for the second time ~2度目に~…<つかつく> 12.
司は、つくしの事が、諦め切れず、大河原社長に頼む事にして居た。
大河原社長は、此れ程までに、司が、つくしを求めて居るとは、思っても視なかった。
だという事は、高校生の頃の司が、滋とお見合いをした時…。
滋が、幾ら、司を好きに成っても、当の司は、滋を求めなかった事の意味が、漸く分かった様な気がして居た大河原社長だった。
“だから、滋は、友人として、記憶を無くしたつくし君に、癒しを求めたのかも知れな
い。”と、解釈していた大河原社長だった。
だから、“記憶を無くした今のつくし君は、滋のその気持ちに、答えてくれたのだろ
う。”とも思えて居た大河原社長だった。
大河原社長は、滋を説得するつもりで居た。
そう何時までも、つくしを滋に繫ぎ止めて居られる訳でも無い。
其れは、つくしにとっても、良くは無いと思って居た大河原社長だった事は、言うまでも無い。
漸く、大河原社長は、決断していた。
“滋を受け入れてくれる相手を、そろそろ、滋に見付けて遣る時期が来たのだろ
う。”と…大河原社長は、悟ったのだった。
そして、大河原社長は、滋を大河原社長の執務室に呼び出した。
滋は、この際だから…。
父親に話しするつもりで居た。
“つくしを司には渡さない‼”と…。
滋が大河原社長の執務室に入って来た時の滋の異様なまでのオーラを感じ取った大河原社長は、大河原社長の方から、口火を切って居た。
「滋…?
現在のつくし君には、道明寺支社長の記憶が無い。
だから、現在のつくし君も、滋を支える事には、了承して居るだろう。
だが、つくし君に記憶が戻ったなら…。
やはり、つくし君は、道明寺支社長に向かう事は言うまでも無いだろう。
滋が、道明寺支社長とつくし君の間を引き裂く事は出来ない。
じゃあ、今から、少しずつでも、その時の為に…。
滋の心の準備をして行くべきじゃないのか?」
「有り得ない‼」
滋は、父親に、啖呵を切っていた。
しかも、滋は、父親の言葉に、武者震いをして居た。
“何故、パパは、自分(滋)自身の気持ちを理解してくれないのだろう?”と…。
滋は、自分(滋)自身の父親を呪いたく成っていた。
何故なら、滋は、幼少期の頃から、滋パパ(大河原社長)は、一人娘の滋を溺愛して居た事も在り、滋の言い成りだった。
其れが、此処に来て、滋パパ(大河原社長)は、滋の気持ちを逆撫でし様として居た。
滋は、滋パパ(大河原社長)の気持ちを到底、受け入れられる筈等無かった。
だが、滋の気持ちも、分かり切っている滋パパ(大河原社長)だった事は、言うまでも無いのだ。
結局は、滋パパ(大河原社長)と滋の間には、更に、亀裂が入ったに過ぎ無かった。
所謂、物別れに終わっていたのだった。
そんな時…。
大河原社長は、或る企業との打ち合わせで、其の企業との会議に出席していた。
その時に、見掛けたのだ。
つくしの弟を…。
つくしと同じ様に笑う進を…。
名刺を進から渡された時に…。
大河原社長から、進に声を掛けて居た。
「牧野君は…?
君は、もしかして、弊社(大河原グループ)の牧野つくし君の弟かね?」
「はい。
姉がお世話に成っております。」
「嫌々、うちの滋が世話に成って居るんだよ。
うちの滋は、君のお姉さんに、支えられて居るんだよ。」
「そう言って頂いて、私も、感謝しか在りません。」
「牧野君と、こうして会った事も何かの縁だろう。
此れからは、宜しく頼むよ‼」
「はい。
此方こそ、姉共々、宜しくお願い致します。」
その時は、そう言って、別れたモノの…。
進と会ってからの大河原社長には、進が、何か、大河原グループにとって、救世主の様に感じて居た。
だからだろうか?
大河原社長は、つくしに声を掛けて、進の情報を訊き出そうとして居た。
「つくし君…。
先日、つくし君の弟の進君に会ったよ。」
「はい。
弟から、聞いておりました。」
「そうか?
如何だろうか?
弟の進君に、うち(大河原グループ)に、転職してもらうのは…?」
「………」
つくしは、何も、言えなかった。
つくしが、大河原社長に言えた言葉は…。
「此の件に関しましては、弟の会社の件も在ると思いますので…。
取り敢えず、弟に話しして視るという事で宜しかったでしょうか?」
「其れで、構わない。
もし、可能なら、滋に進君を就けようと考えて居る。
つくし君の弟なら、滋を支えてくれる様に思うんだが…。
如何だろうか?」
「其れは、私では、何とも申せません。
弟が、お役に立てれば、宜しいのですが…。」
「まあ、取り敢えず、弟の進君に話しを通して於いてくれないかい‼」
「賜わりました。」
つくしは、進に話しして視る事にした。
だが、進も、今の企業には、誇りを持って勤めて居る筈…。
そう簡単に、“転職する‼”と、いう訳等無いと、つくしは、考えて居た。
だが、つくしは、一応、大河原社長の話しの件を、進に伝えて居た。
だが、進から、言われた言葉は、つくしには、納得するものだった。
“当然だろう‼”と…。
「行き成り過ぎて、意味が分からない。
たった一回だけ…。
打ち合わせの会議の時に、大河原社長にお会いしただけ…何だけどなぁ。
何で、そう言う話しに成るの?」
「だよね…?
私も、大河原社長に頼まれただけだから、如何言う意図を以って…なのか?
分からないんだけど…。
取り敢えず、考えて於いてよ‼」
「まあ、分かった。
考えて視るよ‼」
つくしは、進から、了承とは言えないが…。
“考える。”と、言われた事で、一応のお役目は出来たと思って居た。
また、此の事は、つくしから大河原社長に伝えられた。
だが、つくしは、大河原社長から、また、話しを付け加えられていた。
「此の話しは、滋には、他言無用で、頼んだよ。」
「賜わりました。」
つくしは、何故、滋には、他言無用なのか?
大河原社長の意図は、分からなかった。
だが、秘書たる者…。
上司からの言付けは、絶対なのだ。
言える筈等無かった。
だから、此の件は、未だ、滋は、知らない話しだった。