慕情そして恋情…<つかつく> 25.
<翼side>
父さんの仕事振りは流石だと思った。
何が必要か不必要かをその場で素早く判断して、的確に指摘し、指示し、人を動かしている。
今までこのプロジェクトに関わって居なかったのに、まるで、既に、関わって居たかの様に、的確に指示を出している。
凄過ぎて、母さんの前に居る父さんを知って居るだけに、別人に思えて仕方ない。
俺は、極自然に、父さんに聞いて居た。
「父さん、何故、そんな的確なんだ?」
「ああ?
何でって、言われてもな…⁉
感覚で分かるだろ?」
「感覚…ねぇ?
一番、難しい事じゃないかなぁ?」
「そうだな。
手慣れて行けば行く程、自分自身に身に付くんだよ‼
それがまた、自信に繋がる。」
「だろうね。
父さんは、30代前半には、副社長だったんだよな?
父さんは、やっぱ、凄いよ‼
俺は、まだまだだよな?」
<司side>
俺は、翼の言葉に居た堪れなかった。
俺が副社長に成ったのは、確かに、翼の言う通り、俺が30代前半には成っては居た…けど。
あの頃は、お袋のプライドの下、俺は副社長に成れただけで、俺の実力とは程遠かった。
だが、それを言えば、お袋が苦しむだろう…。
だから、翼には、敢えて言えなかった。
だが、翼は、実力で、のし上がって来る事を、俺は望んでいた。
其処には、外の面として、見た目の安定感が必要って事も有る。
その事を翼にも、そろそろ分からせる為に、教えて行かなければならねぇのかも知れねぇな…。
俺は、翼に、実力が伴う為には、見た目も必要という事を話した。
「翼、実力は、何も内面の部分だけを言うのじゃねぇぞ‼
外の面も必要に成る。」
「それって、如何いう意味?」
「見た目の安定感・信用性…。
人間性の見た目の落ち着きは、家庭を持つ事から生まれる共も言われている。
って、事は、家庭を持つ事で、精神的に落ち着いて来るっていう事だ。」
「父さんもそうだったって事だよな?」
「そうだな。
つくしに再会するまでの俺は最低だったって知ってるだろ?」
翼の奴、しみじみしてやがる⤵。
親の立場の俺をそんな風な顔で、しみじみ見るな‼
「まあ、そうだったよな。
俺の将来の事だし、日本での仕事の件も、家庭を持つ事も、良~く考えてみるよ‼」
「ああ、そうしろ‼」
こうして、親子の会話は終わった。
翼は、俺の言葉を理解してくれたみてぇで、後で、翼が親父に相談した際も、“父さんと仕事を一緒にする事も悪くないかも知れない。”と、言ってくれてたらしい。
初めて、親として、翼に認めてもらえた様な、擽ったい気分になったのは、照れではなく、親として、嬉しかった。
親父から、翼を日本に転勤させると言われた。
親父からは、“まだ、内示は出さないが、近々、内示を出す。”と、言って来た。
いよいよ、翼と、本格的に、仕事を共に出来るんだと、俺は嬉しく思っていた。
もう直ぐ、翼は31歳を迎えようとしていた。