好きなのに…<総優> 10.
「優紀さん、来週からは西門邸でお稽古になりますので、そのおつもりでいらして。」
「はい、承知致しました。」
優紀は、総二郎に会う事は無いだろうと、先生に言われた事なので了承した。
また、優紀の知らない所で事はどんどん進んでいた。
お稽古日、当日…
待って居たのは、間宮先生ではなく家元夫人であった。
「お部屋を間違えたでしょうか?」
「いいえ、今日から、優紀さんは私(わたくし)の愛弟子よ(笑)。」
優しい笑顔で言われ、優紀は居た堪れなかった。
「どういう事でしょうか?」
「そう言う事よ(笑)。」
“はぁ~⤵。” 優紀は心の声が洩れていた。
その夜、総二郎は家元夫人に呼ばれた。
「今日から、優紀さんは、私(わたくし)の愛弟子になりますので、そのおつもり
で…。」
「はぁ??」
「………。嬉しく無いのですか?」
「驚きの方が大きいだろ?
優紀ちゃんをこれからどうしようとしているんだよ?」
「あなたは優紀さんと、どうなりたいの?」
「はぁ??」
家元夫人は更に追い打ちを掛けて聞いて来た。
「総二郎さん、あなた、優紀さんの事、お好きなんでしょ?」
「好きだよ。
だから、苦しんでる。」
「見ていたら、分かります。」
「………」
「家元が、“総二郎に何が有ったんだ?”と、聞いてきましたよ。」
「答えたのか?」
「答えられる訳、無いでしょ。
優紀さんの気持ちが何処に有るのか分からないのに…。」
「………」
総二郎はイチかバチか、家元夫人に聞いてみた。
「お袋、頼む、俺も優紀ちゃんの稽古に参加させてくれ。」