君だけ(を)…<総優> 8.
<優紀side>
私は、先生から、私と子供共々、迎えに来てくれると、総二郎さんから、連絡が入ったと、教えてもらった。
「優紀…。
明後日、優紀の旦那が、迎えに来てくれるそうだよ。
帰る準備をしな‼」
私は、不安だった。
私の顔も、不安な顔付きに成っても居たのだろう?
先生は、私の不安を拭い去る様に言って下さった。
「何か有ったら、いつでも、此処に駆け込んでくれば良い‼
その為に、わたしゃ、長生きしないとね。」
「………、先生っ‼」
私は、涙が止まらなかった。
ううん、止める事が出来ずに居た。
そして、本当に、総二郎さんは、私と子供を迎えに来てくれた。
<総二郎side>
俺は、今回は、リムジンで、迎えに行った。
俺の子供を見詰めて居てぇから…。
否、そうじゃねぇな。
優紀を離せねぇ事は間違いねぇからだな。
俺が、リムジンに乗り込もうとした時、気付いた。
ベビーシートも、ちゃっかり、母親は、用意していた。
それに、邸の客間は、ベビー用品で、所狭しと溢れていた。
それに、優紀の服まで…。
優紀の好みも有るだろうに…。
俺は、一応、優紀が歓迎されて居た事に、ほっとしていた。
其の理由を、使用人頭のかよから聞いた。
親父が、外に出掛けなく成ったらしい。
それに伴い、母親が、優しく成ったらしい。
俺は、未だに、マンション住まいだったから…。
(西門)邸の様子は、一切、知らずに居た。
何か、想像付かねぇ…けどな。
親父と母親が仲良くして居る所は…⁉
驚愕でしかねぇだろ?
まあ、それでも、家元夫人が、優紀に優しくしてくれるんだったら、何も言わねぇで居ようと思って居た。
そして、そうこうして居る間に、リムジンは、優紀の住んで居る町に着いて居た。
俺は、1年2ヶ月振りの優紀に、戸惑いは隠せねぇで居た。
優紀は、第一声、俺に何て言うだろうか?
不安を胸に、俺は、優紀に会いに、家の中に入って行った。
<優紀side>
総二郎さんが、迎えに来てくれた時…。
先生と一緒に、私と『優』の部屋に入って来た…。
総二郎さんの顔が、不安めいて居る事に気付いた。
“総二郎さんも私と子供に会う事が、不安だったんだ。”と、分かり、不謹慎にも、ほっとしている私自身に私は、驚愕していた。
そう思って居る時、総二郎さんが、私に声を掛けてくれた。
「優紀、済まなかった。
お前を苦しめて…。」
「ううん、苦しんでないですよ。
先生と助産師さんと看護師さんが、傍に居て下さったから…。
安心だったし、不安は無かったですもの。
その道のプロの方々が、傍に居てくれていましたから…。」
<総二郎side>
俺は、笑おうと思っても、涙が出て来て止まらなかった。
俺は、自然と、優紀を引き寄せて、抱き締めていた。
そして、俺の子供の傍…に。
俺は、ベビーベッドの傍に、足を向けていた。
良く眠っていた。
「優紀、俺の子供の名前は…?」
「『優一郎』と、言います。
皆さんからは、『優』と、呼んで頂いて居ました。」
「そうか。
可愛がってもらって居たんだな。」
「ええ、とっても…‼」
優紀は、笑顔で応えてくれた。
そして、俺は、優紀と優一郎の荷物を持ち、優紀は、優一郎を抱いて、部屋を出た。
そして、俺は、先生とその他のスタッフの皆さんに挨拶をした。
「色々、嫁と子供がお世話に成りました。」
俺は、頭を下げて、お礼を言って居た。
その俺の姿を見た優紀は、絶句していた。
俺は、そんな優紀に声を掛けた。
「何だよ?
俺が頭を下げるのが、そんなに不思議か?」
「いいえ、そんな事は無いです。
唯、初めて見たから…。」
優紀も、最後のお礼の挨拶を交わしていた。
「先生、皆さん、有難う御座いました。
先生と皆さんのお陰で、私と優は、命拾いをしました。
これからは、命を大切にして行きます。」
先生からも、話しが為された。
俺には、手厳しかったが…。
「そうだよ、優紀。
命を大切にしな‼
其れと、さっきも言ったけど…。
何かあったら、何時でも、此処に駆け込んでお出で。
助けて上げるから…‼
その、図体だけは立派な旦那も、良く躾しなよ、優紀‼」
もう、俺は、この先生には、一生、頭は上がりそうにねぇな‼