おとり捜査…<つかつく> 17.
つくしも、道明寺HDでの、業務に慣れて来た頃…。
司は、つくしを誘い出した。
実は、つくしが、道明寺HDに出向して来て、直ぐの頃…。
司は、つくしを誘い出した事が有った。
どんな理由でも良いから…。
司は、兎に角、つくしと二人っきりに成りたかったという事が、本音だったのだ。
だから、つくしに声を掛けたにも関わらず、司は、つくしから、言われていたのだった。
「つくし…。
道明寺HDに出向して来た記念に…。
二人だけで、ディナーに行かねぇか?」
「私が、道明寺HDでの業務に慣れるまで…。
支社長のお誘いをお受けする訳には参りません。
先ずは、仕事が優先でお願いします。」
つくしが言って居る事は、正論なのだが…。
司には、解せない言葉だったのだ。
だから、司は、司自身の執務中は事有る毎に、つくしを、司の執務室に呼び出して居た。
「牧野…。
珈琲を淹れてくれ‼」
「資料のコピーを取ってくれるか?」
「此の資料をシュレッダーに掛けといてくれ‼」
で、お昼に成れば…。
「休憩時間だ‼
昼飯に行くぞ‼」
と、司からの強要にも、つくしが、司の申し出を拒めば…。
態々、司は、秘書室にまで入って来て、つくしの腕を掴んで、立ち上がらせて、秘書室から、連れ出そうとする。
どんなにつくしが、司を制止させ様とも、司は、お構い無しで…。
と言う寄り、問答無用で、司は、つくしを連れ出すのだった。
日に何回、つくしは、司の執務室に呼び出され…。
日に何回、つくしは、秘書室から、司に連れ出されるか?
分からない程だった。
此れには、男女関係なく、秘書課の社員は、司の行動に、呆気に取られていた。
否、既に、呆れていた。
つくしと言えば、道明寺HDに出向して来て直ぐの頃に…。
西田から、約束してもらって居た事が、何の抑止力にも成って居ない事に、ショックだったのだ。
司は、どんなに、西田から窘められ様が、“つくしの顔を見なければ、一日が始まらず、一日が、終わらねぇんだから、仕方ねぇだろ?”と、思っての事だった。
そして、司は、漸く、つくしをディナーに誘える日が来たという訳だったのだ。
司は、つくし無しでは、一日一日が、始まらず、終わらずの状況に成ってしまって居た。
だが、其の分、仕事の遣り甲斐が、其れまでとは、違う様で…。
仕事の効率・速度・スピーディーさが、増していた。
だから、楓だけじゃ無く…。
西田も、重役も、司には、何も、言えずに居たのだった。
こうして、道明寺HD 日本支社 支社長 道明寺司は、『牧野つくし』という、一人の女性に寄って、仕事の遣り甲斐を見出した様子だった。
現在の道明寺HD 日本支社は、『牧野つくしという一人の女性』に寄って、安泰と言われるまでに成っていた。
こう成れば、道明寺HD 日本支社の女性社員は、『牧野つくし』に対して、何も言えずに居たのだった。
だから、司は、男女関係無く、其の場に、社員が居ようが居まいが、一切、気にする事無く、つくしを独占しようとする。
もし、つくしが、司を拒否れば、司の仕事の執務に関わって来るので、つくしは、司の秘書の立場上…。
拒否も出来ずに居たのだった。
其れを良しとしていた司は、つくしから、何時(いつ)も言われていた。
「職権乱用…‼」と…。
だが、司は、そんな言葉は、微塵とも感じて無く…。
寧ろ、司にとっては、関係無く、つくしに対しては、強引さを魅せ始めて居た。
だから、つくしは、西田から、言われていた。
「牧野様…。
司様のお供をお願いします。」
そう西田から言われてしまえば、つくしは、こう言うしか無かった。
「承知しました。」
司に気持ち良く仕事をしてもらう為にも…。
つくしは、犠牲を払う様な状況に成ってしまって居た。
其れは、つくしにとって、司の『party』のパートナーとしても、言えた事だった。
だが、つくしは、気が付いてしまった。
司が、つくしにだけに魅せる笑顔や優しさ…に。
「如何して、私にだけ…。
そんな甘い顔付きで見て来るんですか?」
其の事を、つくしが司に訊けば…。
司は、何時(いつ)も同じ事を、つくしに言って来て居た。
「お前限定だ‼
お前を愛してるから、俺は、お前には、笑顔を魅せるし、優しくも成れる。
つくし、良~く覚えて於け‼」と…。
其の事が、嬉しく思うつくしだったのだ。
だからだろうか?
つくしは、司を自然な形で、受け入れ始めた。
そして、そんな日々が、幾月か経った頃…。
司とつくしは、自然な形で、付き合い始めたのだった。
漸く、そう成った事を喜んだのは、言うまでも無く…。
楓と西田、そして、タマだった。
特に、タマは、やっと、肩の荷が下りた様な気分だったのだ。
また、楓は、今後の道明寺HDの安泰を喜んで居た。
西田は、司が、執務をしっかり全うして居る姿に、漸く、ホッと出来た事を嬉しく思っていた。
つくしは、結局、嵌められた感MAXな司との出会いだったかも知れなかったが…。
こうして、つくしは、司との出会いを謳歌し始めて居た。
つくしの高校生の頃の夢は、警察官として、一生を全うする事だった。
だから、其の為に、武道を嗜んでいた。
だが、今のつくしの夢は…。
司との人生を謳歌する事…。
そして、将来は、司とつくしとの間に、子供が授かれば、尚、嬉しいと思っていたつくしだった。
そんな事を聞かされた司は、つくしを抱き締めて言って来た。
「つくし…。
じゃあ、そろそろ良いよな?」
そう、司とつくしは、未だ、そう言う関係じゃ無かった。
そして、つくしの頷きと共に…。
其れからの司とつくしは、一生、共に添い遂げる仲に成ったのだ。
司は、思っていた。
“やっと、俺は、つくしを手に入れられた。”と…。
fin