人間恐怖症…<つかつく> 121.
司は、日本に帰国してから、道明寺邸に居る時には、東の角部屋を、自身の自室にしているのだ。
其処に、美桜と潤を、連れて来たのだった。
道明寺邸に在る 東の角部屋と云えば…。
司にとっては、『牧野つくし』との思い出が、一杯、詰まっている部屋なのだ。
何故、司が、其の東の角部屋に、美桜と潤を、連れて来たのか?
其れは、司の賭けだったのだ。
先ずは、美桜の異変や症状は、第一関門だった道明寺邸に対して、出なかったのだ。
そして、第二関門だったタマに対しても、美桜の異変や症状は出なかった。
そして、最後の関門で在る 東の角部屋…。
実は、司自身…。
此の東の角部屋に、美桜を連れて来る事自体…。
不安だったのだ。
実は、司の中では、“もし、美桜の中で、記憶が蘇ったら…。”と、言う思いは、何時も、付き纏って居たのだ。
だが、タマの言う通り…。
何れは、司と美桜は、入籍する。
そう成れば…。
美桜と潤は、司と共に…。
自ずと、道明寺邸で、暮らす事に成る。
と言う事は…。
司と美桜が入籍すれば、其の後に、司と美桜と潤は、道明寺邸で暮らす事に成るのだ。
そう成れば…。
幾ら、司が、東の角部屋を、司と美桜の自室にしたくても…。
そう出来ないという可能性も無きにしも非ず…なのだ。
だからだったのかも知れない。
事前に、東の角部屋を美桜に見せる事に寄って…。
美桜の中で、異変や症状が、出るのか? or 出ないのか?
司の中で、試す必要性が、有ったのだ。
だからだったのだろう。
司は、不安な想いを隠すかの様に、美桜の様子を観乍らも、東の角部屋に美桜と潤を、連れて来たのだった。
そして、東の角部屋に入った時の潤は、唯、広いだけで、ベッドと、ソファセットしか置いて居ない此の部屋を見て、驚愕するのだった。
「パパ…。
この(此の)おへや(部屋)は…?」
なので、司は、潤の頭を撫で撫でし乍ら…。
言って除けるのだった。
「此処(東の角部屋)は、パパの自室だ。」と…。
だからだったのだろう。
潤は、首を傾げ乍ら、更に、訊き始めるのだった。
「なに(何)もない(無い)ね?」と…。
だからだったのだろう。
そんな不思議そうにしている潤に、司は、更に、言って除けるのだった。
「ああ。
昔のままだから…な。」と…。
実は、此の東の角部屋は、司がNYに渡米後も、ずーっと、現在に至るまで、司が高等部の頃の原形のまま…だったのだ。
実は、其れは、タマの指示の下だったのだ。
司が、『牧野つくし』の記憶を取り戻した時の事を考えれば…。
“(司が高等部の頃の)原形のまま、留めて置く方が良いに決まっている。”と、タマは、悟って居たのだった。
其の事を知った時の司は、タマに、感謝をして居たのだった。
そして、司からそんな風に聞いた此の時の潤は、司が、返答して来た其の事の意味を、分かって居るのか? or 分かって居ないのか?
相槌だけしている様子だったのだ。
「ふ~ん。」と…。
そして、美桜と云えば…。
暫く、何も言わず…。
唯、此の東の角部屋を見入って居たのだった。
そして、美桜は、じーっと、其の場(ドア付近)から動けず、佇んで居たのだった。
其の美桜の様子に、司は、冷や汗が出て来て、背中を伝った事を実感したのだった。
だからだったのだろう。
司は、そんな美桜に、声を掛ける事も出来ず、唯、其の場から動けずに居たのだった。
そんな司と美桜の様子に気が付いて居るのか? or 居ないのか?
潤が、タイミング良く…。
そんな司と美桜に、声を掛けるのだった。
「パパ…。
ママ…。
おへやたんけん(部屋探検)してきて(来て)も、いい(良い)?」と…。
なので、司は、潤のそんな問いに、ハッと成って…。
潤に返答するのだった。
「ああ。
良いぞ。」と…。
そして、司は、美桜に、訊き始めるのだった。
「美桜…。
何か?
思い出したのか?」と…。
其の時だったのだ。
美桜は、司の方を向いて、訊き始めるのだった。
「私は、此処(東の角部屋)に、来た事が有るの?」と…。
そんな風に訊いて来た美桜に、司は、一瞬、固まってしまったのだった。
だが、一瞬で、我に返った司は、美桜に、正直に、返答するのだった。
「………。
ああ。
高等部の頃に…な。」
そして、続け様に、司は、更に、美桜に、訊き始めるのだった。
「美桜…。
何か?
思い出したのか?」と…。
だが、美桜は、左右に、首を振るだけで…。
何を言う訳でも無かったのだ。
だからだったのかも知れない。
司は、美桜を、自身の方に引き寄せて、抱き締め乍ら、話しし始めるのだった。
「美桜…。
実は…。
此の(東の角)部屋は、俺と『牧野(つくし)』との思い出が、一杯、詰まった部屋…何
だ。
だから、美桜にも、何か、感じるモノが有っても、可笑しくねぇんだ。
だからこそ…。
俺に隠さず、今、美桜の中で、感じるままに、俺に、話しして欲しい。」と…。
だからだったのかも知れない。
司から、そんな風に言われた事で、美桜は、司に話しし始めるのだった。
「思い出した訳では無いの。
でも、“空気感…?”と、言うのか?
私の中で、何かを感じるんだけど…?
其の何かが、分からないの。
でも、司と私の過去との思い出なら…。
私の中で、何かを感じ取って居ても、可笑しくなかった訳…ね。」と…。
そして、司は、美桜がそう言って来ても…。
美桜の中で、異変や症状が現れて来ない事に、ホッとして居たのだった。
だからだったのだろう。
司は、美桜に、或る提案をするのだった。
「美桜…。
俺と美桜が、入籍したら…。
此処に、住まねぇか?」と…。
此れには、美桜は、驚愕するのだった。
美桜の中では、入籍後も、古菱邸を住まいに出来ると…。
何故か?
勝手に、そう思って居たのだ。
だからだったのかも知れない。
美桜は、司からの提案が、驚愕で、目をぱちくりして居たのだった。
そんな美桜の様子をキャッチした司は、美桜に、更に、言って除けるのだった。
「俺と美桜が、入籍すれば…。
美桜は、『道明寺美桜』に、成る。
そして、潤は、『道明寺潤』と、成る。
美桜に、其の意味が、如何いう意味なのか?
分からねぇ訳ねぇよな?
だから…よ。
俺と美桜の入籍後は、俺が、今の様に、古菱邸で、過ごす訳には、いかねぇだろ?」と…。
美桜は、暫く、考え込んで居たのだった。
今の美桜にとって…。
古菱邸を出る事は、まだ、怖いのだ。
だが、今、美桜が、此の東の角部屋に居ても、違和感を感じる事は無く…。
寧ろ、居心地が良かったのだ。
其れが、過去の記憶に寄るモノなのかは、今の美桜にも分からないのだ。
だが、確かに、此の場(東の角部屋)に居ても、嫌じゃない自分自身が居る事は、事実なのだ。
だからだったのだろう。
美桜は、司に、伝えて居たのだった。
「そうだね。
此のお部屋なら…。
大丈夫かも知れない。」と…。
なので、司は、嬉しさからなのか?
美桜を、其れ以上に、きつく抱き締めるのだった。
美桜は、そんな司に対して、司の腕の中で、クスクス笑うだけだったのだ。
そして、其処に、お部屋探検して居た潤が戻って来たのだった。
そして、潤は、一言、司に、言って除けたのだった。
「あぁ~、たのしかった(楽しかった)!」と…。
そんな潤に、嫌な予感しかし無い司だった事は言うまでも無かったのだ。