慕情そして恋情…<つかつく> 12.
一方、つくしは、会社に着いて、地下駐車場から、司の執務室の有る最上階へは、直通エレベーターで向かった。
エレベーター前で、西田が待機していた。
つくしがエレベーターから出て来るなり、西田が声を掛けて来た。
「牧野さん、申し訳ございません。」
「いいえ、副社長は執務室ですか?」
「はい、執務室にいらっしゃいます。」
「承知しました。」
「私もご一緒します。」
「お願いします。」
社員の前なので、会話は淡々と流れていた。
つくしと西田が、執務室の前に来た。
【コンコン】…西田が扉をノックして、西田が司に声を掛けた。
「副社長、牧野さんが、お越しです。」
「入れ‼」
執務机の背に、腰を持たれ掛けた状態で、長い足を組み、腕を組みながら、つくしが司の執務室に入って来るのを、今か今かと待って居た。
司は、『冷静に、冷静に…。』と、心の中で唱えていたが、つくしが入って来ると、冷静ではいられなかった。
「牧野、何処に行ってたんだ?」
「そんな、怒らなくても…。
楓社長のお供をして来ました。」
「ババアのお供って…。
何処にだよ?」
「だから、お供です。」
司は、言葉では言い表せない程の恐怖心が、司の心を占拠していた。
「まさか、お前、ババアに言い包められて、見合いに言って来たんじゃねぇだろうな?」
「お見合いはしていません。」
「本当か?」
司はつくしと話しをしながら、つくしの顔色を見ていた。
「本当です‼」
「分かった。
それなら良い。」
司は、あから様に、“ほっ”とした態度をつくしに見せていた。
そんな時、つくしが西田に目配せをしていた。
実は、つくしと西田は、楓から、言われていたのだ。
「会長から、“何時まで、翼の事を司に隠して於くつもりだ‼”と、言われています。
機会を見て、司に公表しなさい。」と…。
それが今日だと感じたつくしは、西田に目配せをしていたのだった。
その様子を勘違いした司は、イライラ度がMAXに成り、寄り一層、声が大きくなり、罵声を浴びせる様に成っていた。
「西田、何、牧野と目配せをしてんだ‼
お前等、唯じゃあ、於かねぇぞ‼」
つくしは誤解を解く様に話しし出した。
「副社長、何を勘違い為さっているんですか?
西田さんに、私のプライベートの件を、副社長にお伝えして良いか、確認しただけで
す。
西田さんの了承が得れましたので、報告しますね。
私には、息子が居ます。
その事で、本日は楓社長にご足労、頂きました。」
司は、驚愕していた。
「はぁ~??
お前、結婚してたのか?」
「いいえ、独身です。」
「じゃあ、×が付いて居るのか?」
「いいえ、未婚の母です。」
「はぁ~??
ガキの年は幾つだ?」
「14歳の中学3年の息子です。」
司は、つくしの年から言うと有り得ねぇと、悟った。
「お前の年は、32歳だよな?
じゃあ、高校の時に生んだのか?」
「はい、そうです。」
「おい、“そうです。”って…⁉」
司は、考え込んでしまった。
つくしも西田も黙って、司を見詰めて居るだけだった。
司は、思った。
『“真面目な牧野が、好きでもねぇ男とそんな事が出来るとは思えねぇ…。”
と、いう事は、愛していた男のガキを生んだという事か?』
司は、頭を抱えてしまった。