記憶を失って…<つかつく> 16.
つくしが記憶を失って、6年が経った。
その間、つくしの記憶は戻っていない。
司とつくしは婚約してから、1年が経った。
その間、司は、つくしと仕事だけでなく、プライベートも出来るだけ一緒に居るようにしていた。
つくしは徐々にではあったが、司を受け入れてくれているように、司自身、感じていた。
司とつくしは、お互いの呼び名にも変化が出て来た。
司は、半年後には、つくしさん→つくし へ。
つくしは、8ケ月後には、道明寺さん→司さん へ。
司はもう、『恋人同士として付き合っていると言っても良いんじゃねぇの⤴。』と、思っていた。
しかし、司がそう思っているだけで、つくしに聞いた訳では無かった。
司自身、つくしに聞くのが怖いのだ。
“嫌われるんじゃねぇか?”と…。
F4で集まって飲んで居たある日。
「司、そんなキャラじゃねぇだろ。
牧野に聞けば良いだけだろ?」
「それが出来るなら、苦労はしねぇんだよ⤵。」
F3は唖然である。
「でもさあ、今だから言うけど。
牧野が、『古菱つくし』になって初めて俺等の前に現れた時、司の喋り方、変じゃな
かった?」
「………」
「ああ、例の『つくしさん』呼びか?」
「………」
「それだけじゃないでしょ⤵。」
「………」
「ああ、それと、敬語に、変に気取った喋り方か?」
「………」
「ほんと、笑えたよね⤴。
半年くらいそうじゃなかった?」
「………」
「確かに、そんな司に慣れるまでに相当、時間が掛かった気がするぜ⤵。」
「………」
司は切れそうなのを抑えていた。
青筋が3本、額に浮かんでいた。
「てめぇ等、うるせぇ~ぞ‼
仕方ねぇだろ‼
見た目がこんなんだから、怖く思われるだろ⤵。
少しでも、優しそうって見てもらいてぇって、必死だったんだよ‼」
F3は感心していた。
「司、大人になったよな⤴。
それもこれも、牧野が傍に居るからだろ⤴。
やっぱり、猛獣使いは健在だよな‼」
あきらはしみじみ、言って除けた。
「うるせ~よ、あきら‼」
「でも、ほんとの処でしょ⤴。
司がNYに渡米してた頃、俺、司に会いに行ったじゃん。
あの時の司の瞳(め)、死んでたもん⤵。
あの時は言えなかったけど…。」
そうなのである。
司は未だ、つくしに寄って、司の精神状態は変わるので有った。
司の第1秘書の西田は、司のバロメーターはつくしだと認識しているくらいである。
プライベートで何か有れば、直ぐ、仕事に出て来る。
朝の司の顔付きで、機嫌の良さが分かるらしい。
F3は、“西田も大変だよな⤵。”と、気の毒がっていた。
西田は、“つくし様、そろそろ、司様の下に堕ちて下さいませ。”と、常に思っていたので有った。