バラバラの果てに…<ALL CP> 17.
総二郎は、日本に帰国後も腑抜けた状態で居た。
家元夫人は、総二郎が何故、腑抜けた状態で居るのかが、分からず、解せないで居た。
今や、総二郎の友人達は、皆、日本に居らず、家元夫人とて、誰に確認すれば良いのかも分からない状態だったのだ。
だからと言って、総二郎の今の状況を打破させなければ行けないのも、また、事実なのだ。
悩んでいた家元夫人だった。
一方、総二郎も、優紀に言われた言葉が頭に残り、中々、前に進めないで居た。
総二郎は、ベッドに寝転んで、自然に独り言の様に呟いていた。
「“会いに来ないで下さい。”か…⤵。
優紀ちゃん、酷ぇよな‼
俺は、如何すれば良い?
俺は、優紀ちゃんがあそこまで、頑なになる程、優紀ちゃんを傷付けていたつもりねぇ
んだよな。
俺は、自分自身が、優紀ちゃんにのめり込んで行く事が怖くなったんだよな…。
否、この家に生まれて来た以上、女を好きに成っちゃあ行けねぇって、思ってた。
更の時は、自然と、それが理解出来てたんだよな。
だから、“優紀ちゃんへの気持ちも回避出来る。”と…。
俺はそう思って居たんだよな…。
俺が、ちゃらんぽらんで在れば、優紀ちゃんは俺の前から居なく成る。
“それで、良いんだ‼”と、思ってただけだったのに…⤵。
やっぱ、優紀ちゃんに会えば、気持ちは抑えられねぇんだ。
今更だけど、高校の頃に、気持ちは戻ってるんだ‼
如何すれば良いよ、俺…?」
総二郎は、そう言いながら、自然と涙が出て、そのまま、眠りに着いて居た。
総二郎の独り言を偶然、家元夫人は扉の向こうで聞いて居た。
『優紀ちゃん』のフレーズに、“もしかして…?”と、思った家元夫人は、至急、京都に飛ぶ事に決めて、付き人に、スケジュールの変更をお願いした。
そして、京都支部長に連絡をして、“優紀さんに会わせて欲しい。”と、懇願した。
優紀と会う事が出来た家元夫人は、優紀に助けを求める様に話しを切り出した。
「優紀さん、ご無沙汰してましたわね。」
「はい、ご無沙汰しております。」
「優紀さんにお尋ねしたい事が有って、本日はお呼びしたの。」
「はい、何でしょうか?」
「優紀さん、総二郎をご存知?」
優紀は、嘘を言っても、バレれば大変な事に成ると思い、正直に話しした。
「はい、存じ上げております。
高校生の頃に、友人を通じて、知り合いました。」
「そう、そうなのね。
実は、総二郎が、NYから帰国後、腑抜けた状態に成っていて、仕事処じゃないの。
今や、総二郎の友人達は、全て海外でしょ?
何か、優紀さんはご存知ないかしら?」
優紀は、首を捻りながら、家元夫人に応えていた。
「あの~、何故、態々、京都にお越しに成ってまで、私にその様な事をお尋ねに成ってい
らっしゃるのか、皆目、検討が付かないのですが…?」
「そう…なのね。
優紀さん、総二郎の気持ちにお気付きじゃ無かったのね?」
「………」
優紀は、返答に困惑していた。
「優紀さん、総二郎は、如何も、優紀さんに『恋煩い』を起こしてしまった様ね…。
優紀さん、総二郎の気持ちには応じられない?」
優紀は、困惑するしかなかった。
優紀は、動揺していた。
家元夫人は、そんな優紀を見逃さなかった。
「優紀さん、高校生の頃、総二郎と、何か有ったんじゃないかしら?」
優紀は、家元夫人が何処まで、知っているのだろうと思わずにはいられなかった。
家元夫人は何も知らされていないのだ。
優紀に探りを入れているだけなのだった。
優紀は、多分、言わなければ、家元夫人は、優紀を開放してくれないだろうと、腹を括っていた。
「あの、この事は、私から聞いたと御子息には仰らないで下さいますか?」
「勿論よ、約束するわ。」
優紀は、一呼吸を置いてから、話し出した。
「私は、高校生の頃、西門さん、御子息をお慕いしていました。
その事は、西門さんもご存知の事です。
しかし、私は、西門さんに相手にもしてもらえなかったんです。」
家元夫人は、総二郎の気持ちを知っているだけに、優紀に話して、誤解を解きたかった。
「其れ処か、突き放されました。
だから、私は、西門さんに会わない様に、一生、西門さんと拘わらずに済むならと、京
都の女子大を選び、女子大を卒業しても、京都に居着いたんです。」
家元夫人は、“それは違うのよ…。”と、優紀の誤解を解けるなら、どんなに良いかと、思わずには、居られなかった。
だが、家元夫人が誤解を解いたとしても、総二郎の気持ちと、理解されなければ、何の意味も為さない。
成らば、“自分(家元夫人)が言うべきではない。”と、口には出せない家元夫人だった。