません。
が、いつも午前様なものですから…。」
何時もながらに、“嫌味ったらしい祖母さんだよ。”と、思う、総二郎で有った。
「今日は予定がキャンセルになったんで帰って来たんだよ⤵。
で、誰か来てるのか?
ダイニングが騒がしいようだが…。」
『優紀』の事を総二郎は知らなかったのかと、改めて思うかよで有った。
「ああ、祥一朗様のお知り合いのお嬢さんがお茶を習いに来られて居て、家元夫人のお弟
子さん何ですよ。」
「はぁ~??
お袋はつくし以外、弟子は取ってなかっただろ?」
「ええ、そうでしたが、つくし様のご友人と成れば、訳が違いますでしょ?」
つくしは、“友達が出来ない。”と、嘆いていたと思っていたが…。
「はぁ~??
つくしに友達が居たのか?」
「まあ、失礼でございますね。
とっても、仲が宜しいのですよ。」
『つくしの友達なら、会って見るのも悪く無いな。』と、思った総二郎は、ダイニングで食事をする事にした。
「かよ、俺の食事も有んのか?」
「ございますよ。」
「じゃあ、ダイニングで食べるから、用意してくれ‼」
かよは珍しい事も有るものだと思っていた。
「承知しました。」
総二郎は、ダイニングに入って行った。
家元夫人は、総二郎の早い帰宅に嫌味を言いながらも、優紀を紹介する事は忘れなかった。
「あら、総二郎じゃないの?
早いお帰りね?」
『どいつもこいつも…。』と、総二郎は、思っていた。
自分自身の行いを忘れている総二郎で有った。
「早く帰って来たら、いけないのかよ⤵、この家は?」
つくしが突っ込んできた。
「誰もそんな事は言ってないでしょ?
総兄がいつも…、う~ん、否、毎日か?
午前様で帰宅するから、そう言われるんでしょ?」
つくしのツッコミにタジタジの総二郎で有った。
「うるせ~よ、つくし‼」
総二郎とつくしが喧嘩に成りそうだったので、家元夫人が話題を変えた。
「此方ね、祥一朗のお知り合いのお嬢さんで、つくしの親友の『松岡優紀』さんと仰る
の。
つくしと一緒にお茶のお稽古を受けて貰ってるのよ。
つくしより上達が早くて、つくしより上のお免除を取得しているのよ⤴。」
総二郎は、感心していた。
「へぇ~、そりゃあ、凄いんじゃねぇ⤴。」
「ええ、そうなのよ⤴。」
つくしは、尽かさず、優紀が総二郎の毒牙に係らぬ様、総二郎を牽制し始めた。
「優紀、総兄みたいな『女たらし』の毒牙に引っ掛かったりしたらダメだよ‼
要注意人物なんだから…⤵。」
「つくし、お前な、兄貴に向かって言う言葉かよ?」
「兄貴の事だから、言うんじゃない。
親友が兄貴の毒牙に引っ掛からない様にする為に…ね‼」
「………」
総二郎は、随分な言われ様だなと、自分自身の行いを棚に上げて思っていたので有った。