生まれ変わり…<つかつく> 5.
<司side>
この時、既に、美桜の心は、俺から離れようとしてるとは、思いもしなかった。
司は、幾ら、美桜に連絡しても、TELだけでなく、メール、LINEに至っても、着信拒否をされたままだった。
“美桜は、ババアから、何を聞かされたんだ。”と、俺は困惑するしかなかった。
大体は、予想は就いて居たのだが、俺は、出張の度に、古菱商事を訪れていた。
一方、美桜は、あの、パーティー会場で、楓に会っていた時、司の恋人だったというつくしと司の過去を聞かされていた。
そして、美桜は、つくしにそっくりで有るという事も…。
美桜は、司を好きに成り掛けていた。
それが、自分自身ではなく、美桜の中のつくしを見ていた事を知った。
美桜は、余りにもショックで、此の現状が受け入れられなかった。
そして、司から、離れる事を決断した美桜だったのであった。
司は、古菱商事に行っても、美桜には会えなかった。
否、会わせてもらえなかった。
「道明寺さん、申し訳ありません。
美桜を道明寺さんに会わせる訳には行きません。」
「如何してもですか?」
「ええ。
美桜から、聞きました。
道明寺さんは、道明寺さんの嘗ての恋人と美桜を重ねて見ていらっしゃると…。」
「それは、嘘では有りません。
ですが、俺は、今では、美桜さんを一人の女性として、見てます。」
「申し訳ありません。
美桜が、もう、道明寺さんとお会いしたくないと申してます。
申し訳無いのですが、お引き取り下さい。」
俺は、立ち上がれずに居た。
“俺は、美桜に弁解する余地も与えられねぇのか?”と、落胆していた。
美桜は、あれから、司との連絡を絶ち、会う事もせず、落ち込む日が続いていた。
そんなある日の事だった。
美桜の夢に、つくしが出て来た。
「美桜さん、私は、つくしなの。」
美桜は、自分自身かと思う様な容姿のつくしに驚愕していた。
「つくしさん…??」
「そう、つくしなの。
道明寺を許して上げてね⤴。
道明寺の夢の中に入って、私が言ったの。
“私を探して‼”って…。
だから、道明寺を許して上げて‼
貴女は私なの。
貴女は、私の『生まれ変わり』なの⤴。
貴女と私の魂は同じなの⤴。
信じる?
信じられなくても当然よね。
でも、事実なの。
私は、夢半ばにして、病に負けた。
私は、結局、道明寺には、何もして挙げられなかった。
今でも、それが心残りなの。
美桜さんに、私が出来なかった心残りを託して良いかな?
私と同じ魂を持つ美桜さんに託したいの。
他の人にはお願いしたく無いの。
お願いね‼」
美桜は、驚愕して、言葉も出なかった。
そして、其処で、美桜は目覚めた。
『夢? それとも、現実?…。』と、 いう位、リアル感が半端なかった。
あの日から、つくしは、ぱったり、美桜の夢の中には出て来なく成った。
美桜は、非現実的なこの話しを、本当に信用して良いのか、迷いに迷っていた。
余りにも突拍子も無い、非現実的な話しに、誰にも相談出来ずに居た。
そんな時、司の差し金で、つくしの親友だった優紀と桜子を美桜の元に送り込んだ。
優紀と桜子は、司から話しを聞いて、美桜の元に行く事を承諾していた。
今では、『西門優紀』と『美作桜子』なのだ。
優紀と桜子は、司の元恋人のつくしの親友でも有るが、司は、優紀と桜子のそれぞれの夫の親友なのだ。
その司の一大事に協力しない訳無かったのだ。
初めて会った年上女性に如何対応して良いか迷っていた美桜は、唯、黙って居るだけだった。
優紀と桜子は、司とつくしの全ての経緯(いきさつ)を話しして聞かせた。
美桜は、楓から聞いて居た事と全く違う内容に、気が動転していた。
桜子は、美桜に確認した。
「道明寺さんのお母様から、どんな風に聞いて居たの?」
「つくしさんは、お金目当てだったとか、道明寺さんを自分の意のままに操ろうとしてい
たとか、道明寺さんのお母様から道明寺さんを奪ったとか、そんな処でしょうか?」
「全く違う事は分かってくれた?」
「はい、分かりました。」
「そう、良かった⤴。
でも、本当に、そっくりだわ、先輩に…。
亡くなった頃のままの先輩…よね?」
桜子は、優紀の方を向いて言っていた。
「ほんとにそうね。
一瞬、間違いそうに成るくらいよ⤴。」
美桜は、夢の中のつくしの面影を思い出していた。
「そんなに似てますか?」
「「ええ、そっくりよ‼」」
優紀と桜子の言葉が、シンクロした。
それ程までに似てるのかと、美桜は思わずには居られなかった。