此れからの私は…<総優> 11.
優紀は、意を決して、類に話しし始めていた。
其れは、類に促されて居たからだった。
「松岡…。
俺に話しが有ったんでしょ?」
「はい。
此の様なお話しを、専務しても宜しかったのか?
悩んだんですけど…。」
類は、何も、発する事も無く、唯、優紀が、話しし易い様に、聞き役に徹していた。
だから、優紀は、一拍置いてから、言葉を発し始めていた。
「社長と奥様より、打診が御座いました。
………、結婚についてです。」
此処まで話しした優紀が、言葉にし難そうにして居る様子だったので、優紀に代わって、類が、言葉を発していた。
「俺との結婚という意味…?」
優紀は、ハッとしていた。
だから、驚愕して言葉が出なかった優紀だったのだが…。
類に確認していた。
「………。
ご存知だったんですか?」
類は、クスクス、笑い乍ら、言って除けて来た。
「既に…ね(笑)。
今からする此の話しは、司に内緒の話しだけど…さ。
司が知ったら、牧野が大変だろうし…ね。
だから、司と牧野には、内緒にしててよ。
牧野は、多分、もう、此の話しは忘れてると思うし…ね。」
優紀は、類の其の話しに賛同するかの様に、類に返答していた。
「承知しました。」
其の優紀の返答を聞いて、類は、また、話しし始めていた。
「実は、司と牧野が、遠恋中…。
司の代わりに、『ソウルメイト』として、俺が牧野を守って居たんだけど…さ。
何を勘違いしたのか?
父さんと母さんが、俺と牧野が付き合ってると、勝手に思ったらしくて、牧野に、“類
との将来の事を、考えて欲しい。”って、打診したらしいんだよ。
其の時の牧野は、困ったらしいんだけど…さ。
父さんと母さんは、司の母ちゃんから、司と牧野の将来の話しを聞かされて、ショック
を起こしたらしいんだよね。
“だから、今度こそは…。”と、思って、松岡にも、打診したんでしょ?」
優紀は、類から、そんな話しを聞かされて、呆気に取られていた。
つくしから、そんな話しは、一度も、聞いた事が無かったからだった。
だが、優紀は、類に、伝え様としていた。
「専務…。
あの~。」
だが、優紀は、仕事では、きちんと、自分自身の考えを伝える事が出来るのに…。
プライベートと成ると、自分自身の思った事の半分しか言い出せない優紀にとって、類に、優紀自身の気持ちを伝える事は、ハードルが高かった。
だからだろうか?
そんな優紀の顔付きを観た類は、類の方から、訊き出していた。
「松岡は、今でも、総二郎の事が好き、何でしょ?
だったら、気にする事無いよ。
俺は、松岡と仕事する様に成って、仕事は、楽しいし、遣り甲斐を感じて居るし…ね。
松岡と、此れからも、一緒に、仕事出来るんだったら、俺は、嬉しいけど…さ。
此の話しは、松岡の気持ち次第でしょ?
俺の事は、気にしなくて良いよ。」
そんな風に、類に言われて、尚、悩み始める優紀だった。
“だからって、T3に相談する訳にはいかない。”と、思う優紀が其処には居たのだった。
優紀のそんな顔付きを観て居た類は、優紀を分析していた。
“やっぱり、松岡も、牧野とは『同類』、何だね‼
他人の事は、放って置けないし、他人の気持ちを優先するんだね。
そりゃあ、あの総二郎が、惚れる筈だよね。”と…。
だが、何故か?
類は、総二郎に、松岡の気持ちを伝えて上げ様と思うのだった。
何故、そう思えたのかは、類自身も、分からなかったのだが…。
だが、類は、思って居た。
“お節介焼きのあきらが、乗り移ったのかも…ね。”と…。
そして、類は、総二郎を呼び出したのだった。
一方の優紀は、類の両親に会う事を決心していた。
類の両親からの打診に関しては、御断りを入れるつもり居たのだった。
其れは、類の話しを聞いて、御断りを入れても、大丈夫と、優紀には、思えたからだった。
だが、如何切り出したら良いのか?
優紀自身、迷って居た事は、確かだった。
優紀自身、きちんと、優紀自身の気持ちを言葉に出して言えるのか?
不安しか無かったのだ。
だから、日伸ばしにしてしまって居る優紀が、其処に居た事も、また、事実だった。
だが、等々、類の両親の方から、連絡が来たのだった。
如何も、類の両親は、優紀からの連絡が無い事に、痺れを切らしての事だったのだ。
だから、優紀は、類の両親と、会う事にしたのだった。
そして、類の父親から、話しが為されていた。
「松岡さん…。
其の後、気持ちは、整理出来たかな?」
優紀は、意を決して、類の両親に伝え始めていた。
御断りの話しを伝えた事で、退職に追い込まれても良いと考える程に…。
「はい。
私の様な者が、烏滸がましい(おこがましい)のですが…。
私自身は、社長より、良いお話しを頂けたと、思って居ます。
ですが…。
私では、荷が重過ぎると、思って居ます。
専務と御一緒にお仕事させて頂いておりますのも、お仕事だから、御一緒させて頂けて
居るのだと、認識しております。
高校生の頃より、お仲間として、ご一緒させて頂いており、其の頃もそうでしたが、
元々、プライベートでの専務とは、ご一緒する機会は、無かったんです。
厚かましい事を承知で、お伝え申し上げます。
プライベートでは無く、お仕事で、専務とは、御一緒致したいと思っております。
御理解を頂戴出来ましたら、幸いです。」
「………」
「………」
優紀の話しに、類の両親は、思って居た。
“何故、此方が気に入る女性は、全て、相手が居るのだろうか?”と…。
また、諦めなくてはいけない状況に、言葉も出せずに居た類の両親だったのだ。
また、類の両親は、類の将来を悲観的に思って居た。
“類と気が合う、類が気に入る女性は、此の先、現れるのだろうか?”と…。
なので、類の母親は、優紀に、伝えていた。
「松岡さんに、其の気が無いのに、無理矢理、類と引っ付けても、良い事は無いわね。」と…。
だから、ホッとして居る優紀が其処には居たのだった。
だが、しっかり、優紀は、類の両親には、謝りを入れて於いた。
「申し訳御座いません。」と…。
で、類の両親から、そんな話しを聞いた当の本人の類は、将来の事等、今まで、考えても来なかったのだ。
だから、唯、『自分は自分』と、思う類だったのだ。
そして、尚も、飄々として居る類だったのだ。
そんな類の様子に、更に、悲観的に思う類の両親だった事は言うまでも無いのだが…。