出会ってしまった…<つかつく> 9.
<司side>
俺は、牧野を俺の執務室に呼び出した。
そして、牧野に、今回の事業提携に関する全てを、俺の口から説明した。
牧野は、驚愕していた。
「あの、老婦人が、その様な方だったとは…?
思いも寄りませんでした。」
「まあ、そんなもんだろ⁉」
俺は、牧野の顔色を窺いながら、話しを進めていた。
「先方からは、牧野を担当者に据え置かなければ、提携同意しねぇと言って来ている。
今回の事業提携は、ババアから受け継いでいる。
失敗は許されねぇ‼」
牧野は、首を捻りながら、確認して来た。
「あの~、『ババア』とは…?」
俺は、いつもの癖で、つい、言ってしまっていた。
「社長の事だ‼」
「………」
牧野は、驚愕して、応えられねぇ様子だった。
牧野は、“はっ”とした様に、我に返った様で、俺に訴えかけて来た。
「私には、まだ無理です。
何も、勉強出来て居ません。
荷が重過ぎます。」
「だから、俺が補佐に就くんだろ⁉
西田も、就いてる。
社長命令だ‼
ちょっとは、俺を信用しろよ‼」
「………」
牧野は、首を横に振るだけだった。
俺は、尚も、牧野に語り掛けた。
「牧野、お前は、グローバルな仕事をしてぇんだろ?
それなら、俺の傍に居た方が、手っ取り早ぇだろ?
ちまちましてるより、でっけぇ仕事を成し遂げた方が勉強に成るんじゃねぇのか?」
「………」
それでも、牧野は首を縦にはしねぇ…。
牧野は、首を横に振るだけだった。
「私は、仕事と言うのは、基本が大切だと思っています。
先ずは、底辺の基礎をしっかり身に付けてから、大きい仕事をも熟して行けたらと、
思っています。
行き成り、私の様な仕事の基礎を知らない底辺の人間が熟せる仕事では有りません。
寧ろ、経験を積まれた諸先輩方が成し得る仕事だと思います。
まだ、何も理解して居ない『ひよっこ』に任せられる仕事では有りません。
私では、荷が重過ぎます。」
俺は、脅しめいた言葉を、つい、牧野に言ってしまっていた。
「じゃあ、此の事業提携は結ばれる事は出来ねぇな‼
先方の意向を無視する形だと、事業提携は出来ねぇだろ⁉
うち(道明寺HD)としては、かなりの損失に成るな‼」
「………」
牧野は、焦っている様子だったのか?
何も答えられねぇのか?
牧野は、俺を凝視しているだけだった。
だから、俺は、牧野を諭し始めた。
「牧野、お前にその底辺の基礎とやらを、俺と西田とで、鍛え上げて遣る。
そして、お前をぜってぇ、グローバルな仕事が出来る人材に育成してみせる‼
俺と組んでみねぇか?
ぜってぇ、後悔はさせねぇからよ‼」
<つくしside>
私は、専務の力強い言葉に、頼ってみようと、何故か思ってしまった。
それが、専務と私の全ての始まりに成ろうとは、この時の私には思いも寄らなかった。
そして、専務と私の全てが始まっていた頃には、もう、私は後戻り出来ない所まで、全てが進んでしまっていた。
英徳大学に入学した頃の私には、思いも寄らない事だった。
私にとって、改めて、人生って、先は、如何成るのか分からないんだと、認識せざるを得ない状況だったのだ。
専務と私は、本当に、出会ってしまったのだ。
後々の私は、必然的に出会ってしまった様で、出会う為に私は、英徳大学に入学した様な気さえしてしまって居た。
専務と私のその後…。
有り得ないっつーの‼
<9.も、短めで、申し訳御座いません。>