馬鹿だよな、俺…<総優> 2.
<総二郎side>
俺は、英徳大学に向かった。
英徳大学に行けば、牧野と桜子に会えると、思ったからだ‼
だが、行き違いに成ったのか、会えずに居た。
そして、俺は、仕方なく、牧野にTELを入れた。
「牧野か⁉」
“えっ、西門さんっ‼”
「ああ。
牧野、頼みが有んだ‼」
“えっ、何…?”
「優紀の携帯が繋がらなく成ってんだよ。
優紀の携帯のアドレス、教えてもらえねぇか?
俺、参ってんだ…。」
“ああ、無理かな?”
「如何してだ??」
“優紀に言われてるの…。
西門さんから連絡が有っても言わないで欲しいって…。
二人の間に何が有ったの?
優紀からは、“これから、就職活動が忙しくなるから、もう、集まりには参加出来な
い…。”って、言われてるんだよね⁉”
「そうか…?
優紀、そんな事を言ってたんか⁉
悪ぃ、俺、焦ってんだ‼
優紀を失いそうで…⁉
牧野、頼む、優紀に伝えてくれ‼
“連絡を待ってる‼”って‼」
“う~ん、分かった‼
取り敢えずは、言って於くよ‼”
「頼んだな‼」
だが、一歩、遅かった。
優紀は、誰にも何も言わず、留学をしてしまっていた後だった。
牧野の話しでは、優紀の母ちゃんから聞いたとかで…。
優紀は、通訳の仕事に就きたかったらしく、留学をする事で、仕事の選択肢を増やす目的が有ったそうだ。
しかし、何処の国に留学したかは、優紀の親からも教えてはもらえなかったとの事だった。
俺は、ショックで立ち上がれずに居た。
優紀を失くした事で、やっと、俺は、優紀に惚れてた事を実感していた。
本来は、分かる様な事なのに…な。
何故、俺は、今の今まで、自分自身の気持ちに気付けなかったんだろうか?
<優紀side>
大学の国際教養学部 英文科に在籍している私は、誰にも何も言わず、留学する事を選んだ。
本来なら、大学2年の時に、私に交換留学の話しが大学側から出て、教授推薦してくれると言う事だった。
だけど、その頃の私は、西門さんを吹っ切ってまで、留学と言う気に成れず、交換留学の話しを保留にしてもらっていた。
だが、今、行かなければ後悔する気がして…。
就職活動が押し迫っては居たが、大学4年に成る直前に、交換留学の道を選んだ。
何時までも、西門さんに依存する事は、私にとっても、西門さんにとっても、良く無いと判断したからだった。
いつか…が、来る時、私が、再起不能に成らなくても済む様に…。
そして、私は、留学をした。
私の母親には、例え、親友のつくしでも、この事は、内緒にしてもらう様に話して於いた。
つくしも、道明寺さんが帰国する事が決まり、現役で、司法試験を合格しようと勉強を頑張ってるのに、私の事で、煩わせたくなかったのだ。
だから、多分、つくしも、未だに、この事は、知らないだろう⁉
そして、私は、未練を断ち切る為に、西門さんから戴いた物、全てを返した。
ううん、黙って、マンションに置いて来た。
そして、私は、未練を断ち切る為、後ろを振り向かない事を誓って、留学生として、勉強に邁進しようと誓っていた。
留学してから、1年半が経った頃、私は、会いたくなかった人に、留学先で会ってしまった。
偶然だったのだが…。
<あきらside>
ある日、突然、優紀ちゃんが、俺等の前から居なく成ったと、桜子から聞いた後…。
俺は、総二郎にも、全く会わなく成って居た事に気が付いた。
毎夜毎夜、現れていた総二郎が、行きつけのバーにも、ラウンジにも、現れず、可笑しいと思い、俺は、西門邸に向かって居た。
何故なら、総二郎の携帯に連絡を入れても、一切、通じねぇからだった。
俺が西門邸に行った時、総二郎は、西門邸の自室に居た。
総二郎は、顔色も悪く、生きた屍の如く、唯、何の感慨も無い様子だった。
俺が聞く処に寄ると、仕事をして居る様だが…。
唯、仕事を遣っているといった感じの様子だと聞いて居た。
総二郎は、口数も少なく、言われた事だけに答え、唯、言われた事をするのみだと、聞いた。
そんな総二郎は、家元と家元夫人にとっても、初めての事だった。
あんなに、自信に満ち溢れ、誰からも容貌の良さは認められる処で有った総二郎が…。
総二郎自身が放つ輝きを失くし、顔に艶が無く、生き生きさが全く無く成って居る様に、俺には見えた。
総二郎の余りの変わり様に、俺は、『目が点』、状態だった。