おとり捜査…<つかつく> 13.
<一部の文面に、不快に思われる言葉が入って居るやも知れません。
お詫びします。>
つくしは、非番にも関わらず、先輩から呼び出され、犯人を追っていた。
高校時代、高校の体育教師から、陸上部に誘われる程、足の速いつくしだった。
下手すれば、男性より、つくしは、早く走る事が出来る。
高校生の頃のつくしは、短距離ランナーだった。
だが、警察に入庁してからは、鍛え上げられた脚力に付け加え、腕力にも磨きが掛かり、此れまでにも、持久戦に負ける事無く、犯人逮捕に貢献して来た。
つくしの其の油断が、つくしを油断させた要因だったかも知れない。
一早く、現場に辿り着いて居たつくしだった。
そして、つくしが、犯人を追い詰めた時に、犯人が持って居たのは、ナイフだった。
所謂、『(ポケットに忍ばせられる様な)小型のサバイバルナイフ』だった。
つくしが、持って居たのは、『警棒』のみ。
つくしは、直行した事が、『運の尽き』だった。
所謂、犯人に向かうには、警察官としては、『マッパ』の状態と何ら変わりは無かった。
まだ、『警棒』だけでも、忍ばせて於いて良かった様なモノだった。
だが、相手は、男性…。
幾ら、合気道・剣道の有段者のつくしでも、警察官としては、一般の女性よりも、脚力・腕力が有ると言うだけで…。
いざと成れば、女性のつくしでは、歯が立たない事は、言うまでも無い。
だが、つくしは、何処か?
過信して居たのだろう‼
つくしの其の油断が、今回の事件を引き起こしたと言えた。
後から、到着した先輩刑事に寄って、犯人は、取り押さえられた。
だが、つくしは、刺されてしまった事には違い無かった。
意識が遠退いて行く中…。
つくしは、“此のまま、最後に成るだろう‼”と、思わずには居られなかった。
そして、つくしは、“道明寺さんに、最後に、もう一度だけ会って、謝りたかった‼”と、思いながら、意識を手放していた。
そして、手術が成功したつくしは、丸一日経って、漸く、意識を回復していた。
意識の回復するまでのつくしは、ICUに移されて居た。
ICUのつくしの寝ているベッドの脇には、つくしの両親が居た。
ICUの為、家族のみしか、入室は、許されなかった。
つくしの両親と弟の進は、親族の法事の為…。
其の日は、牧野家の地元に、一泊の予定で帰省して居た。
つくしの両親と弟の進は、優紀から連絡をもらって、慌てて東京に戻って帰って来ていたが…。
病院に到着した頃には、採血は、終了していた。
そして、看護師から、手術の事を聞かされていたつくしの両親だった。
「婚約者の方が、採血して下さったので、何とか、間に合いました。」
「そうでしたか?」
つくしの両親は、看護師にそうは言ったモノの、“つくしに何時の間に『婚約者』が居たのだろう?”と、頭を捻らなくてはいけない状態だった事は、言うまでも無い。
だが、つくしの両親は、つくしの覚醒後に、『婚約者』の事について、訊き出そうと思っていた。
そして、検査も終了し、つくしは、一般病棟に移される事に成った。
だが、何故か?
個室だった。
しかも、ホテル並みの…『スイート』と、見間違う程の個室だった。
つくしは、思った。
“幾ら、警察病院でも、此の部屋は、可笑しい。
誰が、用意してくれたのだろうか?”と…。
そう思って居た時に、つくしは、つくしの両親から、『婚約者』の事について、訊かれていた。
「つくし…。
何時の間に、『婚約者』が居たの?」
「はぁ~??」
思わず、つくしは、刺されている身体だという事を忘れて、叫んでしまった。
で、続けて、つくしは、つくしの両親に、言って除けていた。
「そんな方が、居る訳ないでしょ?
警察一筋だっつーの‼」
つくしママは、つくしの返答が、当然過ぎて、納得するモノだった。
所謂、つくしママは、つくしから、恋人と呼べる男性を、現在に至るまで、紹介された事が無かったのだ。
だから、つくしの言葉は、つくしママにとっても、納得出来るモノだったのだ。
だが、看護師の言葉には、つくしママにとって、頷けるモノでは無かった。
「よね?
でも、看護師さんがね…。
“『婚約者』の方が、採血して下さったから、間に合った‼”って、仰ってね。
じゃあ、誰の事を仰って居たのかしら…?」
つくしママが、そう言って居た所に司が現れて、病室に司が入って来た。
SPから、つくしが、“一般病棟に移れる事に成った。”と、司の下に、連絡が来たからだった。
そして、司は、つくしの両親に挨拶したのだった。
「お初にお目に掛かります。
道明寺司と、申します。
採血したのは、俺です。」
「「「………」」」
つくしだけじゃ無く、つくしの両親も、言葉が無かった。
だが、つくしママの心の中では、思っていた。
“という事は、此の方が、つくしの『婚約者』と言う事…?”と…。
つくしは、司の言葉が、驚愕過ぎて、言葉が出なかったのだ。
唯、つくしは、司にお礼だけは、言おうと思っていた。
「道明寺さん、此の度は、有難う御座いました。」
「おお。」
司は、つくしの素直な返答に嬉しくて、照れていた。
何時(いつ)の間に現れたのか?
其の様子を背後から見ていた総二郎とあきら、そして、優紀と桜子は、そんな様子の司に驚愕するしかなかった。
余りの司の変貌振りに、声にも出せない面々だったのだ。
だが、つくしは、“何故、司が、総二郎とあきらと一緒に居るのか?”と、言う事…と。
また、“何故、司は、此処に居るのか?”と、言う事が、不思議で仕方なかったのだった。