馬鹿だよな、俺…<総優> 10.
<優紀side>
その時は、ニコっと、笑うしかなかった私だった。
だって…。
私が勝手に産んだ優一郎を、西門家が受け入れてくれるとも、思えなかった。
また、私が何も告げず、留学先で、勝手に子供を産んで居た私を、両親が、許してくれるとも、思えずに居たのだった。
そうするしかなかった私を…。
そうしたかった私を…。
西門家も、私の両親も、私を…。
許してくれるとは、思えなかった。
そんな気持ちを察してくれたで有ろう西門さんが、私に言ってくれた言葉が…。
私は、嬉しかった。
「お互いの両親が許さなくても…。
親子3人、一緒に暮らそう‼
俺は、優紀以外、もう、考えられねぇんだから…。
仕方ねぇな‼
もう、優紀が傍に居ねぇ生活は、堪えられねぇんだよ‼」
西門さんの、其の言葉に、私は、救われた様な気がしていた。
そして、先生からも、励ましてもらった。
「優紀…?
親が認めてくれないなら、何時でも、私が、今まで同様、親代わりに成って上げるわ
よ‼」
先生からは、そんな、心強い言葉を貰った。
“私は、幸せ者かも…。”と、思って居た。
そして、フライト時間を知らせるアナウンスが入った。
其処に、先生が、私に声を掛けてくれた。
「優紀、日本で会いましょう‼
彼は、優紀を離せないでしょ?」
西門さんは、先生の言葉に、間髪入れずに答えていた。
「当然だ‼」
先生も、納得していた様で、更に、私に話しして来て下さった。
「優紀、日本便を取り直して、旦那と一緒に帰国しなさい。
日本に着いたら、連絡頂戴‼
待ってるから…。」
私は、先生に感謝した。
「先生、色々、有難うございました。
気遣って下さって、有難うございます。
絶対、連絡します‼」
先生は、笑いながら、その場を後にして、飛行機に搭乗する為、私達と別れた。
そして、私達は、タクシーに乗車し、西門さんから、優一郎を預かり、私の膝に乗せて座らせた。
そして、タクシーは、NYメープルに向かって居る様子だった。
<総二郎side>
俺は、タクシーの中で、俺の息子の名前を、きちんと優紀に確認していた。
自分の息子の名前を知らねぇ何て、有り得ねぇだろ?
あの中年女性の先生とやらは、さっき、『優』とは、言って居たが…。
さっき、優紀は、『優一郎』と、言って居た。
「優紀、俺の息子の名前は…『優一郎』で、良いんだよな?」
「はい、『優一郎』と、言います。
先生を始め、海外の方からは、『優(ユウ)』と、呼んで頂いてました。」
「良い名前だな。」
優紀は、ニコっと、笑ってくれた。
そして、俺は、NYに一泊する為、NYメープルの支配人に、タクシーから、連絡を入れ、優紀と優一郎と一緒に向かって居た。
そして、俺等は、急遽、初めての親子3人水入らずの一泊旅行と、成った。
何か、俺は、照れてしまい、優一郎を直視出来ずに居た。
そんな俺を、見詰めて笑う優紀が俺の傍に居た。
また、その場の雰囲気も、俺にとっては、照れる要素の一つだった。
そして、俺は、目と目が合った優一郎から、飛んでもねぇ言葉を聞いてしまった。
「ぱっぱっ‼」
「「………、えっ??」」
俺と優紀は、目と目が合って、お互い眼をパチクリさせていた。
「ぱっぱっ‼」
と、言いながら、俺に手を差し出す優一郎に、何をして居るのか分からずに居ると…。
優紀が、答えてくれた。
「西門さんに、抱っこして欲しんですよ‼」
俺は、“あっ”と、成って…。
一旦、タクシーの座席に座らせていた優一郎を、俺は抱き抱えて膝の上に座らせ、抱き締めた。
“子供って、体温が高ぇんだな‼”って事も、今日初めて知った。
こんな事を知れる事も、嬉しいんだって事も…。
全てが、新鮮で、嬉しかった。
日本に帰国すれば、多分、親との戦いが待って居る。
俺が仕出かした事だ。
“しっかり、優紀と優一郎に償う‼”と、心に固く誓っていた俺だった。