人間恐怖症…<つかつく> 120.
牧野(家)の両親のお墓参りを済ませた後…。
実は、司は、美桜と潤を、或る場所に、連れて行くのだった。
其の或る場所とは、そうなのだ。
道明寺邸だったのだ。
実は、以前から、煩い位に、「逢わせて欲しい。」と、司は、タマから、言われ続けて居たのだった。
司にとって、古菱家と道明寺家の両親から、自身と美桜の婚約が許されて、成立した暁には、先ずは、潤を、自身の両親に会わせて…。
そして、自身と美桜の婚約の報告を、牧野の両親の墓前に行って(おこなって)から、タマに逢わせる事が、順序だと、司は、理解して居たのだった。
其の為に、“此の日が、最良の日だろう。”と、司は、判断したのだった。
なので、美桜と潤を、道明寺邸に連れて来たという訳だったのだ。
美桜と潤は、事前に、司から、聞かされていた訳では無かったので、初めて観る道明寺邸に、驚愕するのだった。
現在の美桜自身…。
『美桜』としては、初めての道明寺邸では在ったのだが…。
『牧野つくし』としては、何度も訪れ…。
メイドとしても、道明寺邸にて、滞在して居た時も有ったのだ。
本来の司は、此処(道明寺邸)に、美桜を連れて来る事を、実は、躊躇して居たのだ。
だが、タマからの言葉が、司を後押しした事は言うまでも無いのだ。
「坊っちゃん…。
坊っちゃんが、美桜様との結婚を望まれてお出でなら…。
道明寺邸を隠す訳にはいきませんよ。
其れは、何れ、美桜様と潤坊っちゃんは、道明寺家の人間に成ると言う意味です。
お分かりですね。
ですから…。
道明寺邸に、美桜様と潤坊っちゃんを、お連れ下さいまし…。」と…。
其れでも、司は、美桜が、記憶を取り戻す事を恐れて居た事は言うまでも無いのだが…。
そして、潤は、古菱邸とは、また、違う洋館の道明寺邸に、興奮気味だったのだ。
「パパ…。
ここ(此処)は、どこ(何処)?」と…。
なので、司は、潤に、説明している様で、美桜にも、言って居たのだった。
勿論、此の時の司は、美桜の反応を、ジーっと、観て居た事は、言うまでも無いのだが…。
「此処は、パパの住まいだ。
此処は、道明寺邸だ‼」と…。
だが、此の時の潤は、首を傾げ乍ら、更に、司に訊くのだった。
「えっ??
パパのすまい(住まい)は、ママとぼく(僕)と、いっしょ(一緒)でしょ?」と…。
実は、潤は、美桜と潤と同じ様に、司の住まいも、古菱邸が住まいだと思い込んで居たのだった。
だからこそ、司には、別に、住まいが有る等と、潤は、思っても居なかったのだ。
だからこそ、潤にとっては、今の司からの言葉は、不思議だったし…。
寂しく思って居たのだった。
此の時の潤のそんな様子をキャッチした司は、潤に、分かり易く説明するのだった。
「此処は、パパが、子供の頃から住んで居た(道明寺)邸だ。
潤が、古菱邸で、産まれた頃から住んで居る様に…。
パパも、此処(道明寺邸)で、産まれた頃から住んで居る。
今は、ママと潤が居る古菱邸に住まいを移して居るが…な。」と…。
だが、此の時の潤には、司からの説明は、分かる様で、分かって居なかったのだ。
司には、分かり易く説明したつもりに、過ぎなかったのだ。
だが、潤は、司に、返答して居たのだ。
「ふ~ん。」と…。
司にとっては、何とも言えない様な、潤からの返答だったのだ。
だからこそ、司は、其れ以上、潤には、何も言わず…。
美桜と潤を自身が運転して来た愛車から降ろし、エントランスまで、誘導するのだった。
エントランスで、司と美桜と潤を出迎えて居たのは、タマと道明寺邸に長らく仕えて居る執事だったのだ。
そして、『牧野つくし』が、道明寺邸に出入りして居て、メイドをして居た頃から『牧野つくし』の事を良く知って居る道明寺邸のメイド達もまた、エントランスにて、司と美桜と潤を出迎えて居たのだった。
勿論、タマだけでは無く…。
『牧野つくし』の事を、良く知って居る執事にも…。
また、『牧野つくし』が、道明寺邸に出入りして居て、メイドをして居た頃から『牧野つくし』の事を良く知って居る道明寺邸のメイド達にも、現在の『牧野つくし』の事情は、説明されて居たのだった。
何故なら…。
現在の美桜は、『牧野つくし』では無いのだから…。
其の事を、寂しく思って居たのは、タマだけでは無く…。
『牧野つくし』の事を、良く知って居る勿論の執事…。
そして、『牧野つくし』が、道明寺邸に出入りして居て、メイドをして居た頃から『牧野つくし』の事を良く知って居る道明寺邸のメイド達もまた、同じ思いだったのだ。
だが、当然では有るのだが…。
美桜は、道明寺邸に入っても、道明寺邸の事は、初めて観る場所として、認識して居たのだ。
当然乍ら…。
道明寺邸のスタッフに関しても、初めてお目に掛かる方々としての認識だったのだ。
そして、道明寺邸に入った時の潤は、いの一番に、挨拶するのだった。
「こんにちは!
ぼく(僕)は、ふるびしじゅん(古菱潤)です。
3さい(歳)です。
もうすぐ(直ぐ)、4さい(歳)になります。
よろしく(宜しく)おねがい(お願い)します。」と…。
此の時のタマは、思うのだった。
“潤坊っちゃんは、お利口さんだ事…。
こう言う処は、『つくし』に似たんだろうさね。
つくしの人懐っこい所も…。”と…。
だが、此の時のタマは、決して、自身の思いを口に出して言う事は、無かったのだ。
もし、タマが、此のタマの思いを口に出して言えば…。
潤の前で、司の不甲斐無さを、露呈させる事に成るのだ。
また、“美桜様を誤解させる原因を作るかも知れないさね。”と、タマは、思うのだった。
だからこそ、敢えて、タマは、口に出して、言えずに居たのだった。
そして、タマも、また、潤に返答するかの様に、潤に言葉を交わすのだった。
「潤坊っちゃんは、ちゃんと、挨拶出来て、ご立派だ事…。」
此の時の潤は、タマからそう言われて、照れていたのだった。
そして、続けて、タマは、美桜の方を向いて、挨拶を交わし始めたのだった。
「此の度は、ご婚約、おめでとうございます。
あたしゃ、先代の旦那様の頃より、使用人として、此の道明寺家に仕えて、60余年…。
現在は、使用人頭を仰せ付かっておりますタマと、申します。
宜しくお願い致します。」と…。
其処に、司は、付け加えるかの様に、美桜に、話しし始めるのだった。
「タマは、俺を育ててくれた親代わりでも在んだ。」と…。
なので、美桜は、タマに、お礼の言葉と挨拶を交わすのだった。
そして、美桜は、タマに訊き始めるのだった。
「タマさん…。
有難う御座います。
此方こそ、宜しくお願い致します。
タマさんも、きっと、私の過去の事は、ご存知…何ですよね?」と…。
そして、タマは、そんな風に、訊いて来た美桜に、正直に、話しし始めるのだった。
「そうさね。
知ってるさね。
つくしは、高等部に通って居る頃から、此の道明寺邸に出入りして居たさね。」と…。
美桜は、タマが、『つくし』と、言った事に気が付き、“タマさんと『牧野つくし』は、相当、親しかったのだろう。”と、思い当たったのだった。
だからだったのかも知れない。
美桜は、更に、タマに訊き始めたのだった。
「タマさんと『牧野つくし』は、相当、親しかったのですか?」と…。
其の事にも、タマは、正直に、美桜に話しし始めるのだった。
「そうさね。
あたしゃ、『つくし』の事は、孫の様に、思って居たさね。
『つくし』という娘(こ)は、人懐っこい所が有ったさね。
だから、タマとつくしは、直ぐに、打ち解けたさね。」と…。
そんな風に、タマから、自身の過去の事を聞かされた美桜は、タマに願い出るのだった。
「タマさん…。
お願いが有ります。
私の事も、『美桜』と、呼んで下さい。」と…。
だが、タマは、断るのだった。
「『つくし』という娘は、一般家庭出身の娘だったからこそ…。
タマは、『つくし』と、呼ばせてもらって居たさね。
其れは、つくしからの要望でも有ったさね。
でも、美桜様は、古菱家のご息女でいらっしゃる。
例え、『つくし』が、美桜様で在ったとしても、タマには、呼び捨て等、出来ません。
其れは、何れ、美桜様が、此の道明寺家の『道明寺夫人』に成られるお方だからです。」と…。
そして、美桜は、タマに返答して居たのだった。
「分かりました。」と…。
だが、そんな風に、タマから言われた此の時の美桜は、寂しくも有り…。
残念に思って居たのだった。
此の時の美桜の中では、タマとの間に、変な距離感を感じて居たのだった。
実は、此の時の美桜には、タマを懐かしくも、感じて居たのだった。
だからだったのかも知れない。
此の時の美桜には、一切、異変も、症状も、出る事は無かったのだった。
そんな美桜の様子を観て居た司は、すっかり、安心し切って居たのだった。
そして、其の後の司は、美桜に、執事を紹介するのだった。
そして、執事と、挨拶を交わし合った後の美桜と潤を引き連れて、司の自室に向かう司だったのだ。