好きなのに…<総優> 9.
総二郎は立ち上がれないでいた。
家元夫人は、間宮先生に相談の電話をしていた。
「間宮先生、お忙しいところ申し訳ありません。
ご相談が有りましたので、お電話致しましたの。」
「あら、私(わたくし)に相談って、どういうご用件でしょうか?」
「優紀さんの教授を私(わたくし)にお任せ頂けないでしょうか?」
「えっ??」
「お恥ずかしいお話しですが、うちの総二郎が優紀さんに『恋煩い』を起こしてしまいま
して、再起不能の状態ですの。」
「まあ。」
家元夫人は正直に間宮先生に話して聞かせた。
何れ、優紀が嫁いで来てくれたとしても、優紀に肩身の狭い思いをして欲しくはないと、家元夫人は思っていたのであった。
「私(わたくし)は、何れ、総二郎のお嫁さんには優紀さんと考えておりますの。
その為には、私にお任せ頂いた方が、西門流のしきたりや家元夫人としての自覚をお教
え出来るかと…。」
「分かりましたわ。
でも、私(わたくし)は三条の大奥様から優紀さんをお預かりしているので、私一人で
は判断出来る用件ではございませんでしょ。
三条の大奥様とご相談致してからでも宜しかったでしょうか?」
「ええ、お願い致しますわ。」
某日、家元夫人、間宮先生と三条邸へ
其処で、家元夫人は、事の経緯を全て、三条の大奥様に話しして聞かせた。
大奥様は笑いながら…、
「間宮先生、家元夫人に優紀さんをお任せ致したら如何かしら。」
「えっ?? 大奥様?」
「家元夫人のお手並み拝見致しましょ。
間宮先生、宜しかったかしら?」
間宮先生は、三条の大奥様が家元夫人に断わってくれると思っていたので、不服ではあるが、大奥様に言われては何も言えず、大奥様に従うしかなかった。
優紀は必然的に家元夫人の愛弟子になる事になった。
また、家元夫人は将来的に優紀が西門家に嫁ぐ日が訪れた場合でも、三条の大奥様に優紀の後ろ盾になって下さるとの約束をも取り交わしていた。