人間恐怖症…<つかつく> 57.
司は、更に、美桜に、確認する様に、声を掛けたのだった。
「美桜…。
此れで、分かったろ?
潤が、俺の息子で在ると言う事を…。
潤の容姿は、諸に、俺のDNAを受け継いで生まれて来たと言う事を…。
潤の親は、俺と美桜だと言う事を…。」
美桜は、納得せざるを得ない状況に、頷くしか無かったのだ。
だが、其れでも、美桜は、司に抵抗する言葉を、告げるのだった。
「納得は…しました。
でも…。」
だが、司も、そんな美桜の言葉に重ねる様に、また、言葉を紡ぐのだった。
「其れでも、美桜は、まだ、信じらねぇってか?
お前は、頑固だよな。
やっぱ、お前は、お前だよな‼
其れとも、俺が美桜の相手っててのが、許せねぇか?」と…。
そう言われてしまった美桜は、首を左右に振るのだった。
そして、美桜は、そう訊いて来た司に、今の美桜の気持ちを伝えるのだった。
「いいえ。
そんな事は、有りません。
でも、今の私には、過去の記憶が有りません。
だから、怖いんです。
いいえ。
今の私は、不安…何です。
今までの私は、過去の記憶を気にした事が有りません。
何故なら…。
気にする必要性が無かったからです。
生活する上で、記憶が無く共…。
私には、支障が無かったからです。
だから、貴方が、私の目の前に居る事が、怖いんです。
貴方は、私の過去を知って居るんですよね?
だから、私は、怖いんです。
だから、私は、不安にも成るんです。」
そんな風に聞かされた司は、美桜を諭し始めたのだ。
「ああ。
俺にも、美桜の不安な気持ちは理解出来る。
俺にも、お前の記憶が無かった時期が有ったんだ。
俺は、お前だけの記憶を失って居たので、お前よりも、生活に支障が無かった。
だが…な。
イライラするんだよ。
お前が、俺の傍に居ねぇだけで…。
お前の記憶もねぇ筈なのに…よ。
其の時の俺は、精神的にも、俺の頭の中も、心も、全てが、不安定に陥っていた。
其れが、証拠に、お前を思い出した途端に…。
俺の頭の中では、『後悔』だけが付き纏って居たが…。
其の頃は、靄が掛かっていた俺の頭の中は、すっきりして居たし…。
其れに何よりも、俺の心の中は、安定していた。
其れが、如何いう意味だか?
今のお前には、分かるだろ?
だからって…。
お前に、“俺の記憶を取り戻せ‼”と、言って居る訳じゃねぇ。
そんな事は、そう簡単な事じゃねぇ事も、俺自身が一番理解してる。
だから、今の美桜の不安な気持ちも、今の俺は、誰よりも、理解している。
だが…な。
俺を避けるな‼
俺の傍に居る事で、過去の自分自身を思い出す事に、不安な気持ちに成る事が怖いな
ら…。
無理矢理、思い出そうと思わなくて良い。
俺とは、初めて会った進の知り合いだとでも思え‼
其れから、徐々に、俺を受け入れろ‼
先ずは、俺という人間が如何いう人間か?
其れだけ、考えろ‼
其れだけ良いから…。」
此の時の司は、必死だったのだ。
そんな司の様子を観て居た進でさえも、そんな司の事が不憫な気持ちに成って居たのだった。
だが、美桜は、そんな司に、素直な気持ちで、お礼が言えたのだった。
「分かりました。
ご配慮に、感謝します。
有難う御座います。」と…。
だからだったのだろうか?
此の時の司は、お礼の言葉を伝えて来た美桜に、目を見開いて、驚愕するのだった。
実は…。
“『牧野つくし』の記憶が無く共…。
美桜は、やはり、『牧野つくし』何だな‼”と…。
美桜からのお礼の言葉を聞くまでの司は、そう思って居たのだ。
所謂、“美桜は、『牧野つくし』と相変わらず、同じで、頑固で、頑なな心を持って居る。”と、司は、理解して居たのだ。
だが…。
此の時の美桜は、素直さが際立ったのだ。
“道明寺さんが、驚愕するのも、無理はない。”と、思う進だったのだ。
だからだったのだろう。
司は、そんな美桜に、了承の言葉しか、返答出来なかったのだ。
「ああ。」と…。
そして、此の日の司は、長居する事を、避けたのだった。
其れは、美桜の負担に成りたく無かったからだ。
なので、司は、続けて、美桜に伝えたのだった。
「今日の処は、初日だし…よ。
俺は、帰るわ。
けど…よ。
明日も…。
明後日も…。
また、其の次の日も…。
毎日…。
美桜と潤に会いに、此処に来るから…よ。
俺を避けるなよ‼」と…。
そして、司は、名残惜しそうに、進と共に、美桜と潤の部屋を後にしたのだった。
そして、進と共に、美桜と潤の部屋を後にした司は、進に声を掛けるのだった。
「なぁ~、進…。
ちょっと、俺は、美桜に強引だったか?」
そんな風に、不安な顔付きで、進に訊いて来る司には、苦笑いの進だったのだ。
「如何でしょうか?
俺は、『姉さん』じゃ無いので、姉さんの気持ちは分かりませんが…。
姉さんが、あんな風に、お礼の言葉を、道明寺さんに伝えたと言う事は、其れ程、気に
する事も無いと思いますが…。
でも、俺が、観て居て、思ったのは…。
少し…。
強引だったですかね?」と…。
なので、司も、進の返答の言葉を聞いて、苦笑いだったのだ。
だが…。
司は、進に、訊き始めたのだった。
「そうか?
気を付けるわ。
後…なぁ~。
美桜は、あいつより、素直だよな?」と…。
なので、進も、そんな風に訊いて来る司に、言って除けるのだった。
「そうですね。
そうかも知れませんね。
姉さんは、『姉ちゃん』みたいに、自分の意見を押し通そうとし無いですし…。
其れに、道明寺さんが、姉さんに言って居た様に…。
姉さんは、頑固でも無ければ…。
其れ程…。
頑なでも無いですよ。
何方かと云えば…。
自分自身が、理解出来る様に、訊いて来るって、感じでしょうか?」
司は、美桜に対する進の解釈には、納得だったのだ。
だから、司は、進には、言えた言葉だったのだ。
「やっぱ、そうだよなぁ~。」
何か、考え乍ら、言って来る司に、進は、不安に成り乍ら、訊いて視たのだった。
「道明寺さんは、やっぱり、今の姉さんより、『姉ちゃん』の方が良いですか?」
だが、司は、そんな風に不安に成って居る進に、言って除けるのだった。
「否…。
そんな事はねぇよ。
何方かというと…。
一人の女で、二度楽しめるって、感じか?
けど…な。
ちょっと、テンパる時が有って…よ。
此れからの為にも、対処方法を知ってるのは、良い事だろ?」
なので、進は、思ったのだった。
“そう言う事か?”と…。
だから、進は、司に言えた言葉だったのだろう。
「そうですね。」と…。
そして、司は、エントランスに着いた時に、進に伝えて、帰って行ったのだった。
「明日からも、潤が、起きている時間に来るわ。」と…。
なので、其の時の進は、そう言った司に、笑って、頷くのだった。
