記憶を失って…<つかつく> 6.
古菱社長は、親友で企業経営者仲間と飲んで居た。
そのうちの一人から、話しを切り出された。
「古菱、何時まで、つくしちゃんを一般社員として働かせるつもりだ?」
「はぁ~??
如何いう意味だ?」
「小耳に挟んだんだが、古菱の所の経営企画部長が嘆いて居たそうだぞ⤵。」
「何と?」
「“社長のお嬢様を預かると言うのは神経を費やす。”と…。」
もう一人が声を挟んだ。
「そりゃあ、そうだろ⤴。
唯で冴え、預かるだけならまだしも、つくしちゃんは、『仕事は出来る』、『頭
は切れる』と来れば、唯、預かるのではなく、卒なく仕事が熟せるよう
仕事を教えるという意味合いも含まれる。
部長も死ぬ気でつくしちゃんに向かわなくてはいけないだろうな⤵。」
そんな事を部長が言っていたとは知らなかった古菱社長は驚愕していた。
そろそろ、つくしを上層部に入れ込まなくてはいけないかも知れないと、感じていた。
古菱社長には、つくしからの反発はかなりの物に成るだろう事は予想出来たのだが…⤵。
言い出しっぺの親友に古菱社長は、頼み事をした。
「次回の○○興産のパーティー何だが、実は、私は打ち合わせの為、出れなくなったんだ
が、つくしを一人で行かそうと思う。
つくしに今の件を説得してもらえないか?」
「親のお前がしなくて如何する?」
「事、仕事の件に関しては、自分の思いを貫く処が有る。
私の言う事を聞くとは思えない⤵。
頼むよ‼」
古菱社長は、拝む手をしながら、お願いをしていた。
「分かった、遣って見よう‼」
「宜しく頼む‼」
これで、交渉成立と成った。
実は、この企業経営者仲間の古菱社長の親友の二人は、つくしの記憶喪失の件を知っている数少ない二人で有った。
二人のうちの一人の息子もまた、つくしの件は知っていた。
この息子は、つくしの1歳上だが、大学がつくしと同じで、常に、つくしを見守っていた。
つくしの記憶には、父親同士が幼馴染で親友で、つくしとこの息子とは、自分達も幼馴染という風に刷り込まれていた。
将来は、両家の両親もこの息子とつくしとの結婚を熱望していた。
そして、パーティー当日、遅れてパーティー会場に到着したつくしを見て、驚いたのは、楓と司だった。
つくしが楓と司の横を通ったにも関わらず、つくしは楓と司を全くスルーの知らない人のような振る舞いに楓と司は驚愕していた。
そして、一人の青年がつくしに声を掛けて来た。
「つくし‼」
「あっ、耕平さん‼」
「遅かったんだな⤵。
探したよ‼
今日は、おじさん無しの初めてのパーティーなんだろ?
俺がサポートして遣ろうと思って、早目に来てたんだよ⤴。」
「あっ、そう何だ、有難う‼
でも、大丈夫かな?
優秀なうちの秘書を連れて来てるし…⤴。」
つくしはやんわり断りを入れていた。
だが、それでも、耕平は引き下がるつもりはないようだった。
その様子を、鋭い目付きで見ている者が居た。
今回のパーティーに出席していた司だった。
其処に例の社長がつくしに声を掛けて来た。
「つくしちゃん、お父さんの代わりは大変だろ?」
「おじ様、こんにちは!
いいえ、そんな事は有りません。
何事も勉強ですし…⤴。」
「ところで、つくしちゃんは何時まで一般社員として働くつもり何だい?」
「えっ、如何して、そんな事、聞くんですか?」
「つくしちゃん、社長の娘を預かる部長の気持ちを考えた事あるかな?」
つくしはこの社長の話しに驚愕していた。
「えっ、考えた事は有りません。」
「だろうね⤵。
つくしちゃん、考えてご覧‼
つくしちゃんは、自分自身を社長の娘としてではなく、つくしちゃん自身を評価して欲
しいかも知れない。
皆、もう既に、つくしちゃんを評価しているんだよ。
その上で言うと、部長だけではなく、部署として預かる者は、つくしちゃんに汚点を
付けてはいけないと言う責任が有るんだよ。
もう、一般社員の仕組みを見れたのではないかな?
頭の切れるつくしちゃんの事だ、その辺は、見尽くしているだろ?
もう、そろそろ、上層部の仕事を覚える時じゃないかな?」
つくしは、おじ様の言葉に、行き成り大木で頭を殴られた様な衝撃を受けた。
秘書も頷いていた。
楓はその様子を見ていて、つくしの周りを調べる様に、秘書に指示を出していた。