君だけ(を)…<総優> 7.
<総二郎side>
親父に呼び出されて、俺は、西門邸に居た。
親父が、俺に内緒で、優紀に会いに行って来たらしい。
「孫に会わせてもらいたくて…な。
だが、会わせてもらえなかったんだ。
強烈だな?
優紀さんが世話に成って居る先生と言う方は…。」
「まあ、そうだな?
けど、俺に内緒で、何、優紀に会いに言ってんだよ?
俺でも、まだ、会えてねぇのに…。」
「優紀さんに会いに行ったんじゃない⁉
私の孫に会いに行ったんだ。」
「どっちでも良いよ。
家元夫人は、如何言ってんだ?」
「お袋って、言っては遣れねぇか?」
「それは、無理だろ?
如何考えても…。」
「今のままなら、そうだな。
あれからも、何も、言わないしな?」
「俺は、もう、我慢出来ねぇ‼
優紀と俺の子供を迎えに行くからな‼」
「総二郎、まあ、そう、慌てるな‼」
其処に、母親が、親父と俺が話しをして居る茶室に入って来た。
「総二郎、優紀さんは、何と、仰ってるの?」
「何も…。
優紀に会えてねぇから…よ。」
母親は、何が、言いたいんだか…⁉
さっぱり、分からねぇ…。
其処に、母親が言って来た。
「優紀さんは、私(わたくし)を許してくれるかしら…⁉
私(わたくし)の孫に会わせてもらえるかしら?」
俺は、“良くもまあ、しゃあしゃあと、そんな事が言えるな?”と、思わずには、居られなかった。
「如何だろうな?
優紀が世話に成って居る先生は、強烈の人だから…な。
会わせてもらえねぇかも…な?」
親父は、この際だと言わんばかりに、母親に言って除けた。
「西門家の孫に、戸籍が無いと言うのは、如何(いかが)なもんだろうか?」
母親は、驚愕顔に成って居た。
其処に、俺は、母親の顔を見ながら、言って除けた。
「家元夫人が、そうした事だろ?
優紀の事だから、子供の戸籍を優紀に入れれば、家元夫人にバレるとでも、思ったん
じゃねぇの?
家元夫人が、望んだ事だろ?」
「何て事を仰るの?
此の私(わたくし)が、私(わたくし)の孫が不幸に成る様な事を考えるとでも…?」
「じゃ無きゃあな…。
何故、手切れ金を優紀に渡してんだよ?」
「それは…?」
母親は、言い難そうに、俺の顔を見た。
「悔しかったのよ‼
総二郎は、優紀さんに捕られて…。
家元は、女性に捕られて…。
祥一朗は、医者に成ると、家を出て…。
巧三は、私(わたくし)に靡かない。」
母親は、親父の顔を見た。
「せめて、総二郎だけでも、『次期家元』という、束縛を以てしても、私(わたくし)の
傍に置いて於きたかったのよ。」
「はぁ~??」
俺は、驚愕だった。
って、事は、少なからずも、親父の責任も有ると言う事だろう?
俺は、親父の顔色を窺いながら、言って除けた。
「俺は、優紀と俺の子供を迎えに行く。
了承が無くてもな…。」
「そうして、差し上げなさい。」
「はぁ~??
今更…かよ?」
「『子は鎹(かすがい)』って言うでしょ?
でもね、『孫も鎹(かすがい)』なのよ。
だからね、総二郎は、優紀さんに差し上げるわ‼」
「はぁ~??」
俺は、物じゃねぇ…‼
一人の人格者だって言うんだよ‼
まあ、けどよ。
言って於かねぇとな。
「俺と優紀の子供が、あんたの思い通りに成ると思うなよ?
子供は、俺と優紀の子供だ‼
もし、優紀をまた、苦しめる様な事が有れば、俺は、何時でも西門家を捨てる‼
良いな?」
「………」
母親は、何も言わなかった。
親父からは、“それ以上言うな?”と、言わんばかりに、俺は、親父から、首を横に振られていた。
だから、それ以上、俺は、言わずに於いて遣った。
そして、俺は、優紀が、世話に成って居る先生に連絡して、2日後に迎えに行く事を告げたのだった。
俺が、迎えに行く日を2日後にした理由は…。
本来なら、その日にでも迎えに行きたかった。
しかし、優紀も、こっち(西門邸)に来る為の準備期間も必要だろうが…。
こっち(西門邸)も、子供の受け入れ態勢も、整える為に必要な時間だった。
だが、俺は、会いに行ける…。
否、迎えに行ける事に気持ちは馳せていた。