for the second time ~2度目に~…<つかつく> 5.
其処に、つくしが、珈琲を淹れて、会議室に入って来た。
司にとっては、久し振りのつくしが淹れた珈琲だった。
止ん事無い出来事がつくしの身に起き、椿に寄って助けられた高校生の頃のつくしは、道明寺邸にて、メイドの仕事(バイト)をして居た。
そして、つくしは、タマに寄って、道明寺邸での一連の仕事が出来る様に、鍛え上げられていた。
その一つが、司が、好む珈琲の淹れ方だった。
司は思って居た。
“やっぱり、つくしだな‼
俺好みの珈琲の淹れ方が、身に付いてやがる。
俺の記憶が無くても、やっぱり、つくしは、つくしだった。
出来るだけ、早く俺の傍に置きてぇ‼”と…。
で、司は、つくしに一言、言って除けて居た。
「久し振りだ‼
こんな美味ぇ珈琲を飲んだのは…。」
「そう言って下さると、淹れ甲斐が在ります。
有難う御座います。」
「ああ。」
つくしは、褒められて、嬉しそうに、ドアを閉めて、その場を後にしていた。
司は、つくしの嬉しそうな顔を久し振りに見れて、顔が緩んで仕方なかった。
西田は、呆れ返って居たが…。
司は…。
“やっぱり、あいつ(つくし)が、良い‼”と、思っていた。
西田が端から見て居ても、今の司は、柔らかく成っていた。
NYの頃の様に、他人(ひと)を寄せ付け様としない、オーラ―は何処にも無かった。
西田は、思って居た。
“司様は、牧野様お一人が居るか? or 居ないか? だけで…。
こんなに、お人が変わってしまうのか?”と…。
そして、大河原社長との打ち合わせも、滞りなく、終了していた司だった。
そして、お見送りの時点に成って、つくしが、また、司の前に現れた。
そして、司は、つくしに声を掛けて、その場を後にして居た。
「今日の珈琲は美味かった。
また、美味ぇ珈琲を頼んだ。」
本来の司は、『は』ではなく、『も』と、言いたかった。
だが、今のつくしは、司とは、『初対面』…。
其の事が分かって居て、司は、『も』とは、言えなかったのだ。
そして、司が、ビルを出る際…。
つくしは、エレベーターホールだったという事も在ったのか?
ニコっとしただけで、お辞儀をし乍ら、返答していたつくしだった。
「賜わりました。」
其れでも、司は、嬉しかった。
其れからの司は、つくしが、淹れてくれた珈琲が飲みたくて…。
打ち合わせの際は、つくしをお世話掛かりとして、司に就けてくれる様に、大河原社長に頼んで於いた。
しかし、大河原社長は、“今回だけ…。”と、いう約束で、今回のつくしの配置を滋に断念させて居た為…。
板挟み状態の大河原社長が居た事も、また、事実だった。
大河原社長は、悩み処だったという事は、間違い無かった。
大河原社長も、今後、全世界に、『大河原グループ 此処に在り』と、指し示す為には、石油・鉱山・鉱物だけでは、難しい事は分かり切っていた。
更に、大河原社長も…。
“今までの様に、東南アジア諸国・アフリカ大陸諸国だけの取引では、難しい時代が遣っ
て来る。”と、言う事は、実感していた。
成らば、道明寺HDの力を借りる事も、また、必要と思われた。
なので、此処は、舵取りが必要な時期で在る事も心得ていた大河原社長だった。
勿論、一方では…。
大河原社長にとって、娘の滋は可愛い。
言うまでも無いが、そんな大河原社長は、娘の滋を溺愛していた。
また、滋に至っては、つくしが滋の傍に居る事で、滋が落ち着いて、仕事が出来る様に成って来ていた。
其のお陰で、大河原グループの株価も安泰の今…。
滋からつくしを取り上げる事も、大河原グループにとっても、大打撃に成る。
“滋にも、つくしの様に、滋を支えてくれる人物が居れば…。”と、思わないでもない大河原社長だった。
なので、その事も含めて、道明寺HD 社長で在る 楓に、相談しようとして居た大河原社長だった。
【道明寺HD 社長に相談した内容の詳細は…?】
*今は、つくしを道明寺HDに渡す訳には行かない。
*其れは、勿論、つくしに記憶が無いという事も、また、然りだったが…。
今の滋にとっても、また、然りだった。
*成らば…。
先ずは、司が、つくしと親しく成り、お互いが必要と思う様に成るまで…。
つくしは、大河原グループの社員として、滋を支える。
*“滋は…?”と、言うと…。
つくしの想いが、司に向くまでの間に、つくしの代わりに滋を支えてくれる逸材を探
して行く。
と、言うモノだった。
実は、そんな頃…時を同じくして。
西田から、楓の下に、大河原グループでの、大河原社長と司の打ち合わせの時の状況の報告が入って来た。
楓は、司から、また、つくしを取り上げてしまえば…。
司が、壊れてしまうと、考えて居た。
だからだろうか?
大河原社長の相談にも、楓は、直ぐに、返事出来ずに居たのだった。