イケナイ冬【イケナイ夏】…<総優> 続編 ⑨
<総二郎side>
俺は、優紀の両親にアポを取って、優紀の実家を訪れていた。
其れは、優紀の両親に挨拶する為だった。
優紀には、知らせて居ねぇのだが…。
優紀に言えば、多分、就いて来ると、踏んだからだった。
優紀が、俺に就いて来ても良いが…。
やっぱり、俺は、優紀の両親には、“俺一人で、俺の気持ちを伝えたい‼”と、思っていた。
だから、今回は、俺一人で、優紀の実家に向かった。
俺は、優紀の両親から、『門前払い』をされると、事前に思っていた。
否、過去の俺は、そうされても仕方なかった。
俺が、親の立場なら、そうするだろうから…。
だが、優紀の両親は、そんな様子を微塵も感じさせず…。
俺を居間に通してくれた。
で、俺は、開口一番、優紀の両親に、挨拶の言葉を交わしていた。
「お初にお目に掛かります。
西門総二郎と、申します。
優紀さんと、お付き合いさせて頂いております。
ご挨拶が遅れました事を、お詫び申し上げます。」
俺は、正座し乍ら、深々と、頭を下げていた。
過去の俺の中で、“こんな深々と、頭を下げた事が有っただろうか?”と、俺自身で、思う程、俺自身、深々と、頭を下げていた。
愛する女の為なら、此処まで出来る俺が居た事を、俺は、初めて知った。
で、優紀の親父さんが、そんな俺に声を掛けて下さった。
「総二郎君…。
頭を上げてくれるかな?」
「へっ??」
俺は、驚愕した。
頭を上げた俺の目の前には、にこやかに笑って居る優紀の両親が居たのだから。
余りの驚愕に、俺は、声が裏返ってしまって居た。
で、頭を上げた俺に、声を掛けて下さった。
「優紀が、世話になっている様だね。」
「………」
優紀は、まだ、俺と一緒に住んでいる事は、優紀の両親には、“伝えて居ない。”と、優紀から、聞かされていた。
だから、俺は、返答の言葉に困っていた。
其処に、其の言葉の意味を教えるかの様に、優紀の両親は、俺に話しして下さった。
「優紀が、西門家に住み込みで、西門流の内弟子に成る事を、“了承して欲しい。”と、家
元と家元夫人が揃って、我が家に、ご挨拶にお越し下さったんだよ。
家元と家元夫人からは、何れ、優紀を西門家の嫁として、“迎え入れたい。”とも、仰っ
て下さって…ね。」
俺は、思っていた。
“親父とお袋は、何時の間に…。”と…。
だが、俺自身、俺の親には、感謝していた。
で、そんな俺に、続ける様に、優紀の両親から、話しが為されていた。
「正直に言うと…。
総二郎君の噂話は、兼ね兼ね、聞いて居たんだよ。
だから、“優紀が傷付くんじゃないか?”と、不安だったんだよ。」
此の時点では、優紀の両親の前なので、声に出しては、言えねぇが、優紀の両親の言葉には、俺は、“やっぱり…な。”と、思っていた。
だが、此処から、優紀の両親の話し振りに、変化が出て来た。
俺は、不思議に思って居た。
「だが…ね。
家元から、言われた言葉に、“優紀を総二郎君に託して視よう。”と、思えたんだよ。
家元から、伺った言葉は…。
『或る西門流の重鎮から、言われた事が有りまして…。
“次期家元(総二郎)のお茶の味が変わった。”と…。
総二郎が、優紀さんとお付き合いをさせてもらって居る頃から、“次期家元(総二
郎)の茶の味わいに深みが出て来た。”と、言われる事が増えて来たんですよ。
総二郎には、優紀さんが、必要という事でしょう。
今後は、総二郎には、粗相はさせません。
優紀さんには、私共が、就いております。
私共は、優紀さんの味方ですから…。』と…。
だから、総二郎君…。
優紀を、末永く、宜しく頼むよ。」
俺は、嬉しかった。
涙こそ、流さねぇが…。
気を許すと、“涙が溢れて来るんじゃねぇか?”と、思う程、嬉しかった。
其れと同時に…。
俺は、俺の両親に、感謝しかなかった。
俺は、自然な形で、優紀の両親に、感謝の言葉と、誓いの言葉を述べていた。
「有難う御座います。
優紀さんを幸せにして視せます。
今後は、お義父さんとお義母さんを、失望させる行為は、一切、しないとお約束致しま
す。」
「私と妻は、総二郎君の決意に、了承した。
此れからの優紀を宜しく頼むよ。
総二郎君…。」
俺は、優紀の両親に、俺という人間を受け入れてもらえた事を感謝していた。
此れで、心置きなく、優紀に、プロポーズ出来る事を、俺自身、喜んでいた。
そして、俺は、『Christmas eve』の12月24日に、優紀へのプロポーズの準備を始めた。
先ずは、司を呼び出した。
何故なら、道明寺家ご用達のジュエリーショップを紹介してもらう為だった。
何故なら、今までの俺は…。
遊びの女に、ジュエリーを強請られた時は、こう言っちゃあ何だが…。
何処にでも在る ジュエリーショップで、事足りていた。
だが、優紀は、遊びの女じゃねぇ‼
将来、俺の横に居る女だ‼
何処にでも在る ジュエリーショップって訳には、いかねぇんだよ‼
だから、俺は、司に話ししていた。
「よぉ、総二郎…。
何だよ、俺に相談って…。」
そして、俺は、司に伝えていた。
「否な…。
道明寺家ご用達のジュエリーショップを紹介して欲しんだ‼
一生涯掛けての俺の女に渡してぇんだよ‼」
で、そう司に言った俺は、司から、嫌味を言われていた。
「へぇ~。
やっと、本腰入れて、愛する女を見付けたって訳か?」
「ああ。
時間が掛かったけど…な。」
「分~ったよ。
(ジュエリーショップには)連絡を入れて於いて遣るよ‼
また、其の話し…。
俺等にも、詳しく聞かせろや‼」
「ああ。
分~ってるよ‼」
で、俺は、司から、ジュエリーショップを紹介してもらった。