切な過ぎる二人…<総優> 2.
<総二郎side>
俺は、失った者の大きさに打ち拉がれていた。
何故、何故、何故…?
あの時、高校の頃、あんな簡単に失う事が出来たのだろうか?
こう成らなければ気付けねぇ何て、情けな過ぎて、何も言えねぇ…よ。
あの、大きな瞳(め)で、俺の事を、“好き‼”と、言ってくれたあの瞳にまた会いたい‼
“心が寒ぃ~よ。”と、言った俺に、何の躊躇いも無く、“私が温めて上げます‼”と、言って、自分自身を差し出したあの娘(こ)に会いたい‼
まだ、俺の身体は覚えているんだよな…⁉
あの時のあの娘(こ)を…。
俺は、後悔の自責の念で、心は一杯だった。
何もする気にも成れず、食事も喉を通さず、眠る事さえ出来ずに居た。
<あきらside>
総二郎の様子が変だった。
何処を見てるのか?
上の空と言うのか?
日に日に、総二郎が総二郎で無くなって行くのが良く分かった。
総二郎は、また、殻に閉じ籠ってしまったのだろう。
高校の頃の総二郎の様に…。
俺は、ご無沙汰過ぎるくれぇ、久し振りに、西門邸に出向いて、総二郎に会いに行った。
其処で、西門家の使用人頭のかよさんから、飛んでもねぇ話しを聞いて居た。
「美作様、ご無沙汰致して折ります。
良く、お出で下さいました。
総二郎様にお会い頂く前に、少し、私の話しを聞いて下さいませんか?」
「ええ、構いませんが、何か有ったんですか?」
かよさんは、躊躇しながらも話し出した。
「総二郎様の縁談が成立し、婚約発表が両家から為されてから、総二郎様のご様子が一変
してしまいました。
お食事も為さらず、ここ最近は、睡眠も熟睡為されて居ないご様子で、お仕事にも支障
を来たし始めており、日に日に、窶れて行かれています。
総二郎様に何がお有りに成ったのかご存知有りませんでしょうか?」
あきらも、心配で来てみたが、其処まで深刻とは考えてもみなかった。
「俺も、総二郎に何が有ったのか知らないんですよ。
心配だったので来てみたんですが…。」
かよさんは、肩を落とすくれぇ、ショックの様子だった。
俺が何か知っているとでも思っていたのだろうか?
<総二郎side>
あきらが会いに来てくれた。
あきらは部屋に入る成り、俺に声を掛けて来た。
「総二郎、お前、如何した?
窶れてるぞ‼」
「ああ、そうだな…。」
あきらは、か細く返事を返す俺に、『一抹の不安を覚えたのは言うまでもねぇ』と、後から聞いた。
「はぁ~??
総二郎、ほんと、如何したんだよ?
気力もねぇ何て、お前…?」
「………」
俺は、あきらにバレたのかと、思っていた。
しかし…、俺は、あきらの返答に脱力した。
「縁談が決まったからか?」
「………」
其れも一理有ると言えばそうだが…。
それだけじゃねぇよ‼
「あきら、もう、手遅れかもな?」
「何が…だ?」
「もう、取り戻せねぇ…よな?」
「だから、何を…だ?」
「俺、辛ぇんだよな…。
もう、取り戻せねぇなら、如何でも良いかもな…⁉」
「だから、何を取り戻すんだ?
協力出来る内容なら、協力して遣るから、言えよ‼」
俺は、意を決して、あきらに言って除けた。
「優紀ちゃんっ‼」
あきらは、驚愕していた。
俺とあきらの会話を聞いている家の者が、扉の向こうに居るとは知らずに喋っていた俺だった。