Close to you~お前の傍に~…<つかつく> 6.
【『Close to you~お前の傍に~…<つかつく> 5.』の其の後 <其の後の司>】
実は、英徳大学から道明寺邸に帰邸後の司は、あきらから言われた話しが、如何しても、自身の頭から離れなかったのだ。
司が言われた其のあきらからの話しとは…。
英徳大学のカフェテリア内に在る F4ラウンジにて、“和也以外にも、『道明寺』と、呼び捨てにされて居た奴が居たんじゃねぇのか?”と、言う自身の疑問に対して、司からF3に訊いた話しに、あきらが答えたモノ…だったのだ。
「良いか、司…?
俺等 F3も、司には、“真実を教えて遣りてぇ(たい)‼”と、思う。
けど…な。
高等部だった当時の俺等も、其の当時の司に言ったとは思うが…。
其れは、司自身が思い出さねぇと、何にも成んねぇんだよ。
所謂、意味がねぇんだよ。
だから…な。
俺等は、司から何を訊かれても、一切、答える気がねぇんだわ。
悪ぃな、司…。」と…。
だからだったのだろう。
英徳大学から道明寺邸に帰邸後の司は、独り言かの様に、自身の自室にて、まだ、呟いて居たのだ。
“俺に、「一切、言えねぇ。」って、何なんだよ⁉
其の女って、一体、どいつ何だよ!”と…。
其処へ、司の自室に、タマが入って来たのだ。
だからだったのだ。
此の時のタマは、気難しそうな顔付きに成って居る司の顔付きを観て、司に声を掛けたのだ。
「坊っちゃん、如何したんですかい?
そんな顔付きを為さって…。」と…。
だからだったのだろう。
司は、更に、不機嫌とでも云える様な顔付きに成り、タマを威嚇する様に吠えるのだった。
「あ〃ぁ~??」と…。
其処で、此の時のタマは、久し振りに観た司の感情に、自身の心の中で笑い乍らも、司に言って除けるのだった。
「何か、良い事でも有ったんですかい?」と、嫌味ったらしく…。
其処で、此の時の司は、そんなタマを、更に、威嚇する様に吠えるのだった。
「俺の此の面を見て、良い事が有った様に、タマには見えるのか?」と…。
だからだったのだろう。
此の時のタマは、等々、堪え切れずに、クスクスと笑い乍らも、司に言って除けるのだった。
「タマは、久し振りに観ましたよ。
坊っちゃんのそんな顔付きを…。
否、坊っちゃんが感情を剥き出しにして吠えて居る所を…。
ですから、久し振りに、坊っちゃんが英徳大学に行かれて、“何か良い事が有ったんじゃ
無いか?”と、タマは、思ったんですが…ね。
坊っちゃんには、何も良い事が無かったんですかい?」と…。
だからだったのだ。
此の時の司は、タマからそんな話しを聞かされて、更に、疑問に成る様な思いが自身の頭の中を埋めて居たのだ。
“タマが、俺に言って来た話しの意味は、如何いう意味だ⁉
俺が感情を剥き出しにして居る所を、「久し振りに観た。」だと…。
実は、俺の中に記憶がねぇだけで、俺の心を揺さ振る様な女が居たという事か?
否、そんな女は、此れ迄の俺の周りには居なかった筈だ。
タマは、俺に、何を言いてぇんだ?”と…。
だが、そんな風に思い乍らも、タマからのそんな話しを聞いた此の時の司は、胸騒ぎを起こして居たのだ。
如何しても、此の時の司の頭の中では、“そんな女が居たんだよ。”と、言って居る様な気さえして居たのだ。
否、そんな気さえして、仕方無かったのだ。
だからだったのかも知れない。
此の日の司は、自身の心の中のモヤモヤが取れないまま、ベッドの中に入ったのだった。
そして、司は、其の日から、モヤモヤが取れないまま眠ったからなのか?
其の後の司は、頻繁に、一人の少女の夢を見る様に成ったのだ。
其の夢の中で、一人の少女が呼んで居る「道明寺、道明寺…。」と、呼ぶ声と共に…。
そして、そんな日から幾月か経った頃…。
其の後の司は、漸く、忘れて居た物が有る事に気が付いたのだ。
云わば…。
つくしの記憶を思い出したのだ。
道明寺邸にて、F3&T2(滋と桜子)が開いてくれた自身の退院祝いの時に、一人の少女が道明寺邸に現れた時の事を…。
そして、其の時のつくしの剣幕に慄き乍らも、其の一人の少女(つくし)に訊きたい事が有ったという事を…。
そして、更に、其の後の司は、思い出したのだ。
自身が入院して居た時に見たつくしの涙に狼狽え、其の後の自身の入院中も、つくしの事が気に成って仕方無かった時の事を…。
そして、自身が入院して居た時に食べたお弁当は、実は、つくしが作ったお弁当で在ったという事を…。
そして、其の後の司は、次から次へと、つくしの記憶が溢れ出て来るかの如く、思い出し始めたのだ。
だからだったのだろう。
其の後の司は、つくしの記憶を取り戻した事で、後悔し始めたのだ。
だからだったのかも知れない。
此の時の司は、自身の頭を抱え乍らも、天を仰ぐかの様に、また、吠えるのだった。
今度は、自身の自室から漏れる様な大きな声で…。
「あ〃ぁ~。」と…。
実は、道明寺邸の各部屋というのは、防音壁にて囲まれて居る筈なのだ。
其の防音壁にて囲まれて居る筈の道明寺邸の司の自室から廊下迄、聞こえる様な大きな声が漏れて居ると言う事は、此の時の司の声は、かなり、大きな声だと云えたのだ。
だからだったのだろう。
そんな大きな司の声に、慌てるかの様に、タマが司の自室に入って来たのだ。
「坊っちゃん…如何したんですかい?
廊下迄、聞こえて来る様な大きな声を出して…。」と…。
だからだったのだ。
此の時の司は、タマに言って除けるのだった。
「タマ…俺は、如何したら良い?」と、自身の頭を抱え込み乍ら…。
其処で、タマは、小首を傾げ乍らも、更に、司に訊くのだった。
「一体、如何したんですかい?
タマには、何が何だか?
全く、分からないださね。」と…。
其処で、司は、後悔し乍らも、タマに言って除けるのだった。
「牧野の事を思い出した。」と…。
だからだったのかも知れない。
此の時のタマは、“やっとですかい。”と、思い乍らも、司に伝えなければ成らない事が有る為に、話しし始めるのだった。
「そうですかい。
其れは良かったと言うべきか?
坊っちゃんが、つくしの事を思い出すにも、少し、遅かった様ですかね。
実は、タマは、つくしの事で、坊っちゃんに伝えなければ成らない事が在るださね。」と…。
だからだったのだろう。
此の時の司は、自身の頭を抱え込み乍らも俯いて居た頭を、がばっと、上げて、タマに訊き始めるのだった。
「タマは、何を俺に伝えなければ成らねぇんだ?
牧野の事って…。
まさか、牧野に何か有ったのか?」と…。
だからだったのだ。
此の時のタマは、司に報告するのだった。
つくし達 牧野家が行方不明に成って居ると言う事を…。
そして、タマ自身、あきらに会って、あきらから聞いた話しについても…。
其処で、司は、タマからのそんな話しを聞いた事で、驚愕の余り、呟く様に、意気消沈のまま、タマに訊き始めるのだった。
「其れって、俺のせいか?
俺が、牧野だけの記憶を失くしたからか?
だから、牧野の父ちゃんと母ちゃんがそんな俺の事を悲観的に感じて、家族で行方不明に
成ったんか?
だとしたら、俺の責任か?」と…。
だからだったのだ。
此の時のタマは、司に何と言って良いのか分からず、苦しそうにして居る司を庇うかの様に、話しし始めるのだった。
「タマは、今の坊っちゃんに、何と言って、励まして良いモノか分かりません。
其れに、つくしが、何故、家族と共に、行方不明に成ったのか?
其れも、今のタマには分かりません。
ですが、坊っちゃんだけの責任とも言えない様な気がしますよ。
勿論、因果関係は有るとは思いますが…ね。
ですが、タマには、其れだけが理由では無い様に思います。
つくしは、そんな柔な娘(こ)では在りませんよ。
唯、つくしは、両親に就いて、一緒に行っただけの様に、タマには思えて仕方無いんです
が…ね。」と…。
だが、其れでも、此の時の司にとって、タマの言葉は、一切、自身の耳に入って来なかったのだ。
其れだけ、此の時の司にとって、後悔の念だけが押し寄せて居たのだ。
“俺は、牧野だけの記憶を失って居た事で、牧野を失う事に成るのか?”と…。
だが、其れでも、此の時の司は、思って居たのだ。
“タマが、あきらから話しを聞いたという事は…。
もしかしたら、あきらは、タマには伝えてねぇだけで、実は、其の他にも、牧野の現状を
知って居るんじゃねぇのか?
だとしたら、俺も、あきらに、牧野の事を訊くべきだろう。”と…。
だからだったのだ。
此の時の司は、タマに言って除けるのだった。
「俺も、あきらから話しを聞いて視るわ。
後悔ばかりじゃあ、先には、進めねぇだろう?
なぁ~、タマ…。
そうだろ?」と…。
だからだったのだ。
タマも、そんな司にエールを送るつもりで、言って除けるのだった。
「そうですよ、坊っちゃん…。
くよくよする前に、つくしの事を受け止める方が先ださね。」と…。
だからだったのだ。
此の時の司は、現実を受け止めるだけで、必死…だったのだ。
だからだったのだろう。
実は、タマは、司がつくしの記憶を取り戻した時点で、司の母親で在り、道明寺家の女主人でも在る 道明寺HD 社長 道明寺楓に報告して居たという訳…だったのだ。