もう一度、取り戻す…<つかつく> 3.
つくしは社長に呼ばれ、社長室に来ていた。
社長から、『道明寺HDに出向扱いで出向して欲しい』旨を伝えられたつくしは戸惑っていた。
「如何して、私が道明寺HDに出向しなければならないのですか?」
社長は申し訳なさそうに、つくしに伝えた。
「牧野君が道明寺HDに出向してもらえたら、我が社は、道明寺HDグループの傘下に入れ
るんだよ。
道明寺HDグループの傘下に入れるって事は、将来は安泰なんだよ。
我が社は、牧野君に寄って、救われるんだよ。
如何だろうか?
牧野君、道明寺HDに出向してもらえないだろうか?」
“はぁ~??”
つくしは心の声が出そうに成っていた。
まさか、楓がこう来るとは予想だにして居なかったつくしだけに驚愕していた。
唯、会社の存続とつくしの出向を天秤に掛けられたのでは、無下に断る事も出来ない。
楓は、その事を十分理解しているからの打診だった。
絶対、つくしは断って来ない。
道明寺HDに出向して来ると踏んでいた。
流石のつくしも、社長の懇願する態度を見て、無闇に引き離せない。
現在の道明寺HDの日本支社の支社長は会社役員の筈。
じゃあ、出向しても司に会う事はないだろうと踏んだ。
つくしは了承する事にしたのだ。
「社長、道明寺HDに出向します。
宜しくお願いします。」
この事は、社長より、至急、楓に伝えられた。
報告を受けた楓は、直ぐ様、行動に移した。
楓は、司を楓の執務室に呼んだ。
「司、6ケ月後には、貴方に日本支社を任せます。
6ケ月の間に引き継ぎを済ませて下さい。」
司は急過ぎて、楓が何か企んでいるのではないかと、疑っていた。
しかし、道明寺HDの幹部の人事権は楓にある。
取り敢えず、楓に従う事にした司だった。
そして、つくしは1ケ月後に、道明寺HDに出向した。
急な出向だった為、楓はつくしを援護する意味で、日本支社の社長朝礼の際、画面を通じて、つくしについて言及した。
「この度、我が社に出向して頂いた、広報部の『牧野つくし』さんは、私(わたくし)の
立っての希望に従い、出向してもらいました。
皆さんもそのおつもりでお願いします。
広告に掛けては長けた方です。
皆さんも刺激を受けてもらえたらと思います。
以上。
本日もお願いします。」
つくしは社員の注目の的に成ってしまった。
「社長に気に入られる何て凄い。」等、『よいしょ』の嵐だった。
そして、つくしが出向して、慣れて来た5ケ月後に、司が日本支社 支社長に就任して来た。
此処で、初めて、つくしは楓に嵌められていた事に気付いた。
取り敢えず、司にバレない様に行動する事に必死に成っていたつくしだった。
一方、司はつくしが広報部に居る事を楓から、聞かされていなかった。
楓は運命なら、司とつくしの二人は絶対、会社内で出会う事が出来る筈と踏んでいたので、敢えて、司には伝えて居なかった。
それが、予想だにしていなかった所から、つくしの所在が司にバレてしまった。
しかし、楓は慌てなかった。
寧ろ、司を刺激するような物言いで、司を対峙したので有った。
司にバレた事を西田から報告を受けた楓が日本に急遽、帰国して帰って来た時に、司は楓に確認を入れて来た。
「何故、つくしが道明寺HDに居る?」
「あら、貴方、知らなかったの?」
「………」
司は楓から、“知らされては居ねぇが…?”と、言いたかったが、口を慎んだ。
つくしが近くに居て、嬉しいのだから…。
「何なら、つくしさんをもう一度、貴方の懐に取り戻したら如何?」
「良いんだな?
俺はまた、つくしに向かうぞ⤴。」
楓は司の表情を見た。
つくしをまだ手に入れていないにも関わらず、司の眼が生きた瞳(め)に成っていた。
楓は思った。
やはり、司にはつくしが必要なのかと…。
「どうぞ、ご自由に…⤴。」
そして、楓はつくしに連絡を入れた。
「つくしさん、つくしさんが道明寺HDに出向している事が司にバレたみたい…⤴。
つくしさん、何時までも逃げてないで、諦めて、司の前に現れたら…⤴。」
つくしは、“はぁ~??”と、心の声を出しそうに成っていた。
楓はかなり楽しそうで有った。
楓は、『司とつくしの何方が先に降参するかしら⤴』と、茶目っ気たっぷりに独り言を言っていた。