記憶を失って…<つかつく> 7.
楓はつくしの調査結果を待って居た。
1週間足らずで調査結果が楓の前に持って来られた。
~~調査結果は…
*つくしが大学1年の夏に階段から転落後、意識不明の重体で病院に運ばれた。
手術後、2週間昏睡状態で覚醒後は、それまでの18年間の記憶が全て失われた。
*その後、つくしを助けた古菱夫妻の養女に成っている(古菱夫妻には実子は居ない)。
*世間では、古菱夫妻の実子として認識させている。
*つくしには記憶の無い18年間の虚偽の記憶が刷り込まれている形跡が有り。
*大学は、○○大学 経営学部をトップの成績で卒業
*つくしの実父母と弟は事故に寄り、他界。 ~~
また、余談として、楓は古菱商事の調査結果の報告も受けていた。
古菱社長は、5年程前から2回程、東京進出を狙っていた事を確認した。
2回とも、不発に終わっている。
唯、2年前から(つくしが入社した頃から)、古菱商事としての実績は、顕著に伸ばしていた。
調査結果を受け取った楓は直ぐに、古菱社長にアポイントを取る様に指示を出した。
また、『耕平』とか言う青年がつくしの傍に居る事も厄介で有る。
“早く手を打たなくては…。”と、楓は思っていた。
そして、アポイントを取って、古菱社長に面会した。
「これはこれは、道明寺社長が私共のような弱小企業にお越し下さるとは、どの様な用件
でしょうか?」
「つくしさんの件ですわ。
『牧野つくし』の筈が、何故、『古菱つくし』として、第2の人生を過ごしてらっしゃ
るのかしら?」
「………」
古菱社長は、何も答えられずに居た。
「つくしさんは高校生の頃、私共の息子 司の彼女でしたの⤴。
お恥ずかしいお話しですが、息子は今でも、つくしさんを忘れられないようで、足掻い
ているようですの⤵。」
「ですが、御子息は確か、婚約者がお出ででは有りませんか?」
「ええ、以前は…⤵。
ですが、司自身が受け付けず、婚約解消致して折りますの⤴。
この婚約は、私(わたくし)一存で居たした事。
つくしさんには辛い思いをさせてしまいましたわ⤵。」
「………」
楓は、此処で本題に持っていった。
「古菱社長、東京進出を狙ってお出でとか…?
私共が手助けをさせてもらう事は可能ですのよ。
但し、条件がございますの⤴。」
「どのような、条件でしょうか?」
「私共の息子 司とつくしさんをお見合いの席で引き合わせたいと思っておりますの⤴。
如何でしょうか?」
「それは将来をも含めてという事でしょうか?」
「お見合いと言うのは、そう言う意味じゃ御座いませんの?
それと、東京進出の際は、つくしさんを責任者として、据え置いて頂きたいわ⤴。」
「承知致しました。
また、日取りは、そちらにお任せ致します。
宜しくお願い致します。」
此れにて、交渉成立した。
古菱社長は、その後すぐ、耕平と耕平の両親に会い、道明寺社長との経緯(いきさつ)を話しして聞かせ、つくしとの結婚の件はなかった事にしてくれとお願いした。
これに異を唱えたのは、耕平だった。
「おじさん、約束が違うよ‼
つくしは俺と結婚出来るんだったよね⤴。
それが何故、『道明寺』何だ⤵。
『道明寺HD』の方が、うちよりデカいから…?
そうでしょ‼
なら、今からでも俺、頑張るよ⤴。
おじさん、もう一度、考え直してよ‼」
「………」
古菱社長は、黙ってしまった。
「耕平、古菱には古菱の仕方ない状況ってもんが有るんだよ。
諦めなさい‼
それが企業だ‼」
「弱い者は撒かれてれば良い訳?」
「この業界は弱肉強食だ‼
耕平、諦めなさい‼」
耕平はつくしに会って、つくしの気持ちを聞こうと画策していた。