奇跡の出会い…<つかつく> 3.
<西田side>
私は、司様に、お話ししていた。
勿論、私は、司様に諭す様に、お話ししていた。
だが、何故か?
昔の様に、私が、司様をお呼びして居た『坊っちゃん』呼びを、私は、してしまって居た。
「司坊っちゃん…。
其れが、『恋』というモノで御座います。」
司様は、真剣な顔付きで、私に訊き返して来られていた。
「西田…。
お前は、“俺が、あいつを好きに成った。”と、言うのか?」
そう訊かれてしまったので、私は、間髪入れずに、司様に返答していた。
「はい、左様で御座います。
坊っちゃんは、若女将に、一目惚れを為さった様で御座いますね。
胸が苦しいと言う事が、何よりの証拠で御座いますよ。」
「………」
司様は、今まで、『恋』というモノには、一切、興味が無く、『女性(ひと)を好きに成る』と言う事が、如何意味を成すのか?
司様自身、一切、必要性を感じて来られなかった。
だからだったのだろう。
司様は、返答されず、驚愕顔を為さってお出でだった。
司様は、初めての事で、戸惑ってお出でのご様子だった。
“此れは、楓様に、ご報告しなければ…。”と、私は、考えて居た。
<楓side>
私(わたくし)は、西田から、報告を受けた。
「楓様…。
司様は、『恋』というモノを、初めて、お知りに成った様で御座います。
現在の処は、司様の一方的な片思いで御座います。
選定を致しておりました旅館の娘で在る 其の若女将に、『一目惚れ』為さった様で御
座います。
如何(いかが)致しましょうか?」
あの『女性嫌い』の司が、『一目惚れ』したらしい。
西田が言うには…。
其の女性は、司という寄り、うち(道明寺HD)が狙って居る旅館の娘で、若女将…だと言う事だった。
実は、私(わたくし)は、『女性嫌い』な司が、道明寺HDの後継者だと言う事に、今後の道明寺HDの行く末を案じていたのだ。
だからこそ、私(わたくし)は、西田の報告に、驚愕していた。
司が、初めて、『女性(ひと)を好き』に成った。
否、司が、『一目惚れ』したという女性は、司自身が狙って居る旅館の若女将だと言うのなら、願ったり、叶ったりでは無いのか?
なので、私(わたくし)は、西田に、返答して於いた。
そして、西田には、司に伝える様に、言付けて於いた。
「司に伝えて於いて頂戴‼
“其の女性を、しっかり、ご自分の女(もの)にしなさい。”と…。」
そして、西田も、しっかり、返答してくれた。
「承知致しました。」
西田が、司の傍に居るので、西田に任せる事も付け加えて於いた事は言うまでも無い。
「西田…。
任せましたよ‼」
西田からは、心強い言葉が、返された。
「お任せ下さいませ。」
私(わたくし)は、思って居た。
“後は、司の頑張り次第という処なのだろう。”と…。
<司side>
俺は、西田との視察を終えた後も、何度か…。
あいつの居る旅館を訪れて居た。
しかし、あいつと一緒に居る処か?
喋る事も儘ならずに居た。
“俺って、こんな臆病だったか?”と、自分自身にツッコミを入れたく成る位ぇ…。
あいつの前では、何も動けずに居た。
俺は、あいつに近寄りてぇし…。
あいつと喋りてぇ…。
だが、俺が、あいつに近付こうとすれば…。
上手く交わされる。
“俺って、そんなダメダメな男だったか?”と、自分自身に、自問自答する俺が、其処には居たのだ。
“はぁ~⤵。”と、溜息しか出て来ねぇわ。
“俺って、情けねぇよな。”と、俺は、思って居た。
俺の傍には、気に食わねぇ女は、近寄って来んのに…よ。
其れに、ベタベタ、触って来るし…よ。
其れに、勝手に、触れても来やがる。
なのに…よ。
俺にとって意中の女からは、俺の傍には、寄っても来ねぇ。
触ってもくれねぇ…。
ましてや、触れても来ねぇ。
“こんな事って、有り得ねぇっつーの‼”と、俺は、叫びたかった。
そんな俺が、何度目かに、此の旅館を訪れたそんな時だった。
あいつの弟が、俺に、声を掛けて来た。
「あの~。
『道明寺さん』と、お呼びして宜しかったでしょうか?」
「ああ。
構ねぇよ‼」
で、あいつの弟は、俺に、本題を言って来た様子だった。
「間違って居ましたら、申し訳御座いません。
道明寺さん…は、もしかして、姉をお好きに成られましたか?
姉は、鈍感な女性(ひと)ですので、大変では無いですか?」
俺は、あいつの弟の言葉に、驚愕だった。
「はぁ~??
あいつ…鈍感なのか?
って、いう寄り…。
何で、“俺があいつの事を好きだ‼”と、知ってんだよ?」
俺の言葉に、飄々と、返答してくるあいつの弟には、或る意味…。
驚愕した俺だった。
「ええ。
姉は、鈍感ですよ。
其れに、道明寺さんを拝見して居たら…。
普通、分かりますよ。
姉ばかりに、道明寺さんの目線が、追い掛けて居ますから…ね。」
俺は、更に、あいつの弟の言葉には、『驚愕』という言葉しか、浮かんで来なかった。
「弟は、気が付いてんのに…。
あいつは、気が付かねぇって…。
或る意味、凄ぇな‼
俺は、情けねぇけど…な。」
そんな俺の言葉に、慰めに成って居ねぇ言葉を掛けてくれるあいつの弟って…。
其れこそ、凄ぇよな。
「仕方ないですよ‼
其れが、『姉』という人間、何で…。」
「………」
そう言われてしまえば…。
返答の余地は無かった。
だが、あいつの弟は、俺に追い打ちを掛ける言葉を言って来やがった。
「姉を気付かそうと思ったら、告白して視て下さい。
其れでも、気が付かない様な『女性(ひと)』、何で…。」
「はぁ~??
其れは、鈍感を通り越して、超鈍感だろ?」
「まあ、そうとも言いますね。
其れに、姉に告白して、玉砕された『男性』は、数知れずらしいんです。
如何も、姉は、『男性』からの告白を冗談だと取る様ですね。」
もしかして、あいつの弟の言葉は、“俺に、玉砕も覚悟しろ‼”と、言ってるって、事だよな?
其れ程に、あいつは、超鈍感って事だよな?
“如何したら、あいつは、俺のあいつへの恋心に気付くんだよ‼
あの『超鈍感女』は…?”と、俺は、悩んでしまった。
あいつの弟から聞いたあいつの如何しようもねぇ超鈍感振りに、此の後の俺は、疲弊するしか無かったのだった。