おとり捜査…<つかつく> 15.
其の後、つくしに退院の目途が付いた。
なので、司は、動き出した。
楓が日本に帰国して帰って来たので…。
司が動き出した理由は、つくしが、秘書では無く警察官だったと言う事を、楓が、司に隠していた訳を訊く為だった。
実は、楓が日本に帰国して帰って来た理由は、警視総監から、つくしの事件の報告を受けていたからだった。
だから、楓は、仕事の目途が付き、出張と称して、日本に帰国して帰って来たのだ。
楓は、司から、此の件に関して、訊かれる事は、承知しての事だった。
で、司は、楓に怒鳴る様に、訊いて居た。
「如何いうつもりだよ⁉」
楓も、態と、訊き直していた。
楓は、開き直っての事だった。
「何の事…ですか?」
だから、上手の楓に、刃向かう為に、司も負ける気はしなかった。
「今更かよ⁉
つくしの事だよ?」
「其れが、如何しましたか?」
「はぁ~??
何、開き直ってんだよ⁉」
司は、“いい加減にしろ‼”と、言いたかったが…。
其の言葉は、喉の奥にしまって置いた。
「あら、私(わたくし)のお陰で、司は、つくしさんと知り合えたんじゃ無くて…?」
「………」
“確かに、そうだ‼”と、思うしかない司は、直ぐには、言い返す言葉が出て来なかった。
だが、“成らば…。”と、言う様に、司は、楓に、つくしの今後の件の提案をし始めた。
「つくしには、警察を辞めさせる。
つくしが、警察を辞めた後は、俺の秘書に据え置く。
そのつもりで居てくれ‼」
だが、楓は、司に筋を通す事を教え様とした。
「其の件に関しては、会長には伝えたの?」
司は、“何故、会長に、つくしの件を報告する必要が有る?”と、思い乍らも、楓に返答していた。
「否、まだだ‼」
だから、楓は、司の不服そうな返答の仕方に、筋を通す様に話しし始めた。
「つくしさんは、如何言う理由で在っても、一応は、会長の秘書だったのよ。
会長が、つくしさんを秘書として、育てて下さったのよ‼
貴方の方から、きちんと、会長に了承を得なさい‼
会長は、つくしさんを秘書として、育てて下さった方でも在るんですから…ね。
宜しい事…?
つくしさんの話しは、其れからよ。」
「………」
そう言われてしまった司は、楓に言い返す事も出来ずに居た。
だから、会長には、丁重に、了承を得る事にした司だった。
そして、プロジェクトの打ち合わせの際…。
打ち合わせ終了後、会長に、つくしの件を切り出して居た司だった。
「会長…。
提案が有ります。」
「ほう、私に提案か?
一応、話しを訊こうか?」
司は、ムカ付いたが、丁重に、話しする様に、自分自身に言い聞かせていた。
「牧野つくしの件ですが…?
此の度の事件の事で、牧野つくしには、警察を辞めさせる事にしました。
其の暁には、牧野つくしを私の秘書に就けたいと思います。
了承願います。」
会長は、思案する振りをして居た。
何故なら、事前に、楓から、詳細を確認していたからだった。
だから、態と、司に言って除けていた。
「牧野君は、元々、儂が、育てた秘書だったんじゃがな…。
そう簡単に、司君に持って行かれたのでは堪らんだろ?
優秀な『儂の孫』じゃからの。」
「其の事は、十分、理解しています。
ですが、私は、牧野つくしを愛しています。
結婚したいとも思って居ます。
だから、今から、私の傍で、一緒に仕事を覚えさせ様と思って居ます。
会長が、私を気に食わないという事も理解しています。
また、会長が、牧野つくしに対して、会長の孫の様に接していらっしゃった事も…。
其の様子を拝見して居りましたので、承知致しております。
ですが…。
私も、牧野つくしの件に関しては、一歩も引き下がる気等、毛頭在りません。
だから、了承下さい。
お願いします。」
「………」
司は、必死だった。
必死に、会長に懇願していた。
会長が、許してくれる? or くれない? …ではなく、司の思いを会長に分かってもらう為に、司は、必死だったのだ。
会長は、取り敢えず、此の場では、返答しなかった。
“牧野君の気持ちを訊いてから…。”と、言う事が、会長の頭の中には有ったからだった。
そして、つくしに逢った会長は、つくしに訊いて居た。
「牧野君は、司君の気持ちを、如何思って居るんだね?」
つくしは、迷っていた。
“道明寺さん(司)への想いは、其処まで、私自身の中で膨れ上がって居る訳では無
い。”と、思って居たからだった。
だから、正直に答えていたつくしだった。
「正直に申し上げると、私には、まだ、何とも言えません。」
しかし、つくしは、未だ、つくし自身の気持ちには、気が付いて居ない様子だったのだ。
“成らば…。”と、思う会長だった。
「儂も、牧野君には、警察を辞めて欲しいと思って居る。
無茶を承知で、後先考えずに動いてしまう牧野君が心配…何だ。
『爺』として…な。
だから、如何だろうか?
司君を客観的に見る為にも、うち(会長が経営する企業)の…と、言う寄り、儂の秘書
に、また、返り咲かないかな?」
本来のつくしの気持ちとしては…。
“本当は、刑事として、まだまだ、遣って行きたい‼”と、思っていた。
だが、つくしの両親も、心配していた。
だから、警察を辞める方向で、両親からも説得されていた。
成らば、会長にお世話に成る方が、気が楽だった。
其れに、つくしには、4人の祖父母は、既に、他界して居なかった。
だから、つくしは、タマ同様、会長に対しても、自身の祖父の様に、感じていた。
なので、会長から言われた『『爺』として…な。』と、言う言葉は、つくしにとって、嬉しい言葉だったのだ。
だから、つくしは、会長に気持ちを伝えて居た。
「会長…。
此れからも、宜しくお願い致します。」と…。
其の件は、会長から楓に伝えられ、楓➡西田を通して、司に伝わった。
司は、ショックだった。
何故なら、つくしは、司自身の傍に来てくれると思っていたからだった。
だが、思惑が外れた司だった。
其れからの司は、人が変わった様に、心を入れ替えていた。
つくしに認めてもらう為…。
つくしに、自分自身を好きに成ってもらう為…。
必死で、司は、仕事に没頭していた。
楓は、良い傾向と、密かに、思っていた。
また、会長も、まさか、こんな短期間に、司が、変わる等と思って居なかった。
此れこそ、“『つくし効果』だろう‼”と、思う会長だった。
そして、つくしも、そんな司に、惹かれ始めるのだった。
否、やっと、つくしは、自分自身の気持ちに気が付き始めたのだった。
だから、つくし自身…。
“やっと、先輩は、自分自身の気持ちに、気が付き始めた。”と、桜子は、密かに、感じていた。
だが、つくしは、司には、そんなつくし自身の気持ちを伝える気は、毛頭無かった。
勿論、桜子も…。
そんな日々も、更に、半年が経っていた。
そして、司とつくしの関わりも、少しずつ、変化して行った。
誰もが、其の事に気付く位に…。