君だけ(を)…<総優> 10.
<総二郎side>
運転手から、連絡が入って居たので有ろう。
親父と母親が、(西門)邸の玄関に出て、俺等が到着するのを、今か今かと待って居たそうだ。
母親は、リムジンが、(西門)邸に着くなり、運転手寄り早く、リムジンの扉を母親自ら開け、車内に入って来て、優一郎をチャイルドシートから外して、優一郎を抱いて下りて行った。
其の素早さに、優紀だけでなく、俺も、『空いた口が塞がらねぇ(ない)』状態に成って居た。
で、母親は、優紀が、リムジンから下りて来る事を玄関先で待って居た。
その姿に、俺は、“何故、もっと前に、こういう光景に成らなかったのか?”と、悔やまれて成らなかった。
優紀が玄関に辿り着くと、母親は、優紀を急かす様に、一緒に来る様に、優紀に言って居た。
「優紀さん、此方のお部屋に入ってらして…‼」
で、優紀が部屋に入った途端、驚愕で動けねぇ様子だった。
そりゃあ、当然だろうな。
俺でも、母親の考えに就いて行けてねぇんだから…。
「あの~、家元夫人…‼
此れは…?」
「あら、この子の物よ‼
あっ、そうそう、この子のお名前は…?」
「『優一郎』と、申します。
皆さんからは、『優』と、呼んで頂き、可愛がって頂きました。」
「そう、良いお名前ね。」
「優一郎、お祖母様よ。
宜しくね‼
これ、全て、優一郎の為に揃えたの⁉
優紀さん、使って下さるかしら…?」
「勿論です。
有難うございます。」
母親は、涙を流し出した。
嗚咽を漏らしながら…。
優一郎を抱き締め乍ら…。
優紀に詫びを入れていた。
「優紀さん、今までの私(わたくし)を許して下さらない…?」
「あの~、私は、何も、謝って頂かなくても、私を受け入れて下さっただけで、満足で
す。
有難うございます。」
「優紀さん…?」
そして、優紀は、自分自身のカバンから、或るモノを取り出して居た。
「其れと、此方は、お返しします。」
「此れは…?
此れは、優紀さんが受け取って頂戴⁉
私(わたくし)の気持ちが済まないわ。」
優紀は、母親の顔を見詰めながら、言って除けて居た。
「では、ご提案がございます。
私と優一郎を救って下さった助産院の再建の為に、使って下さる様、助産院の先生にお
渡し下さいませんでしょうか?」
「そうね、それが一番良いかも…ね?」
「はい、ご配慮に感謝します。」
優紀は、ニコっと、笑って、母親に向き合っていた。
こういう所は、俺は、優紀を尊敬するよ‼
俺には、真似出来ねぇな。
其れからの母親は、改心したらしく、その姿を見て、俺等家族は、西門邸に戻った。
そして、直ぐ様…。
俺は優一郎とDNA鑑定を済まし、『99.9%親子関係』と、認定を受けた。
そして、俺は、優一郎を認知し、優紀と入籍した。
そして、親父とお袋は、優紀と優一郎が世話に成った助産院に出向いたみてぇで…。
優紀の言付けを伝えて、先生にお金を受け取って貰ったそうだ。
また、親父から、優一郎を認知した事、俺と優紀は入籍した事を、先生に報告したとの事だった。
お袋は、先生寄り、小言を言われたのは言うまでも無かった。
帰ってから、優紀に、悲壮感漂う様な状態で、『コト』の話しを言って居たそうだ。
其の内容は、お袋が、一方的に、“悪い。”と、言わんが如く…。
お袋は、先生から、罵倒されたそうだった。
俺は、お袋には、“そう言う人が居ても良いんじゃねぇの⁉”と、思った事は、内緒だけどな。
そして、俺は、気付いた。
俺と優紀と優一郎とで、マンションから(西門)邸に戻ってから、俺は、家元夫人の事を、『お袋』呼びをしていた俺自身が居た。
余りに自然過ぎて、言ってる本人でも、中々、気付かなかったが…。
周りも、まだ気付いて居ねぇみてぇだった。
言われている当のお袋も…。
まあ、其れで良いのかもな。
そして、その後…。
俺等は、心配して居たで在ろう T3に、優紀を会わせる為、優一郎共々、F4&T4会に参加した。
俺にそっくりな優一郎を、T3は、“きゃー、きゃー。”言いながら、可愛がってくれていた。
牧野に至っては、司共々、俺を弄って来る事は、忘れて居ねぇ様子だった。
“お前等(司&つくし)も、長い春に終止符を打って、早く結婚しろよ‼”と、言いたくなったのは、言うまでもねぇ。
まあ、直接は、言わねぇけどな…。
こうして、俺等は、今度は、夫婦として、一緒に居られる事を…。
俺等に関わる全ての人に感謝したのだった。
fin