記憶を失って…<つかつく> 12.
「大河原に事の重大さを分からせる良いチャンスでしょ?」
一同、唖然である。
「如何いう意味だよ?」
類が珍しく、力説し始めた。
「だ・か・ら、大河原がした事は、牧野の将来をも左右した重大な過失何だよ⤵。
大河原に分からせないと意味がないでしょ?
だから、此処に大河原を呼んだ。
牧野が如何して、関西に移り住んだのか?
それは、司と大河原の将来を見届ける事が、牧野は辛かったからだよ⤵。
“俺と付き合ってる。”って、言う嘘を付いてまで、大河原の幸せを祝福しようとし
た。
その結果、牧野自身がズタボロに成った。
大河原は今後、牧野の前に現れるな‼
良いね‼」
滋は其処まで、滋自身の罪が重いとは思っていなかった。
ましてや、司がつくしと幸せに成れば良いと、自分さえ司から身を引けば、また、皆とは元に戻れると思っていた。
唯、F3&T2にとって、滋はつくしの幸せを奪っている人物という認識と、当時は、政略結婚だとしても司の婚約者としてしか誰も滋の事を見ていなかったので、誰一人として、滋を仲間という認識は無かった。
司を通してとしても、仲間だと思っていたのは、滋だけだった。
如何やら、滋自身の大きな勘違いのようだった。
「滋さん、先輩の前だけではなく、私達、全ての前に、滋さんの姿を見せないで下さ
いね‼
滋さんの姿を見るのは、此れが最後と言う事でお願いしますね‼」
滋はショックの余り、声が出せないで居た。
滋は大河原邸に帰宅するなり、滋パパに、今日の話しをしていた。
滋パパは滋が苦しむ姿が辛く、何故、滋だけが責められるのかと、滋と一緒に苦しんでいた。
大河原家から道明寺家に慰謝料請求をし、道明寺家より慰謝料を貰っている今となっては、道明寺家には反論も何も出来ない。
“こんな事なら、慰謝料請求しなければ良かった⤵。”と、思う滋パパだった。
また、つくしに許しを請おうたくとも、肝心のつくしに記憶が無ければ意味がない。
滋パパを以てしても、滋を救う手立ては成す術が無かった。
日に日に、滋は元気を失くし、部屋に閉じ籠る日が続いた。
司に連絡して、滋を救ってもらえるよう頼みたかったが、滋パパのプライドとしてそれは出来なかった。
慰謝料の有無が、何時までも尾を引く事に成った。
そんな時だった。
滋は、滋パパに無理矢理連れて行かれた関西のパーティーに出席した際、偶然、つくしに再会した。
案の定、つくしは滋とは分かって居ない。
分かっている事だったが、滋は寂しく感じた。
滋自ら、つくしに声を掛けた。
「こんにちは!
私、大河原財閥の娘で、大河原滋って言うの。」
「私は、古菱商事の娘で、古菱つくしって言います。
宜しくお願いします。」
滋とつくしは、握手を交わした。
其処に、耕平がつくしに声を掛けて来た。
「つくし。」
「あっ、耕平さん。」
「つくし、あの男と婚約したんだな?」
「ええ、そうだけど…、何か、有った?」
「否、あいつが好きなのか?」
「好きって言うか、まだ、其処まで気持ちは言ってないけど、正直、初めての無理強いの
婚約も、“まあ、良いっか⤴。”って、思えたと言うか?」
「俺の時は…?」
「ちょっと、待って‼
“耕平さんの時は?”って、如何言う意味?
私、耕平さんの事は、『頼りに成るお兄さん的存在』という認識しかないんだけど…
⤵。」
耕平は、何も言えなかった。
初めて、つくしの気持ちが聞けた言葉が、自分自身に対する気持ちは『兄貴的存在』の言葉にショックが隠せないで居た。
つくしは耕平自身を好きで居てくれていると、耕平は疑っていなかっただけに、ショックは相当なものだった。
だが、その様子をじっと見つめている者が居た。
そうなのだ、滋だった。
滋はまたしても、一目惚れをしたらしい。
耕平を好きに成ったようだ。
滋は現在のつくしと仲良く成って、耕平を紹介してもらおうと心に決めていた。