忘れ欠けていた…<総優> 2.
尚も、更は、飛んでもない話しを続けた。
「実はね、優紀ちゃんが、娘の彩夏が通う幼稚園の先生をして居るの。
しかも、彩夏の担任の先生‼
吃驚ってもんじゃなかったわよ‼
幼稚園の入園式の時、優紀ちゃんと眼と眼が合って、一瞬、お互い、動けなかったも
の…⁉
私も優紀ちゃんと会うのは、高校を卒業して以来だったから、何か、不思議で…⁉
今は、『優紀先生』って、呼んでいるんだけど…。」
総二郎は、更の話しを聞いて、微動だにしなかった。
否、反応できない程、躊躇っていた。
更は、尚も話しを続けた。
「幼稚園内だからか…?
優紀ちゃんの無言の圧力と言うか…?
お互い知り合いって言うのは、“言わない様に…。”って、成ってるの…。
何か、寂しいんだけど…ね⤵。
仕方ないかもね。
先生と保護者だから…ね。」
「………」
総二郎は、何も言えなかった。
其れ処か、総二郎自身の口から出た言葉に、総二郎自身で驚愕して居たのだから…。
「何処の幼稚園だ?」
「えっ、ああ?
○○幼稚園」
「そう何だ⁉」
「二郎??
何、考えてるの?
優紀ちゃん、彼氏が居るって噂だよ。
しかも、『超絶イケメンで、背が高くて…。』って、噂で…。
どの先生も、羨ましがって居たよ。
だから、優紀ちゃんの彼氏はてっきり『二郎』だと思って居たんだよね…私。
かなり、優紀ちゃん、綺麗に成ってるし、絶対、彼が居ないと、ああいう風な表情は
出来ないと思ったもん。」
総二郎は、“優紀に彼氏が居ようが居まいが、そんな事は、関係ねぇだろ?”と、思って居た。
優紀への気持ちを思い出してしまった今の総二郎は、もう、気持ちを後に戻す事は出来ずに居た。
総二郎の『パンドラの箱』の蓋は、空いてしまったのだから…。
更は、如何も『寝た子を起こしてしまった』様だった。
其れからの総二郎は、『女たらし』を返上したかの如く、すっかり、夜遊びもしなく成り、真面目に仕事に向かっていた。
何がそうさせて居るのか、総二郎の両親で有る家元・家元夫人は、この状況に驚愕するばかりだった。
家元は、総二郎の変貌振りが、負に堕ちず、F2に確認して来た。
「総二郎が、真面目に仕事に取り組む様に成ったんだ。
普通なら、嬉しい事だが、今までの総二郎を考えると、如何も、負に堕ちず、何か、企
んでる様にしか思えんのだよ。
君達は、総二郎から、何か聞いてないかな?
正直に応えて欲しい。」
F3(海外に居る司は最もだが…。)は、ここ最近、総二郎と会ってないし、ましてや、今の総二郎がF3に告白するとは思えない。
その事は、家元にも、あきらから、話しして伝えた。
「ここ最近、総二郎とは、会ってないんです。
って、言う寄り、総二郎は、俺達と会う事を拒んで居る様なので…⤵。」
だが、そうは言っても、F2は、総二郎に確認して聞いて於かないと、家元も埒が明かないだろうと思って居た。
偶々、司が、出張の為、つくしと一緒に、日本に帰国して帰って来ていた事も有り、司にも連絡して、この件を話しして聞かせていた。
なので、F3は、総二郎を久々に呼び出した。
そして、家元が心配している事を、総二郎に伝えた。
先ずは、あきらが口火を切った。
「総二郎、お前の変貌振りを、家元は心配して居る様だぞ‼
何か、有ったんか?」
総二郎は、まだ、優紀に対する気持ちは、“誰にも言えねぇ…。”と、思っていた。
「ああ??
ねぇよ、別に変った事は…。」
司も参戦して、総二郎に問い掛けていた。
「総二郎、家元が、そんな風に心配するって、初めての事じゃねぇのか?
お前に何も無きゃあ、そんな風に、こいつ等には言ってこうねぇだろ?
何が、総二郎をそうさせてんだ?」
類は、総二郎の顔付きを見て、何と無く理解した。
だから、口に出して、話しし始めた。
確かめてもみたいとも思って居た。
「総二郎、好きな娘(こ)でも出来た?」
F2は、驚愕していた。
“あの、総二郎が恋をしたぁ~?”と、F2は思っていた。
「「はぁ~??」」
F3にとって、今の総二郎は、想像しがたい状況だった。
何処を見ているのか、愁いを含んだ表情の総二郎…。
好きな娘(こ)が出来たのなら想像に容易いが、F2は、“総二郎が…?”と、思わずにはいられない、此の状況だったのだ。