君だけ(を)…<総優> 5.
<総二郎side>
俺は、1年振りに優紀に会えると、気を焦らせながらも、慎重に愛車を運転していた。
そして、優紀の居る町に着いて、道行く人に、優紀の携帯画像を見せて、聞いて居た。
そんな時、1組の中年夫婦らしい人から、情報を得る事が出来た。
「ああ、その娘(こ)なら、この先の○○助産院で、働いているよ‼
気立ての良いお嬢さんだから、うちの息子にと、思っていたのに…。
子供が産まれたらしくてね?
結婚でもしてたんだろうね?」
俺は、不思議に思って居たが、取り敢えず、お礼を言って、○○助産院を目指した。
そして、休憩中らしい、助産院の扉を開けて、声を掛けた。
「すみません。
人を探しているんですが…?」
其処に、先生らしい白衣を着た老婦人が出て来た。
先生らしい白衣を着た老婦人は、俺に聞いて来た。
「何方をお探しで…?」
俺は、携帯画像を見せながら、確認してもらっていた。
「はい、此の娘(こ)、何ですが…?
『松岡優紀』と、言います。」
「如何だろうね…?
見た事無いけど…。」
「そうですか?」
俺は、がっかりした。
だが、玄関の直ぐ傍の部屋では、何故か、がやがやしていた。
小声では有るが、何か喋り声が聞こえていた。
<優紀side>
本来は、私が、玄関に出ようとしていたのだが…。
総二郎さんの顔が見えた事で、私は、後退りしていた。
その様子を見ていた先生は、私の代わりに玄関に向かって居た。
そして、私は、其の様子を、玄関の直ぐ傍の部屋の陰からじーっと、見ていた。
「ねぇ、優紀ちゃん。
さっき、あの色男さん。
優紀ちゃんの名前、言ってなかった?」
「良く似た同姓同名は、有るんじゃないでしょうか?
すみません。
私、奥の部屋に行ってますね。
『優』の様子、見て来ます‼」
「ちょっと、優紀ちゃん…‼」
看護師さんの声が、最大に大きかったのは、気に成ったが…。
私は、奥の部屋に逃げ込んだ。
<総二郎side>
俺は、老婦人の先生に確認した。
「あの、今、『優紀』と、叫ばれて居た様に思ったんですが…?
優紀は、此処に居るんですよね?」
老婦人の先生は、諦めた様に俺に言って来た。
「居るよ‼
でも、あんたには、優紀は、返せないね?」
「何故でしょうか?」
「あんたの母親は、優紀に、あんたと別れる為の手切れ金を渡したんだよ‼
そのお金も、優紀は、返すつもりで、一銭も使わず、手元に保管してんだよ‼
しかも、あんたの母親は、優紀の両親に、その事を了承させている。
優紀はね、(子供を身籠って居ると分かって居ながら)身を投げようとして居たんだ
よ。
岸壁に居た所を、わたしゃが、保護したんだよ。
そんな、母親の居るあんたに、優紀を返すつもりは無いね。」
俺は、母親の遣った事は、取り敢えず、後回しにして、さっき、道で聞いた事を確認した。
「先程、此処に来る前に、優紀には、子供が居ると聞きました。
その子を、何時(いつ)、優紀は、産んだんでしょうか?」
「そんな事を聞いて、如何すんだい?」
多分、俺の子だよな?
そう何だろ、優紀…?
「俺の子だと思うからです。
日数的に、俺以外の子を産む事は出来ないからですよ‼」
俺は、老婦人の先生の顔をじーっと、見続けた。
根負けしたで在ろう先生が、俺に言ってくれた。
「産まれてまだ、数ヶ月だよ‼」
やっぱりそうだ‼
俺の子で間違いねぇ‼
なら、話しは、早ぇ。
俺は、此の先生に宣言した。
「俺は、母親を退治して、必ず、優紀と俺の子供を迎えに来ます。
其れまで、優紀と俺の子供を預かってもらっても良かったですか?」
「分かった。
必ず、母親を退治してお出で‼」
「はい、宜しくお願いします。」
俺は、滅多に下げる事のねぇ頭を…。
自ら、頭を下げて居た事に、俺自身が、俺自身で、驚愕していた。