助け出したい…<つかつく> 15.
<つくしside>
じゃあ、私から、認識させますか?
「私だけの記憶を失くした事は…?」
「悪ぃと思ってる。」
ほんとに、思ってるの?
「じゃあ、高校生の頃、病院で私を罵倒した事は…?」
道明寺の顔に、『恐怖』という文字が有ると言うのなら…。
その言葉が、“合っているだろう‼”と、思う様な顔付きをして居る道明寺が、此処には居た。
「俺には、お前の記憶が無かったとは言え、反省してる。
“お前の事を忘れるな‼”って、俺の細胞が、騒いで居たのに…。
其れを苛付きと認識して、お前を罵倒した事は事実だし…よ。」
「本当に反省してるの?」
「反省してる。
それに、お前が、救急救命ドクターに成ったのも…。
俺が、お前だけの記憶を失くした事に寄るものだろ?
確か、お前の高校ん時の夢は、憧れの静にあやかって、国際弁護士だったよな?
って事は…。
俺の事が忘れられなかったって事だよな?
俺は、そう思って良いんだよな…つくし?」
ほんと、相変わらず、上から…だね。
「………。
ほんと、俺様‼」
「うっせぇ~。
如何、何だよ?」
もう、良いっか?
許して上げるか?
「………。
そうだよ…悪い?」
「否、悪かねぇよ‼」
私は、思わず、本音の心の声が言葉と成って、道明寺に話しして居た。
「道明寺…。
あの頃の私も、今の私も、あんたを救いたかった。
あの頃、“助けたい‼”と、そう思っていた私だけの記憶を…。
道明寺は…?
あんたは、私だけの記憶を失くした。
後悔したよ…道明寺を好きに成った事。」
「………」
道明寺は、辛そうな顔付きに成った。
だから、道明寺は、何も、答えられずに居たのだろう。
だから、私は、話しを続けて居た。
「でも、其のあんたが、今回、私の所に来た。
だったら、あん時のリベンジをしようと思ったの。
“絶対、救い出す‼”って、誓ったよ。」
「………」
私は、一旦、言葉を切った。
道明寺は、尚も、言葉は無かった。
「ほんとはね、身内や知り合いは、手術は行えないの。
所謂、執刀医には成れないの。
ケアレスミスを防ぐ為…。」
「………」
更に、道明寺は、言葉も無く…。
道明寺は、唯、私をじーっと見ていた。
私も、道明寺をじーっと、見詰めて居た。
あんたは、周りに恵まれてんだよ。
西田さんに感謝しなさい‼
「でも、私は、執刀医に成った。
西田さんが、“そうして欲しい‼”って、院長に懇願してくれたらしいの。
だったら、道明寺を救えるチャンスを貰ったと思って…。
気付いた時には、私は、心の中で、“絶対、助け出したい‼”って…。
“助け出してみせる‼”って、誓ってた。
ほんとに、助かって良かった。」
道明寺は、満面の笑みで、私を見て来た。
そして、やっと、私に話ししてくれた道明寺だった。
「おお、お前で、良かった。
俺を助け出してくれたのが…。」
「私の記憶が、戻った事は、違うみたいだけど…?」
「お前が、此処に居るんだから、お前のお陰って言っても、過言じゃねぇだろ‼」
「そうだね。」
そう言って、私と道明寺は、お互いの顔を見合わせて、笑い合った。
そして、いつの間にか、道明寺と私の唇が重なっていた。
道明寺の病室で在る特別室の扉の外では、私の後輩男性ドクターが、道明寺と私の会話を聞いて居て、二人の間には入れそうにも無い事を悟っていたとは、知る由も無かった。
それからの、私と此の後輩男性ドクターとは、今まで通り、先輩・後輩として、接する事が出来て居た。
私は、“良かった‼”と、密かに思っていた。
そして、道明寺の退院の日が来た。
私は、道明寺が退院して、見送る事が出来て、本当の意味で、肩の荷が下りて、ほっとしていた。
だが、其処から、また、道明寺と私とのバトルが勃発した。
私も一緒に、“東京に戻るぞ‼”と、言って聞かないのだ。
でも、私は、直ぐには、東京には、戻れない。
何故なら、私の後任のドクターが、まだ、決まって居ないからだった。
で在るなら…。
「道明寺総合病院から、派遣させる‼」と、言って来た。
で、私を『道明寺総合病院 脳外科の外科部長』にすると、言い出した。
“はぁ~??”だった。
私は、声に出して言えなかった。
何故なら、遣ると言ったら、遣る男が道明寺という男だったのだから…。
其の話しを聞いた椿お姉様は、呆れていた様子だった。
道明寺は、私の事に成ると、見境なく、『暴走男』化する。
もう、如何しようも無いのかも知れない。
私にも、抑え込む事は出来そうにも無かった。